……千弥町……






千弥町は…その日、朝から蒸し蒸しとして
まるで梅雨の様な気候だったと思う…。
曇り空からしてそのうち一雨来そうだった。
ライラは私を自転車の後ろに乗せて、坂道を必死に登っていた…。

「…ここが3万丁目だよ…
四千八番の喫茶店おいしいんだ！」

息を切らしながらもライラは…町の事を話してくれていた。
たまにある小規模な店舗以外は、ずっと瓦屋根の民家が続いていた。
人が多そうなのに、車一台通るのがやっとそうな道の細さと言い…余りひらけてはいない街に感じられた。
田舎とも言えないが…。

「案内してくれてありがとう…
本当何処まで行っても千弥町何番地…って地名しかないね」

…やたら広い町の様ではあったがそこは不思議である。

「うん！…そうだよ
星の人のくにはどうなの？」

ライラに聞かれたが…

「えっ！？…私？…
ええと…」

…やはり、自分の事となるとどうしても思い出せなかった。