お付き合いする前
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獄さん達のあとを追うとやっぱり楽器屋さんだった。近いのはこっちだから先に済ませるって声が聞こえる。
音楽関係は詳しくないし、昔からさほど興味は湧かない。せいぜいお気に入りの曲がいくつかあるぐらいかな。
でも・・・。獄さん達に出会ってラップを聞くようにはなったなあ・・・。
「う~ん・・・練習用の本買おうか・・・迷うっすね・・・。」
「お前持ってるんじゃなかったのか?」
「まだそれでも分からないところがあったりするので、勉強になりそうなのないかなーと・・・。」
「俺んちにも何冊かあるし、当てはまるのあったらお前にやるよ。」
「えっ!?本当っすか!?嬉しいっす~!!」
なんだかギター売り場の前で二人が楽しそうに会話している。話の内容はよく分からないけれど、なんだか微笑ましい。
獄さんも昔弾いてたって言ってたし。話が通じる者同士、良い組み合わせなんだろうな。
一方空却さんは頭の後ろで手を組んでその辺をふらふらしている。私もあまり楽器屋に寄る機会がないので適当に見て回る事にした。
(『すぐ出来る!ラップ初心者の必読本!』か・・・。楽器屋さんだけどこういうのも置いてあるんだ・・・。)
「____・・・ほう。ラップやりたいのか?」
「うわあ!?ビックリしたぁ・・・。やりたい訳じゃないです、ただ見てただけですよ。」
特集されたラップの本棚を眺めていると後ろに獄さんがいたんで驚いてしまった。
十四さんとの話も終わったので私を探していたらしい。
「十四さんにギターの本あげるんですか?」
「なんだ、聞いてたのか。いくつかやる予定だ。俺が持ってるより、十四が持った方が今後の為にもなるだろうしよ。」
「そうですか。・・・獄さんは今ギターされないんですか?」
「昔ほどは、な・・・。今も昔も・・・俺より楽しんでる奴の背中見てた方が良い。
・・・そう思えるようになったんだよ。」
少し遠くにいる十四さんを見る顔は、どこか寂しそうというか。笑ってはいるけど、どこか儚げな表情に見えて・・・。
・・・やっぱりお昼に見たのは気のせいじゃなかったんだ。"楽しんでる奴"が過去にもいたって事・・・?
_____もしかしてっ・・・その"昔"って・・・・。
「・・・・お?名無、もしかしてラップに興味あんのか?拙僧が教えてやろうか?」
「い、いえ!私はやらないですけど・・・。皆さんがされるので少し理解が深まったなあと思って・・・。」
「学びてえ時はいつでも拙僧らに言えよ!!即日で出来るようにしてやるぜ!!」
「おいおい。なんで俺も教える事になってんだ?許可した覚えはねえぞ。」
「んだよ。興味あるなら早え方がいいだろ?『鉄は熱いうちに打て』だからな!!」
「だ、大丈夫です空却さん!皆さんの見てるだけで楽しいので・・・・!!」
ひょこっと現れた空却さんに危うく勘違いされそうになった。わ、私がいつまでもラップの本持ってるからだな・・・しまっておこう・・・。
音楽関係は十四さん始め、皆さんのを見ているに限る。観客の一人にしかなれないけど、応援する事ぐらいは出来るから。
結局、そのあと十四さんはギターの手入れ道具を買ったみたい。
楽器屋さんをあとにして、歩いている時もギターの魅力について楽しそうに喋っている。
・・・私はその時。さっきの言葉が引っかかってずっとその事を考えていた。
(・・・・多分・・・獄さんの言う"昔"って・・・学生の頃だよね・・・。
獄さんのお兄さんが・・・・ギターやってたのかな・・・。・・・想像でしかないけど、お兄さんの真似をしてギターを・・・?
