真夜中の対挑戦者

 「住所って、此処で合ってるのよね?」
「…だよな」

特警隊が現場に到着しての第一声は、御影のこの言葉。
既に葉月以外のメンバーは、乗ってきた車から降りて辺りを見回していた。
開け放したドアから、車載パソコンのモニターと目前の景色を何度も見比べる。

「宿舎棟じゃなくて、工事現場の方じゃないの」
「ですね」

そうなのだ。
ここは普段の巡回警邏エリア内でもある、一見極普通の大規模建築工事現場。
真夜中と言う事もあって、辺り一面はひっそりと静まり返っている。
当然、人通りも全く無い。

「昨日のパトロールで通ったよな。ココ」
「まさか、こんな所にもテロに加担してる人間が居たなんてね」
「恐らくあのプレハブの中に、犯人が居ると思われます」
「本当だ。灯りが点いてるね」

工事区画の片隅に建っている詰所には、人の居る気配があった。

「派手に行動するなよ。この向こうは住宅区画、一般市民はほとんどが夢の中だ」
「はい」
「それから…」

野原はプレハブと周辺を素早く見渡して、次の指示を出した。

「なるべく犯人を『外に出さないで』逮捕しろ。眠いし腹も減ってるし、大掛かりになる前に終わらせて欲しい」
「はい」
「そう言えば。夜食の事、すっかり忘れちゃってたね」
「何だか、オレも腹減ってきたなぁ」
「俺はずっと腹が鳴っている」
「隊長ぉ…」

緊迫した空気に、少しだけ和やかな笑いが溶け込む。

「最後に。各自解かってると思うが、犯人は警察を平気で挑発する奴だ。武器を隠し持っている可能性を、十分考慮するように」
「了解!」
「では、ポジション決めたら突入(エントリー)開始。タイミングは各ユニットに任せるから、連絡はこまめにな」

野原は指示を下すと、統括指揮を執りに車中へ戻った。

「雛。ちょっと」
「ん?」

先に準備を済ませた御影が、雛の元に駆け寄ってきた。
何やら、一人楽しげである。

「じゃんけん、しよう」
「え?」
「最初はグー、じゃんけんポン!」
「な…」

何?と聞く間も無い程突然だったが、手は動く。
だが、御影の勝ち。
ガッツポーズを決め嬉しそうな親友を、雛は首を傾げて見つめる。

「よし、あたしが勝ったわね!じゃあ、ユニット2は前衛っ」
「えっ!?前衛って、配置決めのじゃんけんだったの?」
「そうよ。哲君、正面は特警2で宜しくね」
「了解。特警2は、特警501及び504でエントリー登録します」

何故か御影が仕切り、淡々と残りのポジションを決めていく。
高井は見ているだけだ。
葉月も言われた通り、管制システムへユニットコードを打ち込んでいった。
501は高井、504は御影の隊員コードである。

「またじゃんけんで決めたんですか?高井さんに怒られますよ」
「俺はもう慣れた。と言うか、呆れている」
「高井さんも大変ッスね。副隊長なのに相棒がアレじゃ」
「今回は何もないと良いんだが。どうだろうな」
「先が思いやられるッス」
「あぁ。始末書の反省文、先に考えておこうか」

高井が呟き、それに勇磨が同情した。
一方で彼らの後方、葉月の隣でモニターを確認していた野原は、渋い顔を浮かべる。

「出来れば、さっさと終わらせたかったが。…無理だな」
「えっ!?」
「出動データを見て他の隊が世話を焼かなくて済むように、事前連絡しておくか」
「第二隊ですか?いつも支援してくれる所ですよね」
「アイツは……いや、何でもない。第一に情報共有要請を出してあるから、何か送ってきたら教えてくれ」
「了解です」

