お付き合いする前
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______やっと。やっと貴方の傍に来れましたね・・・・。
私はこの日を・・・ずっと待っていましたっ・・・・。
「皆。今日は朝礼がてら新入社員を紹介する。
今日から俺の秘書を担当する事になった『苗字』だ。」
「初めまして!不慣れな点もあるかと思いますが、秘書として天国法律事務所のお役に立てるよう頑張ります!
どうか宜しくお願い致します!」
『宜しくお願いしますー。』
今日から私の初勤務が始まる。緊張していて、上手く喋れるか不安だったけれど最初の自己紹介も無事こなせた。
私は苗字名無。この天国法律事務所の秘書をやっている。
天国先生は私の憧れの人。その理由は・・・正直ちょっと訳ありだけれど知らない方がいい。
人間聞かれたくない事の一つや二つ、誰だってあるはずだからね。
_____私には好きな事が二つある。
「天国先生、お疲れ様です。」
「お、苗字。気が利くな。有難うよ。」
「ふふっ。お邪魔ではなかったですか?」
「いんや。むしろナイスタイミングだ。ちょうど一息ついでにコーヒーが飲みたいと思ってたからな。」
一つ、天国先生にコーヒーをお出しする事。資料を見て眉間を押さえてる時を狙ってコーヒーを抽出してお持ちする。
するとこんな感じで天国先生に褒められる。やった!って心の中でガッツポーズをする。
天国先生の笑顔を見るだけで今日も頑張れそう。
煙草を吸ってる姿も良いけど、こうしてコーヒーを飲んでる姿も似合うなあ。
「・・・よし。この案件も終わりだな。」
「お疲れ様です、先生。」
「今回は楽だったな。金もそんなに出てねえし、文句無しだ。」
二つ、先生のドヤ顔を隣りで見る事。流石無敗の弁護士というだけあって、天国先生が負ける事はない。
お金が大好きな天国先生は費用がそんなにかからなかった時はご機嫌そう。
そんな顔を見ているとこの法律事務所に勤めていて。秘書でいて良かったって心の底から思える。
やっぱり先生は頼りになるなあって・・・。
ここまで聞くと私が天国先生に好意があるかのようだけど、好意というより私の憧れ。
厄介な件でもなんだかんだ言いつつ引き受けるし。時に天国先生は無料でもあれこれと依頼人の世話を焼くし。
私はそんな風になれない。そんな度胸も根性も持ち合わせていないから。
だからこの人の傍で、この人を支えられればそれで満足。
ここの秘書になるのは・・・・私の夢だったんですよ。天国先生・・・。
「苗字さん、お疲れ様です。」
「お疲れ様です。」
「あの・・・良ければこのあと、仕事終わりに食事でもいかがでしょうか?」
「すいません・・・。お誘いは嬉しいのですが、まだ片付け中の業務があるので今日のところは遠慮しておきます。」
「そうですか・・・。ではまた。失礼します。」
ここに勤めて何ヶ月か経った頃。こうして社員の方から食事に誘われる事が増えた。
生憎私は男性を"そういう目"で見れないのでお断りしている。
嫌いではない。けれどそういったのは得意ではないから。
「・・・・。」
ため息を軽くついてデスクに向かう。今は仕事以外を考えようともしてないし。
もう少し年になったら考えたりするのかも知れないけれど。今の私には関係なさそうな事だ。
コンコン
「開いてるぞ。」
「失礼します。天国先生、この前の案件、データまとめておきました。置いておきますね。」
「おう、いつも助かるぜ・・・。ていうかこんな時間までいたのか。
もう外も暗いから、さっさと帰るんだぞ。」
「はいっ。ご心配有難うございます。」
そんな事を言う天国先生だって遅く残る時は徹底的に残るのに。人の事は言えないはずですよ?
言えたらいいけど私にその権利はない。とりあえず一礼して帰る準備をしようと扉の方へ向かう。
「・・・苗字。」
「はい?なんでしょうか?」
「・・・たまには仕事放っといて。他の奴と飯ぐらい行ってもいいんだぞ?」
な、なんで天国先生がそんな事・・・。ちょっと前の会話をどこかで聞いていたみたいだ。
別に気になさらなくていいんですよ?私は・・・ここにいたいからいるのに・・・。
「お気遣い有難うございます。その時が来たら行かせていただきます。」
「・・・・・。まあいいか。お疲れさん。」
「お疲れ様です。失礼します。」
"その時"なんて来ない。天国先生にもなんとなく伝わっちゃったかな・・・。私一瞬表情曇ってたかも知れない・・・。
大丈夫だとなんとか自分に言い聞かせて。身支度を整えて事務所を出る。
ふと振り返ってみると一箇所だけ部屋の明かりがついている。さっき天国先生がいたところだ。
(・・・・もし、食事に誘われるのが天国先生だったら・・・。・・・・なんて・・・考えたところで仕方がないよね・・・。)
もしもの事を考えるのも私は得意ではない。そんな事を考えて、現実になった試しがないからだ。
天国先生はそんな目で私を見ていない。私も天国先生をそんな目で見ていない。
私は秘書でいればいいから。私が抱くのは憧れであって、皆の考えるそれとは似て非なる感情だから。
「・・・・・・・。」
そう思っている。・・・・今のところは、だけれど。
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