_____そういえばっ・・・・・なんで獄さんは私にお兄さんの事話してくれたんだろう・・・。
事務所の中でも知ってる人は数えるぐらいしかいないって聞いたけど・・・。・・・どうして・・・・。)
ふと頭によぎってしまう疑問。事務所の新参者である私に、どうしてそんな過去の事を話してくれたんだろうか。
私が秘書という立場だからなのだろうか。はたまた、恋愛感情があるからなのか。・・・考えても答えは見つかりそうにない。
けれど少なからず言えるのは、こうして隣りにいる事も含めて。私は獄さんからそれなりに信頼されているという事で。
(・・・・・・獄さんの考え・・・。・・・思ってる事がもっと知りたい・・・・。
・・・・そう思ってしまうのは・・・・"単なる興味じゃない"のかなっ・・・・?)
表面上では話を聞いている振りをして、この場に似つかわしくない想いが駆け巡る。
その時。私の胸の奥がチリッと焼けるような感覚に襲われたのは。気のせいなのだろうか。
「・・・お。このシルバーかっけぇな!!獄、次のライブにどうだ?」
「どうだって・・・。空却、お前金あんのか?」
「リーダーが言ってんだ。次のテーマに活かそうっつってんだから野暮ってもんだろ!!」
「俺は買わねえぞ。そういうのは自分で買え。」
「んだよ、ケチくせえ弁護士だなあ!」
そうこうしている間にアクセサリーのお店に到着。空却さんがなにやら獄さんにねだっている。・・・ちょっと年相応で可愛いかも。
宝石ほど高いものはあまりないから十四さんや空却さんでも買おうと思えば買える。
私もこういうのを見るのは好きだ。・・・これから付ける場面があるなら検討してもいいかな?
とりあえず話をしている二人を横目に店内を見て回る。
(・・・・ちょっとカッコ良い。でも私にはこういう系のは似合わないかなぁ・・・。)
手に取ったのは羽の形をあしらったブレスレット。ヴィジュアル系を観た後だからこういうスタイルに引っ張られてるのかも・・・。
羽の真ん中に真紅の小さな玉がついている。でも私が付けるには少々派手な気がする。
こういうのはどちらかと言うと____
「・・・そ、そのアクセ!カッコ良いっす~!!名無さん買うんすか!?」
「あ・・・。いえ、私が付けるにはちょっと派手かなーって思ってて・・・。でも十四さんなら似合いそうですね!」
「名無さんもそれぐらい大丈夫っすよ!!
・・・うむ。その横の、獣の骨を象った首に装飾せし供物も!なかなか貴殿に似合うと思うぞ・・・。」
ちょうど良いところで十四さんが通りかかってくれた。・・・なんだかヴィジュアルモードのスイッチが入ってしまったみたいだ。
この辺のアクセサリーはどこか学生に人気がありそうなイメージ。私は20代だけど、ちょっと雰囲気が違うような・・・?