振り返った葉月は、長の諦めたような口調に悲嘆した。
今夜の出動も大変になりそうだ。


 プレハブの正面では、突入の時期を慎重に見計らっている。
表の出入り口では御影と高井が、裏では雛と勇磨がスタンバイしていた。
指揮車の中からは野原と葉月が、そして夢の森署の隊員室では正之助が、それぞれ次の手筈を整えていく。

『特警指揮から、特警1と2』

インカムから野原の声が届く。
高井と御影はその場で身を屈め、インカムに手を当てた。

『対象以外の人間は、現場監督に頼んで別室へ移動済みだ。隣の建物内には侵入させないように』
「了解です」
「現場責任者の協力を得られたんですね」
『叩き起こした捜査班に動いてもらった。従って中は、対象一人しか居ない』
「捜査班も可哀想に…」
『四対一で、こっちが優勢の筈なんだが…』
「何かあるんですか?」
『情報によると。相手は抜群の運動神経の持ち主で、忍者並らしい』

動物の例えでなく忍者と称されたのには、「逃げるだけではなく、何らかの武器を以って攻撃してくる」という意味があった。
加害する意思を持って行動するのは、例え短絡的でも獣より質が悪い。

「忍者か。こっちにも抜群は居るけどな」
『万が一逃がしても追えるように、あちこち配置して網は張っておいた。しかし、足が速いとなると』
「下手しなくても、雛と一騎打ちって事?」
『私!?』

無線の向こうの雛は、余計に緊張してしまったようだ。
勇磨も心配している。

『ヤバイッスよ!?高井さん、隊長!』
「そうなる前に捕まえる。いいな」

雛の負担を考え、高井はそう言って気を引き締めた。
全員が頷くが、返事の言葉はバラバラだ。

『高井の言う通りだ。皆で一致団結すれば、何とかなるかも知れない。諦めるな』
『はい!』
『特警FB(フルバック)から、特警2へ』

葉月が、無線を付け足してきた。
犯人に関する新たな情報か、現状に変化があったのかと思われたのだが…

『くれぐれも、荒い事して犯人死なせちゃったりしないで下さいね』
「それ、どーいう意味よ!?」
『御影さん、今回は力入り過ぎです。ご自分も怪我しちゃいますよ?』
「高井さんが…仲間が被害に遭ったのよ⁉今入れないでいつ入れるの!」
「蔵間静かに。外に響く」

葉月の一言には、ちゃんと理由があった。
隊が発足して幾月しか経っていないのに、第五隊の捕り物では失神した《哀れな逮捕者》が何人も出ている。
主に御影が開発した、非致死性の筈なのに怪しい装備品の所為なのは言うまでもない。

『しかし。このままじゃ、上からお小言じゃ済まされないレベルに』
「ゔっ…。て、哲君、それは帰ってから聞くわね♪」
『隊長ぉ、オレも雛も余計不安になったッス!どうすれば良いッスか!?』
『…分かった。ヤバイ時は俺が加勢しに行くから、第二隊に良いトコ持っていかれる前に終わらせとけ』
「第二隊、支援してくれるんですか?」
『隊長が近くで支援待機中だと。アイツも抜群だから、介入されたらあっという間に終わりだ』
「アイツ?」
「誰だろう?」

面倒臭そうな声音の説明だが、雛達へ支援が動いている証拠である。
一層心強くなった。
これで安心したのか、隊員達の声は落ち着いたようだ。
実際は、第二隊長のエントリーよりも先に野原が助けてくれるのだろう。
野原も甘やかすつもりはないが、長としてこういう準備と覚悟も怠っていない。
御影は「それなら安心だ」と笑うが、高井は真逆だ。
「そういう訳にはいかない」と「そうなる前に終わらせなくては」という緊張に包まれた。

