お付き合いする前
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法律事務所は堅苦しい場所。国の法で人を導く場所だと私は思っている。
そんな場所に、平気な顔をして出入りする人影がある。
「・・・?えっと、あなた方は・・・?」
「ん?お前見ねえ顔だな・・・。新入りか?」
「我は月光と漆黒を背負う革命の騎士・・・四十物十四。さあ、マイゴッド獄を出すが良い!!」
(天国先生の・・・お知り合い?というかこの顔、どこかで見た事が・・・・。)
秘書になって暫くした時。二人は突然やって来て天国先生を出せと行ってきた。
年の割に粗暴な振る舞いなので最初は本当に天国先生の知り合いだと分からなかった。
「____コラッ、空却ッ!!十四ッ!!」
ゴツンッ!!
「ってえ!」「あいたぁっ!!」
「俺の業務を妨害するな!ここにはアポなしでは来んなっていつも言ってるだろ!!」
「んだよ!おんなじチームだし良いだろ!?いつ来ても!?」
「そうっすよ獄さ~ん!たまに連絡しても返信ない時だってあるじゃないですか~!」
(ほ、本当に天国先生の知り合いなんだ・・・。
_____あ・・・お、思い出した・・・!!)
三人揃ったところでどこかで見た事がある光景と繋がった。
この二人は、天国先生とチームを組んでる『Bad Ass Temple』の皆さんだ!
このチームはナゴヤディビジョンを代表する程の実力の持ち主で、ラップが出来ない私には縁遠い存在だと思っていた。
まさかこんな形でお目にかかるなんて・・・。
「・・・・苗字。こいつらは俺とチームを組んでる『波羅夷空却』と『四十物十四』だ。」
「Bad Ass Templeのお二方でしたか・・・!これは失礼致しました!」
「獄。そいつは新しい奴か?」
「お前な・・・。少しは年上への礼儀ってもんを弁えた方がいいぞ・・・。
ちょっと前から俺の秘書をやってる苗字だ。今度から俺がいない時は、こっちに伝言を任せてくれ。」
その後は天国先生の部屋へ行き、ラップバトルの打ち合わせや互いの近況報告などを聞いた。
今後のスケジュールを私が担当している事もあり、自然とチームの皆さん含めてお話させてもらった。
「_____んじゃ、また来るぜ!」
「ふっ・・・。次の巡り合う刻まで、我はこの身を闇に委ねるとしよう・・・。」
「・・・・ったく。騒がしい奴らだ。これからあいつらが来た時頼むぞ、苗字。」
「はい。意外と話しやすい方々でビックリしました。」
「あいつらとは色々長い付き合いだし・・・面倒だろうが仲良くしてやってくれ。」
天国先生がいきなりげんこつした時は驚いたけれど・・・言い換えればあれも仲が良い証なのだろうか。
なんだかそう思うと微笑ましい。忙しい中でもチームで活動しているのだから、天国先生はなんだかんだ楽しそうだ。
仲間がいる。友達がいる。・・・・正直、ちょっと羨ましいかも知れないな・・・。
それからまた暫くして。
「____よう名無!獄はいるか?」
「・・・あら。空却さんに十四さん。こんにちは。」
「こんにちはっす!名無さん!」
嬉しい事に、私もこの二人と少し仲良くなった気がする。
・・・というか。いつの間にか私を苗字ではなく下の名前で呼ぶようになった。
私が空却さんと十四さんを苗字で呼んでいたら「堅っ苦しいのは拙僧は嫌いだ」と言われたので・・・・。
「生憎ですが今日は、天国先生は出張で留守にしています。ごめんなさいね・・・。」
「なーんだいねぇのか。んじゃああとでメールでもしてみっか・・・。」
「・・・・あ!ちょっと前に『俺は県外にいるからくれぐれにも事務所に行くなよ』って来てるっす~!
どうしましょう空却さ~ん!?」
「どうしましょうもねえよ。こうして来ちまったんだしよぉ。」
いつものように出入り口で言い合いをする二人。いつも事務所は静かだから、この二人が来るとちょっとざわつく。
天国先生がいれば部屋にお通しするなり出来るけど、どうしたものか。そう考えていると・・・。
「・・・・じゃあ名無。お前は時間あんのか?」
「私・・・ですか?なんでしょうか?」
「ちょっと聞きてえ事があってな・・・。ここじゃなんだからどっかで話してえ。」
私に用事・・・?天国先生に伝言でもなく・・・・?