カッコ良いと思ってしまうのは事実だけどね。十四さんのライブに行く時だけならアリかも知れない・・・。
「・・・おお、マイゴッド獄・・・。マスターとの交渉は成立したのか?」
「あんなもん買う訳ねえだろ。・・・名無はなんか欲しいもんあったか?」
「えっと・・・十四さんのオススメを聞いてました。」
「我と名無は魂の波長が合う・・・。故に、この辺りの供物は我々の輝きを増す礎に相応し」
「そうかぁ?俺だったら別のにするけどな。」
「・・・えぇー・・・。んじゃあ獄さんだったら、名無さんにどんなのが似合うと思うんすか?」
ポーズを決める十四さんを遮って獄さんが首を傾げる。いつも通りの光景がちょっと面白くて笑いを堪えた。
子供のように膨れる十四さんを気にする様子もなく、少し離れた場所のコーナーから一つ。金色の小さめなネックレスを持ってくる。
金色と言ってもそこまでギラギラしている訳ではない。一つだけ飾りらしいものといえば、真ん中の雫型ぐらいだろうか。
「・・・強いて言うなら、こんなところだな。」
「うわあ・・・・綺麗ですね・・・!」
「こんな安っぽいところのじゃなく、お前が欲しいならもっとちゃんとしたもんやるよ。」
ほら、と私の手にネックレスを乗せてくれる。商品なので付ける事は出来ないが、少し首元に添えて鏡を見る。
小さな飾りがぷらぷらと揺れている。そして私の顔は、ほんのり紅く染まっていた。
「獄さんはこういったのが好きなんですね・・・。」
「好きっつーか・・・・お前の雰囲気に合うやつだな。・・・似合ってるぜ。」
「・・・・。」
そ・・・そんな真っ直ぐな瞳で見つめられると照れてしまう。獄さんの趣味かどうかは分からないが、確かに控えめな私にはこれぐらいが良い。
値段を見るとそこまでしないので、ちょっと買おうかな・・・とか考えてしまう。でもどうせなら、獄さんはどんなのが好きか聞いてみたいな・・・。
「・・・・オイ。なんかいい感じじゃねえか、あの二人?」
「そうっすね・・・。自分達のは買ってくれないのに、名無さんには二つ返事なんすねー・・・。」
「だな・・・。ありゃあ絶対『惚れた弱み』だな・・・。」
「全部聞こえてんだよお前ら。何こそこそくっちゃべってやがる。」
「ひぃ!地獄耳っす~!」
私の視線の先。・・・要するに獄さんの後方で二人が会話しているのが目に入った。
私も少しだけど聞こえてしまった・・・。やっぱり獄さんは私に対してだいぶ優しいみたい。
照れ隠しなのか二人の方に行ってしまったので、とりあえずネックレスは元の場所に戻しておく。私はまたの機会にしよう。
・・・獄さんの好みも、いずれ分かるかも知れないし。買わせるつもりなんて全くないのもあるしね。
アクセサリーはひとまず皆買う事なくとりあえず次の目的地へ移動する。
こういうウィンドウショッピングっていうのも、一人じゃなくて皆さんと一緒だと楽しいな。お友達だから・・・かな・・・?
歩いて行くとなんだか賑やかな音が近付いてくる。辿り着いた先はゲームセンターだった。
確か空却さんの目当ての場所。大きなリズムゲームの機械を見るなり既に駆け出していた。
「ヒャッハー!!拙僧はこれ得意だぜ!!おい十四、お前もやれ!!」
「えぇえっ!?こ、これ叩くの地味に難しいんす・・・
・・・ん?おお!!我の敬愛せし、同胞の新たなる渇望のメロディーがあるではないか!!それならば我も参戦せねばなるまい!!」
「二人共凄いですね~!あんなに早いの出来るなんて尊敬しちゃいます!」
「まあ、ああいうのはリズム感大事だからな。ラップやってんならある程度は出来るだろうよ。」
ゲームセンターは怖い人達がいるイメージがあったんでほとんど立ち寄った事がない。というか一人だとどうも勇気がいるので来た事はなかった。
でも皆さんと一緒なら怖くない!なんというか、こんなに楽しいところだったんだ・・・他も見て回りたい・・・!
「次・・・次・・・。お!あれ銃で撃ちまくるやつじゃねえか!!二人用だし行くぞ十四!!」
「え、えぇええーー!?空却さんそれホラーシューティングじゃないっすかあー!!ゾンビは嫌っす!!うわあああ~~!!!」
なんだかおどろおどろしいカーテンが垂れ下がるホラーゲームの中に二人は入ってしまった。
狭くてとても私達は入れそうにない。けど中から十四さんの叫び声が聞こえてくる・・・。
「・・・ひ、引こずられてしまいましたね・・・。十四さん大丈夫でしょうか・・・?」
「まああいつらなら適当に遊ぶだろ・・・。他の見てみっか?」
「はい!全然来た事ないので、色々見たいです!!」
獄さんと二人になってしまったのでそのまま辺りを見回す。20代にもなってきょろきょろしてるっておかしいかな・・・。
リズムゲームとかアーケードゲームっていうここでしか遊べないのもいっぱいある。何をしようか迷ってしまう。
そうしたらクレーンゲームがたくさん並んでる場所に来た。か、可愛いぬいぐるみがいっぱいある・・・!!
