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「殿おぉぉぉ!!」
「なんだ左近。騒々しい。鬱陶しい。貴様の半べそ顔など全く可愛くない。見るに耐えん」
三成がありったけの雑言を投げつける。
「本当、綺麗な顔に似合わず口が悪い……って、そうじゃあないんですよ。何を言ったんです!?」
「誰に、だ? 具体的に言え」
「名無しさんにですよ! さっき名無しさんに会ったら『左近って、女の人がいるお店に行ったりするんだね』なんて言われちまったんですよ」
「そうかそうか。俺は只、名無しさんから左近との出会いについて教えて欲しいと言われたから、こと細かく説明しただけだ」
一呼吸置き、三成は満足そうに語り出す。
「心身ともに腐りきった牢人、島左近を探しに仕方なく、いかがわしい店に赴き、店中の女を侍らせてでれでれと鼻の下を伸ばし飲んだくれているところを仕方なく勧誘し、仕方なく登用した、とな」
「殿! 言い方!! 仕方なくって三回も言った」
「当時の出来事をありのまま言ったまでだ」
「誇張し過ぎですよ。
はあ、もう名無しさんに誤解されたじゃないですか」
左近は逞しい肩をがっくりと落としていた。
「事実だから構わんだろう。貴様の女好きが漏れなく伝わる逸話ではないか」
三成は鼻で笑って語り続ける。
「俺には使命がある。名無しさんに変な虫がつかぬよう護ることだ。目下、手近なところ、貴様のような害虫から駆除しておかねばならん」
「言い方!!」
「あぁそうだ。
昔、貴様が気を抜いて調子づき領内を出て、藪の中で忠勝の娘と対峙した際に見とれて色ボケして出し抜かれたことも名無しさんに伝えておいたぞ」
「いやいやもう、誇張というより悪意がありますよ。
まぁ……確かにあのときは、あの可愛い嬢ちゃんが忠勝の娘って知らなかったから甘く見てましたけど」
「少し黙れ。ここからが重要だ。しかし名無しさんはこうも言っていた。
『流石、左近!! 女の人を見る目があるね。
あたしも稲のことはすっごく可愛いと思ってるんだ。
やっぱり左近はモテるし女の人を沢山知っているから直ぐ分かるんだね』
……とな」
「とな、じゃないですよ! 何ですか今の。名無しさんの物真似だとしたら声も仕草も全っ然似てませんよ」
左近は自身への誹謗中傷よりも下手な物真似に突っ込むことを優先した。
「ふむ、確かに俺では名無しさんの愛らしさは一割も表現できん。
だが名無しさんは貴様の低俗且つ軟派な面を知ってなお褒めていた。
つまり俺が言いたいのは名無しさんの懐の深さたるや妙妙、赫赫、御前上等……そんな言葉だけでは語り尽くせぬほど神懸かっているということだ」
三成はうんうんと頷いては天を見上げ、ここにはいない名無しさんへと想いを馳せていた。
「では時間がないから俺はもう行く。
名無しさんを昼食なりお茶なりに誘わねばならん。早くせねば他の輩に横取りされてしまう。
じゃあな左近。貴様は存分に執務に邁進しろ」
一方的に言うと、三成は大股で部屋を出ていった。
左近は思う。
目の前を去った己の主君も他人を貶める才能と名無しさん好きに関しては神懸かっていると。
左近は悩む。
仕官先を考え直すべき時期だろうかと。
【Indeed】
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