よく分からないが何か空却さんが真剣な眼差しをしているで、とりあえず二人を空いている応接室に通す事にした。
「・・・お茶でよろしかったですか?」
「おう。拙僧は茶飲み慣れてるんでな。」
「空却さん、本当に聞くんですか・・・?」
「だって気になんだろう?十四?」
「そうですけど・・・。」
とりあえず私も向かい側のソファーに座ってお二人の話を待つ。
私の時間はちょうど空いているし、少しくらいなら話が長引いても問題ない。
・・・長引く程の話をこの二人がするとは思えないけれど・・・。
「・・・・んじゃあ名無。聞きてえ事ってのはな、お前なんで獄の秘書やってんだ?」
「・・・・。・・・・・・え・・・・?」
「他にも法律事務所なんていくらでもあんだろ?獄が有名だからか?」
まさかそんな個人的な事を聞かれるとは思っていなかった。
驚きを隠せないでいると、十四さんは困ったような顔で私と空却さんを交互に見つめている。
・・・素直に答えた方がいいだろうか・・・。
「・・・確かに一理ありますね。私は前から・・・天国先生に憧れていたんです。
大学を出て秘書を募集していると知った時・・・私でも力になれればと思ったんです。
無敗の弁護士のお力になれるなんて光栄ですから。ここにいる事務所の皆さんも、そうではないですか?」
「・・・・そうか・・・・。獄から聞いた通りだな・・・・。」
「・・・・・?」
「あの・・・・名無さん。失礼な事を聞いちゃうかもなんスけど・・・・なんで獄さんに憧れてたんすか・・・?」
憧れ。私の中にある、天国先生への紛れもない感情。
私はこの感情に嘘はつかない。けれど、それだけじゃない。
_____この二人には言えない。でも・・・天国先生にも誰にもバラしたくない事があるから。
「先程も言った通り、あの人は無敗の弁護士だからですよ。面倒見が良くて、お仕事にいつも熱心で・・・。
普通。特定の案件を無料で引き受けたりはしないですよね。そういう所も、尊敬しています。
あんな風には・・・なかなか生きれませんから・・・。」
「・・・そうっすか。自分も、獄さんの事を尊敬してるっす!」
「・・・・名無がそういうなら仕方ねえ。納得しといてやる・・・。」
「・・・何か、天国先生から聞くよう言われたのですか・・・?」
「いや。これは拙僧個人で見極めたかっただけだ。どんな理由で秘書やってんのかって・・・。
少なくとも
なんだか私はこの二人に何か良からぬ疑いをかけられていたのだろうか。まるで面接官のようだった。
そこまで天国先生の事を気にかけているなんて。本当に仲が良いんだな・・・。
「・・・てっきり拙僧は、名無が何か"隠し事"してんじゃねえかと思ったんだ。
"低き所に水溜まる"。注目される奴の所にはなにかしら人が集まるからな。
・・・まあ、獄の場合は・・・わりとどっちも引き寄せてるように感じてっからよ・・・。」
「そうですか・・・。私は・・・あの人の力になれているでしょうか・・・・。」
「名無は自信持っていいぜ。プライベートでもあいつが『良い秘書がついた』って褒めてたしよ!」
「く、空却さん!それ獄さんが内緒にしろって言ってたやつじゃ・・・」
「いーんだよっ!本当の事言った方が名無も安心すんだろ?」
良かった・・・。私は天国先生に信頼されているらしい。
空却さんが言う通り、天国先生は良い意味でも悪い意味でも注目される方だ。
いじめの案件をタダで引き受ける事には善人扱い。一方で、未成年に対する処罰の厳しさから悪人扱いされる時もある。
・・・・皆分かってない。・・・私はそんな天国先生だから、尊敬しているのに・・・・。
「あ、あとそうだ。もう一つ聞くが、名無は彼氏とかいんのか?」
「空却さん!直球すぎるっす!?」
「・・・・へ?彼氏ですか?」
び、ビックリした。やっぱりこの二人も年が年だからかそういう話をするんだ・・・。
色恋沙汰が気になる年頃なんだな・・・。これも素直に答えておこう・・・。
「彼氏はいないですよ。そんな人はいません。」
「よっしゃ!!良かったぜ!!んじゃあ拙僧達は帰るとするわ。色々有難うな、名無!」
「いえいえ、私もお話出来て楽しかったですよ。またいらしてください!」
「名無さん・・・色々プライベートな事聞いて申し訳ないっす・・・。」
「ふふっ。十四さん、大丈夫ですよ。本当の事ですし気にしていません。」
「じゃあ自分はこれで・・・。空却さ~ん!待ってくださいっす~!!」
・・・再び事務所に静寂が訪れた。応接間から出ると、PCを叩く音と印刷機の稼働する音でいつもの光景に戻ったと実感する。
私も残りの業務に戻って、今日は早めに帰るとしよう。
天国先生が・・・良い秘書って言ってくれたみたいだし・・・。今日は良い日だなって思ったんだ。
「_____十四。名無が秘書になった理由だが・・・獄には言わねえ方がいいぞ。」
「えっ・・・・なんでっすか?本当の事って名無さん言ってたっすよ?」
「・・・・確かに本当だが。なにか"言いたくねえ事"があるらしい・・・・。
きっとそれは・・・・"拙僧らと同じような理由"だと思う・・・。」
「・・・・・!それ・・・って・・・・。」
「多分これは勘だが・・・・名無が隠したがってる。
・・・・獄に言うと、多分詮索しちまいそうで・・・。拙僧らだけの秘密だ。」
「・・・・・了解っす・・・・。」