短編夢
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中王区主催のVRバトル。現地に行けなかった私はVRチケットで零さんの闘いを間近で見る事になった。
零さんのラップを生で感じれるような気がした・・・。VRさながらの迫力で私はテンションが上がっていた。
なので今こうして、零さんを部屋に招き入れてその感想を興奮気味に伝えているところだ。
「零さんVR見ました!なんだか目の前で零さんと対決している気分になりました!!」
「はっはっは!楽しんでくれたみてえだな。」
「はい!・・・って、零さん目の前にして言うのも・・・なんか不思議な感じですけど・・・。」
VRも目の間にいるけど、本人に直接言うなんてなんだか変な感覚だなぁ・・・。
でも普通のライブなら客観的に感じるものをVRなら疑似体験になる。だからある意味"敵の視点"で零さんを感じれたのだから。
「零さんってやっぱり実力者なんだなって思いました・・・。普通ならあんな攻撃受けたらまともじゃいられないでしょうし・・・。
普段ラーメン食べてる横顔とは全然違って、戦う男の姿っていうんですか。そういうのを感じました!!」
「おいおい・・・。俺をただのラーメン大好きおじちゃんだと思ってたのかあ?」
「そうは言ってないですけど・・・でも本当にカッコ良かったんです。いつも見せない表情が見られて私は嬉しいんですよ。」
「いつも見せない、ねえ・・・。」
ニヤリと笑う口元。するりと細められた二色の瞳に頬を染めた私の姿を映し出す。
「VRってのはチケット買やあ誰でも見れんだろ?」
「そうですね・・・値段もそんなに高くないですし、環境さえ整っていれば見れますよ。」
「・・・・なら名無は相当ラッキーだな。」
「・・・?何がですか?」
すると急に私の手首を掴み、ぐいっと力任せに胸元へ引き寄せる。
反射的に顔を上げると、零さんの左手が待ってましたと顎を捉えた。
視界の端には金色の時計が僅かに時を刻む音を鳴らしている。
「_____今のこの視点は、誰でも見れねえとっておきの景色だからよ・・・?」
「・・・っ・・・。確かに・・・これはVR以上の刺激ですねっ・・・。」
笑った口元は私の顔の側を通り過ぎて、耳元にふわりと温かな吐息を感じる。
「・・・・・俺の隣りはお前だけの特等席だぜ・・・。・・・なあんてな。」
耳に囁かれる低音が脳に直接響く。これならヒプノシスマイクでなくても十分精神を揺さぶれるのではないだろうか。
何故既に恋人同士なのにこうしてまた口説かれているんだろうか・・・。
そう思う程真っ赤になっていく自分の顔と身体。緩く背中へ手を伸ばし、どうにか言葉を紡いでいく。
「・・・・貴方って人は・・・・っ、そうやっていつもずるいんですから・・・。」
「それが取り柄なもんでね。」
「・・・他の人には言ってないと信じますよ・・・零さんっ・・・・。」
「言わねえよ・・・。俺は"欲しいもんは必ず手に入れる主義"だからなあ・・・。」
普段のライブで見せる豪快な笑い方ではなく、心底怖くなるような喉元での笑い。
そんな声も聞くのはあまりない事で。この"天谷奴零"は"私しか知らない姿"なのだろうと、何故か信じれたのだった。