千弥町物語
「…怖いって…何がどう怖いの?」
「昔、おばあちゃんがね…言ってたもん!
河は空と同じで色々なものがやって来る場所だから、流されると二度と戻って来られないって…」
「ふぅん。つまり、溺れるから気をつけて…って事?」
「うん。…多分そんな感じ…。
お化けの出る話とかもいっぱいされたし。」
「そうなんだ…。」
私自身も何処かでそんなおとぎ話を聞いた事があった気がした。
内容は全くもって思い出せないのが悲しいが…。
「んっー!涼しくて良いね…こうやってると」
水の中で跳ねているライラはとても無邪気に見えた。
思わず、つられて私も悪ふざけをする…。
「それっ!」
手で水を汲み上げて、おもいっきりライラに浴びせた。
「きゃ!…何するのよ!」
頭から水をかぶり…むくれた顔をしたライラだったが、すぐに
「お返しだぁ!」
と私に水をかけて来た。
「あっ!…やったな!」
きゃあきゃあ騒ぎながら、しばらく二人水と戯れていた。
河辺に、賑やかな声と水飛沫の音が響き渡った昼下がりだった…。