『はいハイ。さっさと行きなさいって』
「…現時刻を以って特警2、エントリースタート!」
『統括指揮、了解』


 「──こんばんは」
「…」

引き戸を軽くノックして、御影が声をかける。

「東京ガスですが」
「ガス代なら、昨日振り込んどいたよ」

中から返事があった。
犯人は背を向けたままで、こちらには気付いていない。

「じゃあ、東京電力です」
「はぁ!?」
「水道局でも何でも良いわ」
「一体誰だっ、お前は!?」

犯人はどうやら短気だ。
怒鳴り声と共に、引き戸を思い切り開け放った。
しかし、目の前の状況に呆然となる。
闇夜に煌くのは、現着したばかりの別班や応援部隊による無数のパトライト。
それを背にして、御影は微笑む。

「ハーイ、実は警察でしたぁ♪」

一方、第一班の二人は裏口から物騒な代物を運び出していた。
火炎弾に発破用の小型爆弾等々…
いずれにせよ、一般人とは無縁の物ばかり。

「何でこんな物、ゴッソリ持ってるんだ?」
「ナイフに…うわぁ、エアガンも!」
「この弾って、高井さんの腕のと同じ色だ」
「証拠品確保だね」

そこには、完成したばかりと思しき犯行声明文もあった。
広げかけた寝袋を隅へ押しやって、雛が手に取る。

「これ、私達宛てだよ?」
「重要証拠、確保だな。押収袋に入れとこう」
「うん」

更なる押収物を密閉袋に封印し、外に居る捜査班へ渡した。
その時だ。
壁一枚隔てた向こう側から聞こえたのは、座卓らしき物が乱暴にひっくり返る音。

「蔵間達、もう始めちまってるぞ!?」
「十分、派手にやってるみたいだね」

最後のダンボールを運び出すと、二人は奥へ入っていった。
正面入口側は、只今大捕り物の真っ最中である。
雛達が駆けつけた頃には、既に修羅場と化していた。
格闘が苦手な御影は、忍者並の相手に苦戦中だ。
射撃の腕前は良い方なのだが、すばしっこく動き回る相手では中々当たらない。
辛うじて攻撃を外させる事は出来たが、その動きを静止させるまでには至らない。
そのうちの一発が、入ってきた勇磨の真横で破裂した。

「だぁっ!バカ、危ねぇだろうが!!」
「遅い!現場では迅速に、でしょ」

犯人は余裕だ。
障害物競走を愉しむかの如く、外へ逃げ出そうとする。

「逃がすかっ!」
「高井さん!」

高井が後を追いかけ、次いで雛も。
犯人は、窓からヒラリと飛び出していった。
御影が悔しそうに報告を入れる。

「特警2から統括指揮へ。犯人は窓から外へ逃走、特警501及び502が追撃開始!」
『統括指揮、了解。二人も後を追え』
「蔵間、二人のフォローに入るぞ!」
「解かってるわよ!」

工事区画の入口を塞ぐように止めてある、装甲の厚い小型警備車。
その中で野原は、葉月が操作する簡易型運用システムの画面を眺めていた。
傍らには指揮車から降ろした、彼専用の武器である長警杖《戦竜》が二つ折りの未組立状態で置かれている。
御影からの無線の後、車外からの殺気を瞬時に感じ取った。

「──葉月、伏せろ!」
「えっっ!?」

命令と同時に、葉月の後頭部を押さえる。
共に座席の下へ伏せた。
突然過ぎて、葉月は何が起きたか解らない。
車のフロントガラス目掛けて飛んできたのは、犯人が勢い良く投げたサバイバルナイフ。
カッと薄いキズが入ったものの、強化防弾ガラスが割れることは無かった。

「う、うわぁ…」

ガラスの傷を見ながら起き上がった、葉月の声は裏返っていた。
野原もぼやく。

「本当に忍者みたいですね。ナイフが手裏剣みたいだ」
「やるなら、向こうでやってもらいたいな」

それは指揮者とは思えぬ、第三者的な発言である。
眼鏡をかけ直して、後を追う隊員達の背中を見送った。


 犯人は、工事中の区画へと逃げ込む。
捕り物(おにごっこ)は《かくれんぼ》へと、変わりつつあった。

『おいおい。俺は“犯人を外へ出すな”と、言った筈だが』

野原は内心こうなる事を予想していたが、あえて口にしてみた。
しかし、インカムで返す御影の台詞は予想外だった。

「いいえ、まだ出してませんよ隊長。現場の“外”には」

そんな見解も出来たか。
勇磨が感心した。
その悪知恵に、改めて相棒の人柄を実感する高井。

「そうだな。現場の外には出てないよな」
「しかし蔵間、そりゃあ理屈じゃないのか?」
「現場では、多種多様の判断が必要なのよ!ねぇ雛っ?」
「え!?…えと、そうかもね」

