お付き合いする前
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
_______・・・怖い。嫌だ。恐怖が消えない。
いつになったら、私はこのトラウマから抜け出せるの・・・・?
「・・・・はあ・・・。」
嫌な夢を見た。多分私はうなされていたのか、起きたらじっとりと顔に汗をかいていた。
昔の夢なんて見たくない。怖い。助けてくれる人は、いつだっていなかった。
・・・・もう私を怖い目に遭わす人なんていないのに。
分かってはいるけど、精神的なショックがいつまでも消えないでいる。本当に厄介だ。
「・・・・買い物・・・。」
今日は法律事務所もお休みの日。冷蔵庫の食材が切れていたのを思い出して、ぽつりと一人呟いた。
一人暮らしをしていると自分の事は自分任せ。ある意味気楽だけれど、大変な事もある。
・・・・天国先生に会いたいな。仕事しかない私には、休みの日ほど無気力な日はないと思ってる。
そう思いつつもとりあえず顔を洗い。朝食を取り。着替えて忘れ物がないかチェック。ゆるりと街へ出る。
『でさ~。この前のあいつでらウケる~ってなって!』
『マジ!?動画見して見して~!』
(・・・・早く帰りたいな・・・。)
賑わう街。買い物を手早く済ませて帰り道を急ぐ。
家に帰って動画かテレビでも見たい。なんて思いながら歩く。
そんなに興味がある訳でもないけれど、世界情勢やニュースぐらいはチェックしたいし。
「____ちょいとそこのお姉さあん。軽いアンケートにご協力願えますか~?」
「え・・・。・・・・すいません、急いでますので・・・。」
「5分でいいんですって、5分!ね?お姉さん?」
「ちょっ・・・!?えっ・・・!?」
何っ・・・何が起きたの?急に大柄な男が目の前に現れたかと思ったら、行手を塞がれる。
避けようとしても他の複数人に取り囲まれてっ・・・・。嫌だ、どうしよう。怖い・・・!!
すぐ傍らには黒い車。凄く嫌な予感がする。
「ご・・・っ、ごめんなさい・・・!!本当に、急いでまして・・・!!」
「まあまあそう言わずに。報酬だってありますので、ねえ?」
「誰かっ!助け・・・・いやああ!!」
嘘だっ・・・胸元にはマイク・・・!?もしかして違法マイクじゃ・・・!?
関わっちゃいけない感じがする。私が大人しそうで、ふらふらしてるから狙われたのかなっ・・・。
嫌だ!!男が手首を無理やり掴んできてっ・・・・!!
「_____・・・・おいコラ。離してやれ。」
「アイテテテ!!んだテメェこらあ!?」
「うぎゃあ!!」
「っ・・・!?」
何者かによって男の手首が捻られるのが見えた。
すると男に蹴りが飛んできて、私はその何者かの後ろに隠れる形に・・・・
・・・・って。天国先生!?
「俺は弁護士だ。・・・・今すぐお前らを地獄の底に叩き落としてやろうか・・・!?」
「べ、弁護士・・・?てかこいつ、どっかで見たよーな・・・・」
「分かんねえなら・・・俺のリリック聞いて思い出すかあ!?このカスども!!」
ヒプノシスマイク・・・!!天国先生のマイクを生で見るのは初めてだ・・・!!
どうしようっ・・・逃げたいけどっ・・・。なんかさっきから、呼吸が苦しくなってきたようなっ・・・。
「げっ!?なんでお前ヒプノシスマイクを・・・」
「思い出したっ!?こいつ、Bad Ass Templeの天国獄じゃねえか!?」
「嘘だろっ!!小銭稼ぎで捕まってたまるかっての、ヅラかるぞ!!」
「待てこの野郎ッ!!・・・・・クソッ、逃げ足のはええ輩だな。
車のナンバー覚えたぞ・・・警察に連絡すっか。」
男達は天国先生を思い出すや否や血相を変えて逃げていった。
凄い逃げ足・・・っ・・・。あ・・・まずいっ・・・!!
ど、どうしよう・・・・息が、出来ないっ・・・!!身体が震えてるっ・・・!?
「大丈夫だったか?苗字・・・。
・・・・っておい、どうした!?息が上がってるぞ!?」
「だい・・・じょうぶ、ですっ・・・。っはあ、ごめん・・・なさ・・・天国先生っ・・・!!」
「全然大丈夫じゃねえだろっ!?顔色すげえ悪いしっ・・・」
「ごめんな、さい!ちょっと・・・発作がっ・・・・!!・・はーっ・・・はっ・・・!!」
いけない・・・!天国先生にご迷惑を・・・!
でも、息が・・・!!・・・どうしようっ、どうしようっ・・・・!!
「・・・っ、ごめんなさい・・・!!」
「おい苗字っ!?」
涙が溢れてきそうだったし、パニックでその場から逃げてきてしまった。
まただ。また、私は・・・天国先生から逃げて・・・。
どうしてっ・・・。天国先生に会いたかったのに・・・・せっかく会えたのにっ・・・・!!
