放課後ロノマ
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「一人でなにやってるんですか」
「あ、宗次郎。おはよう」
「おはようって、もう夕方ですよ。ホノハ」
放課後なんとなく暇を持て余していた私は、特に動く気力もなくて、教室の自分の席に座ったまま、訳あってしゃぼん玉なんて子供じみたことをして一人でのんびりと遊んでいた。
訳っていうのは別に、全然大したことじゃなくて。
「なんかもらったの、友達に。家にあったけどいらないって」
「ゴミじゃないですか、それ」
「だから暇だし吹いてみたら、結構楽しくて」
「でも、さすがに教室で吹くのはまずいんじゃないですか」
「そうかなあ」
廊下から顔を出していただけの宗次郎は、教室に入り私の席の方に近付いてくると、持っていた鞄をそのへんの机の上にポンと乗せた。
「帰らないんですか?」
「宗次郎はなんでわざわざここに来たの?違うクラスのくせに」
「しゃぼん玉が教室から出てきたら覗いてみたくもなりますよ」
「え、外までいってた?」
「ええ、それも結構な数出てましたよ」
「やばいね、それ」
とは言ったものの、まだ半分以上原液が残っているため、私は何事もなかったかのように続きのしゃぼん玉を作り続けた。
「宗次郎もやる?」
「いいんですか?口つけちゃって」
「べつに、そんなんは気にしないけど」
と、油断した隙にするっと指から奪われたストロー。
見上げれば、それを咥えて宗次郎はすでに2、3個しゃぼん玉を作っていた。
「へえ、結構難しいんだなぁ、しゃぼん玉って」
「そうかなあ」
「間接じゃ物足りないって顔してますね」
「…それは、気のせいだよ」
「そうですか」
宗次郎は私の前の席に腰掛けると、体ごと振り向いて、私の机に置いてあるしゃぼん液が入った容器を虚ろな目で眺めている。
久しぶりにこんなに近くで顔を見たから、少しだけ恥ずかしくなってきた。
「作らないんですか、しゃぼん玉」
「え、あ、うん」
「顔、赤いですよ」
「…う、」
宗次郎がぐい、と私の方へ身を乗り出したから、顔がもっと至近距離になった。
諦めて目を瞑ると、軽く触れるだけのキスをされる。
「やっぱり直接の方がいいですね」
「強引、強姦、セクハラ」
「いや、そこまで酷いことはしてないじゃないですか」
「そうだけど」
宗次郎は私の机に肘をつき、手の甲に頰を乗せてじっとこちらを見つめている。
その視線に耐えきれず、隙を見て宗次郎が軽く摘んでいたストローを奪い返すと、すぐに小さなしゃぼん玉を何個も作った。
「それ、照れ隠しですか?」
「違う、う、うぇ」
「あーあ」
不意打ちで話しかけられた為に、ストローを咥えたまま返答したものだから、原液が逆流し口内を纏わりつく。苦過ぎる。最悪だ。
「助けて、水、うがいしてくる」
「仕方ないなあ、貸してください」
「んう…!」
顎を掴まれ、強引に二度目のキスが落とされた。
宗次郎の舌が、出たり入ったり、苦味をどんどんと絡め取っていく。
「もう、バカだなあ」
「…やめてよ、思わせぶり」
「苦いの、なくなりました?」
「なくなったけど」
それを聞いて満足げに笑う宗次郎。
私はしゃぼん液の入った容器に蓋をして、そろそろ帰りの支度を始める。
「ゴミじゃなかったですね。結構面白かったです、これ」
「うん、割とね…」
「帰りましょっか」
「そーだね」
宗次郎がこんなことしてどうしたいのかはわからないけれど、
そんなくだらないことは、たぶん聞かない。
‐おわり‐
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