いきなり話を振られて返事に困った雛は、一応同意してみたりする。
絶好の位置に犯人が居たのに、その所為で捕まえるタイミングを逃してしまった。

「特警502より特警FBへ!犯人が鉄骨の間に隠れちゃったよ、サテライト支援お願いっ」
『特警FB、了解です。上手く撃って下さいね』
「勇磨っ」
「任せろ!」

サテライトの正式名称は、サテライト=広域サーチ・ナビシステム《星の監視者(スターシーカー)》。
GPSを使い、隊員と犯人の現在地を割り出して的確にナビゲートするという特警隊独自のシステムだ。
但しこれを使うには、犯人にも発信マーカーを取り付ける必要がある。
この方法は、二つあるのだが…

「今だ!」

勇磨のエアガンから、マーカー弾が放たれた。
それは見事、逃げ去る犯人の背中に貼り付く。

「哲君。志原が撃ち込んだ、拾って!」
『了解!指定エリア内GPSを更新中…、犯人マーカーの作動開始を確認』
「よっしゃ!」
『ナイスヒット。異常なし、感度良好です』

野原が見守る前で、葉月がシステムを上手に使いこなしている。
出向支援役であるFBの本領発揮は、想定より早かった。

『特警隊FBより、現場の各員へ。これより広域サーチに入ります、車載GPS及びマーカーのスイッチを“発信”に入れて下さい』

指示通りに、後から現着した警察官達が一斉に手元のGPSマーカーのスイッチを入れた。
車載パソコンの画面に映るマップ上へ、最初に浅黄色の光点が、六つ現れる。
添付コードはSPT-05、第五特警隊を指す。
その内の四つは緑色のゲージを表示しながら、常に移動している。
残りの二つは重なって一つの星型アイコンへ変化し、特警指揮と表示された。

『SPT-05、エントリーアイコン確認。現在、追尾中は合計四。コンディション、オールグリーン』

先行する一点をクリックすると、顔写真と共に隊員データが表示された。
その氏名は友江雛、あっという間に高井を追い抜いている。
次いでマップの表示範囲が自動的に広がり、縮尺を変えた途端、一気に別な色の光点が現れる。
現場から離れた場所に青色の点が一つあり、野原はそれに眉を顰めた。
進行方向は現場、しかも雛達が動いている場所を指している。

『エリアサーチ、更新中。本庁受令台と、PCデータ共有(ユニゾン)開始』
『警視庁受理台より、特警FB。データ共有確認、そちらへ現在応援急行中のPCデータを送ります』
『特警FB、了解』

これは包囲網のパトカーと捜査員の位置で、最後に犯人を示す三角の赤いアイコンが点滅を始めた。
その後ろを、四つの緑色の点が追っている。

『現場の各員へ。広域サーチ成功。対象の確保まで、発信は切らないで下さい』
『引き続き、特警指揮より現場の各員へ。未だ犯人は敷地外に出てない、各員はそのまま現状維持されたし。繰り返す、各員はそのまま現状維持されたし』
「良かった…」

雛が胸を撫で下ろしたのも、つかの間。
特警隊専用回線が、誘導する葉月からの指示を告げる。

『特警1、雛さんへ!十時の方向、距離約百メートル!!』
「了解っ、葉月さん有難う!」
『高井は友江の援護。志原はそのまま、対象の後方から回り込め』
「了解!」
『蔵間。そこから、対象の後方を押さえられるか?』
「はい。犯人の退路を断ちます」