過呼吸で息が苦しくて、それでもどうにか路地裏で息を整える。
溢れ出る涙が辛くて仕方がない。どうしてこんな事にっ・・・。
_____その後どうにかして。家路に着いたけれどもう何もする気が起きなかった。
男に無理やり手首を触られた。それだけで、私の身体はまた震えだす。
本当に怖くて。どうしようもなくて。それを、天国先生がせっかく助けてくれたのにっ・・・・。
「私の馬鹿っ・・・!!ばかばかばかぁっっ・・・!!」
己が憎い。また助けてもらったのにお礼も言えなかった。
仕事で必ずお返ししよう・・・。そうするしかない・・・。泣いていても仕方がない・・・。
分かっていはいるけど、今はとりあえず泣き続ける事しか出来なかった・・・。
数日後。体調は戻ったけれど少し気が重かった。
でも頑張らないとな・・・。そう思いながら出社した。
「天国先生、おはようございます。」
「苗字っ・・・・。・・・おはよう。体調大丈夫か・・・?」
「はい・・・本当に、ご迷惑おかけして申し訳ございませんっ・・・。
あとで仕事の合間にお礼をさせて下さい。」
「礼なんて良い。・・・だが仕事が一段落したら、部屋に来てくれ。
事の顛末とか話さねえとだしな・・・・。」
「・・・・はいっ・・・。」
そうだった・・・。あのあと警察を呼ぶとかそういえば言っていたから・・・。
無事に捕まったのだろうか・・・。よく分からないけれど、とりあえず少し仕事を片付けてからあとでお邪魔する事にした。
それから数時間後。
コンコン
「・・・・失礼します。・・・天国先生・・・。」
「おう・・・待ってたぜ。資料はPCの隣りに置いといてくれ。
あと、そこに座ってくれ。なんか飲みもんいるか?」
「いいえっ、けっこうです!・・・・とりあえず、お話を伺いして宜しいですか・・・。」
天国先生は優しい。PCを閉じて、飲み物を取りに行こうとしたが止めてソファーに座った。
私も向かい側のソファーに座って、少し俯きがちに天国先生のお話を聞く事にする。
「・・・・例のお前をどうこうしようとしてた輩だが、どうも違法マイク所持と人身売買をしてるやばいチームだったらしい。
けっこう場当たり的な犯行で、一部は捕まったが主犯格は逃したらしい・・・。」
「・・・すいません。あの時私が・・・・あんな事になってなければ、全員捕まえられてたかも知れないのにっ・・・。」
「______苗字。・・・俺が普段から言ってる事。覚えてるか?」
「・・・・・?」
「こういうのは被害者に全くもって否はねえ。原因は絶対加害者の方だ。
だからお前が謝る必要も、悔やむ必要も全くねえんだ。・・・・分かったか・・・?」
優しく諭すように。表情も怒っているというより本当に心配しているような顔をしていた。
・・・天国先生は、本当に優しい人だなって・・・・。私は力なく「はい・・・」と小さく返事をした。
「・・・それで、ここからなんだが・・・。・・・・良けりゃあ教えてほしい事がある・・・。」
「・・・・私がどうして・・・あそこまでパニックになったか・・・ですよね・・・?」
「・・・ああ。・・・・ただ無理強いはしねえ。・・・・・話したくなかったら、いいからな・・・。」
やっぱり聞かれるよね。そりゃああんな状況、誰だって不安にはなるけど過呼吸にはならないはず・・・。
だから正直に理由を話す。・・・本当はあまり・・・・言いたくはなかったけれど・・・。
「・・・・実は私、男性に対してトラウマがありまして・・・。あんな風に乱暴にされると発作が起きてしまうんです・・・。」
「そう・・・だったのか・・・。・・・話す分には問題ねえんだな・・・。」
「はい・・・。昔・・・ちょっと、乱暴されかけたというか・・・・。男女の集団に、やられかけた事があって・・・
今でも、あんな風に腕を掴まれただけでパニックになってしまうんです・・・。」
「それ、立派な犯罪じゃねえか!婦女暴行未遂だろ・・・!?」
そう。天国先生の言う通り、暴行未遂された事があった。
思い出したくもないが、学生の頃何故か分からないがターゲットにされた。持ち物を取られたり、陰で悪口を言われたり。
トイレの奥で羽交い締めにされていた時。運良く学校の先生が見つけてくれなかったら大変な事になっていたと思う。本当に恐かった・・・。
暗くて狭い闇の中で。どれだけ死のうと思った事か。
「・・・昔の事です。それにもう、その人達は私と会う事はないのですから。」
「お前が上京してきたからか・・・?」
「いいえ。それもありますけど・・・・私が大学にいる頃、一つのニュースが流れてきて。
逮捕されたんですよ。その人達は・・・。」
「・・・!!苗字・・・・お前、もしかして・・・」
・・・っ、まずい。天国先生に何か勘付かれたかも・・・。
時計をふと見ると、仕事に戻らないといけない時間だった。
「・・・あっ・・・ちょっとお話しすぎましたね・・・・。あとは天国先生のご想像にお任せします。
・・・・お話、有難うございました。もう勤務に戻りますね・・・。」
「・・・・・。」
私は一礼して、テーブルにコーヒー代を置いて天国先生の部屋から出た。
______そう。私はイジメられていた。だから奴等から逃げるように、わざわざ遠くの大学へ進学した。
ただ生きてるだけの、人生になんの希望も見出だせなかった時。ニュースで私をイジメていた奴等が逮捕されたと聞いた。
・・・・別件ではあったけれど。あいつらは中学の頃から誰かをイジメていたらしく、その件で裁判になり刑務所へ送り込まれた。
そこで天国先生の名前を知った。
直接的ではないけれど、その話を聞いて私は人生で初めて嬉し涙を流した。
本当に嬉しくて。こんな人がいるだなんて思わなかった。あの人は・・・・私を地獄から救い出してくれた人だから・・・。
だから私はあの人に恩返しがしたい。私の人生に、光をもたらしてくれた大切な人だから。
憧れって言ったけれど。憧れと、尊敬と、感謝。天国先生のお力になりたい。・・・・その為に私は、今ここにいます。
(_____苗字の履歴書に書いてある、この高校っ・・・・。クソッ、嫌な予感が的中しちまった・・・!)
「・・・・俺は・・・・なんて奴に惚れちまったんだ・・・・!!」