「これ・・・クッションですかね?可愛い・・・!!」
「そうみてえだな。・・・この猫みてえなの知ってんのか?」
「朝の天気予報のあと、ショートアニメに出てるキャラなんです!!
この歳でなんですが・・・実は好きで毎週観てます・・・。」
「ふっ・・・良いんじゃねえか?そういやあこいつ、若い奴らに人気とか聞いたな。」
こ、こんな可愛いグッズがあるなんて知らなかった。通販とかでたまに見るけど、抱っこ出来るぐらいの大きさがあるのは初めて知った。
ゲームセンター限定みたいだし。クレーンゲームやったことないけど欲しい・・・。
お金もあるしちょっとやってみようかな・・・?
「獄さん、遊んでもいいですか・・・?」
「おう。そろそろ落ちそうだし取れるかもな。」
「じゃあやります・・・!!えっと・・・ここで奥に操作で・・・。
・・・・ああ、引っかかったと思ったのに!地味に難しいですね・・・!」
いつになく今の私は真剣な顔をしているに違いない。た、楽しい。けど悔しい。
クッションのしっぽを挟んだかと思ったのに微妙に位置がずれててすり抜けた。これは100円玉が次々と消えていく・・・。
「んー・・・そうだな・・・。奥の位置、俺が見といてやるから名無はそっちを頼む。」
「え?協力してくれるんですか?」
「こういうのは連携プレイだ。俺だけ何もしねえってのも来た意味ねえしな。」
「で、ではお願いします・・・!!」
獄さんが台の端に回り込んで見てくれるらしい。手前だけじゃどうも感覚が掴みづらかったのでとても助かる。
ある程度アームを進めると「ストップ。・・・そこから1cm・・・いや、1.5cm横だ。」と的確な指示をくれた。
なんだか少し仕事中の獄さんを思い出す。この人はプライベートでも指導者というか仕切る側に向いているのかも知れない。
言う通りに感覚で1.5cmほど動かしてみる。するとアームがいい感じのところに降りていって・・・
「____あ!!持ち上がった!!
・・・・や、やったぁー!!取れました!!取れましたよ獄さん!!」
「くく・・・良かったな。お前がそんなにはしゃぐの、初めて見るぜ。」
「獄さんのおかげです!!私だけじゃ絶対取れませんでした・・・ふふっ、可愛いです~!!」
ぬいぐるみのふわふわとした感触がとても心地良い。抱っこするだけで癒やされる。本当に取れて良かった。
思わずはしゃいでしまったからか、獄さんがくだけた表情で笑っている。こんなに柔らかな顔もするんだ・・・・。
他にも小さいクレーンゲームでお菓子を取ったりしていると、半泣き状態の十四さんとノリノリの空却さんが戻ってきた。
ひ、一口サイズだけどお菓子を上げたらどうにか普通の状態になった。どんなゲームに付き合わされたんだろうか・・・?
「・・・あ。そのクッション知ってるっす!!名無さんが取ったんすか?」
「これ可愛いですよねっ!獄さんが協力してくれたんで取ることが出来たんです!!」
「俺はただ指示しただけだ。実際に動かして取ったのは名無だし、そもそも落ちそうな場所にあったんだ。」
「『運も実力の内』だぜ!んじゃあ獄と共同作業で取ったっつー訳か。良かったじゃねえか名無!」
共同作業、か・・・。まあ確かにそうなんだけどなんだかその言い方は語弊があるような・・・?