マップを覗きつつ、野原も矢継ぎ早に指示を飛ばしている。
犯人確保まで、もうすぐ──

『この先、更に狭そうです。くれぐれも気を付けて』 
「雛、一人で美味しいトコ独占しちゃ駄目よ!」
「美味しいトコ…って、お前なぁ」

高井のツッコミにも気にしない御影。

「あら、物事は良い方向に考えると良いのよ。その現場毎に合った対応を考えて変えるのを…ほら、何て言ったっけねぇ?」
「それは…」

緊張感まるで無しの会話とは正反対に、雛は一人、犯人と対峙する緊迫した空気の中に居た。
次の瞬間、犯人は彼女目掛けて鉄骨や石を投げつけてきた。

「臨機応変、でしょ!」

飛んでくる凶器を、お得意の柔軟な体裁きで避け切った。
インカムで報告を入れ、最後に後方へ倒立回転跳びをやってのける。

「特警1より特警指揮へ、現時刻を以って犯人と遭遇(エンカウント)!」
『了解。大丈夫か?』
「はい、何とか」

元居た足場には、ナイフが突き刺さっていた。
「うわぁ」と思っても、驚いている暇はない。
雛は警棒を構え直す。

「スゴイな、十点満点だよ友江。次は俺の番、だ!」
「高井さん!?いつの間に…」
「あたしも居るわよ、雛」
「オレも居るんだけど」

勇磨がフォローに入り、雛に次の間合いを取らせる。
対峙している間に、残りの三人はすぐ傍まで追いついていた。

「特警2より統括指揮へ。包囲に成功、これより確保に入る!」

高井は素早く体制を整え、すかさず犯人の前に回りこんだ。
そのまま相手の懐へ潜りつつ右肘を掴んで、一本背負いで体を跳ね上げる。
鮮やかに投げ飛ばされたのにも関わらず、未だ抵抗を見せる犯人へ、雛の電磁警棒が振るわれた。

「観念しなさい!」
「そこまで、だな」

そう、そこまでは良かった。

「特警501より現場の各員へ。現時刻を持って犯人を確保!…って、おい蔵間!?」
『何だ、どうした高井?』
「御影っ!?」
「おい待て、蔵間!!」

やっとおとなしくなった犯人を待っていたのは、被害を受けた相棒の「恨み骨髄に徹す」状態の御影。
これが本当の、逆襲の始まりだった。


 ──数分後。
恨みのありったけをブチ込まれた犯人は、生きてはいるが…
本庁の捜査員に両脇を抱えられ、引きずられるようにして連行されていった。
野原が頭を掻いて、呟く。

「結局今回も、随分と派手にやったな」
「一般市民がそんなに騒がなかったのは、不幸中の幸いと言うか。何というか…」
「隣の建物の人達、被害が無くて何よりッス」
「犯人、また失神してたよ」
「これだけやられたら、流石に懲りたでしょうね」
「十二分にやり過ぎだ」

御影以外のエントリー組三人と、車から降りてきた二人が合流している。
哀れな犯人の背を、複雑な心境で見送った。
これで何人目だろうか。

「そうだぞ蔵間、あれは明らかに過剰だ。犯人は既に抵抗を止めていたのに」
「…」
「後々、問題になるぞ?どうするつもりなんだ」

高井が御影へ、厳しい一言。
背を向けたまま、彼女は黙ってそれを聞いた。
いつもなら一言や二言ぐらい、軽く返してくるのだが…

「まぁ、色々あったが。我々は撤収だ、帰るぞ」

野原が声をかけて、皆は撤収となった。
御影は一番最後に渋々歩き出す。
雛がその肩をポンと叩いて、淡く微笑む。

「犯人捕まえられて、良かったね」
「…」
「私達、先に行って片づけてるね。御影もお疲れ様」

俯いたまま、御影は無言で頷いた。
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