でも実際二人で取ったようなものだし、間違ってはないのかも・・・。・・・って、私気にしすぎかな・・・。
ずっとクッションやお菓子を抱いてるのも手が塞がるので専用の袋に入れる。ぬいぐるみが袋の中からこっちを見ている気がする。可愛い・・・。
「あとは・・・名無の買い物か。俺達がいるんだ、荷物持ちなら任せろ。」
「そうだぜ!今日は夕飯なにすんだ?」
「そうですね・・・お魚系にしようかと思ってます。」
「こないだの名無さんの料理美味しかったっすから、また機会があったら食べたいっす!」
「また皆さんでどこかお出かけしたいですね!今日も楽しかったです!」
なんだか自分で言ってて、今日がもう終わってしまうことに若干の寂しさを感じている。
元々十四さんのライブだけだったはずなのにすっかり夕方になってしまった。
時の流れが早く感じるのは私自身楽しんでいるからなんだろうな。こんなに充実した日になるなんて・・・人生分からないものだ・・・。
買い物はちょうど1階にスーパーがあったのでそこで買う事にする。安い日でもないからほどほどに。
途中お肉売り場を通る時に空却さんの瞳が輝いていた。「ステーキ食いてえー!」となにやら獄さんと話している。
「灼空さんにでも頼め。なんでも俺に言うな。」ときっぱり断る獄さんだが、私は目線が手羽先の方をちらっと見たのを見逃さなかった・・・。
「・・・・ふふっ。」
「なんだか名無さん、楽しそうっすね!」
「こんなに賑やかな買い物出来て楽しいです!・・・お肉もついでに買っておこうかな。」
笑いを堪える私を十四さんだけが気がついたみたい。ステーキはちょっと高いんで手羽先だけ。今度家で作る用にしよう。
カートにまあまあの量の商品が積み上がる。お会計を済ませて、袋に入れる時も一緒に手伝ってくれた。
駐車場へ向かうと外が暗くなっていて・・・。このままあの家に帰るんだな、と思うと胸が切なくなる。
・・・いつからこんな寂しがりやになったんだろう。・・・いつから、皆さんともっと一緒に居たいって、思うようになったのかな・・・。
でも・・・・仕事してても、また遊びに来てくれるかな。なんて。
そう思うと・・・・少しだけ楽になった。私は考え方も多少明るくなったのかも知れない。
「____今日も楽しかったですね・・・・。十四さんの歌聞いたり、皆さんと遊んだり・・・。」
「そうだな。こんなワイワイした休日も、悪くねえもんだ。」
空却さんと十四さんを送ったあと。すっかり静かになった車内で獄さんに話しかける。
満更でもなかったようで、微笑んだ笑みはどこか温かい気がした。
「買い物とかも乗せてもらっちゃって・・・本当に有難いです。」
「気にすんな。今度はお子ちゃま達が居ねえ時に、ゆっくり付き合ってやるよ。」
「ふふ・・・悪いですよ。・・・でも機会があれば、またお買い物行きたいですね。」
なんて話していると、見慣れた道に着いたのでもう家が近い。獄さんとはここでお別れだ。
玄関までは獄さんが荷物を運んでくれたので凄く助かる。買い物袋の隣りに、可愛いぬいぐるみが少しだけ顔を出している。
「じゃあな、名無。また明日。」
「有難うございました!ではまた明日!」
・・・・さっきの車内とはまた違う、いつもの静けさ。
とりあえず荷物を冷蔵庫へしまって。ぬいぐるみは・・・ソファーにでも置こう。
可愛い顔がこちらを見ている。と同時に、獄さんのあのくだけた顔が頭によぎった。
「・・・・ふふっ。」
ふわふわのぬいぐるみを抱きしめると、なんだか自然と笑えてきた。
楽しかった。そして面白い一日だった。・・・・何より、嬉しかったな・・・。
ぬいぐるみを抱いて、暫くその場で思い出し笑いをしていた。寂しさは、不思議と忘れている私がいた。