メイクダウン
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「ホノハ、まだですかぁ?」
「ごめん~、あともうちょっと待って~」
「あはは、ホノハは本当に支度が遅いですねぇ」
「だって、お化粧は絶対に手ぇ抜けないんだもん~」
「はいはい、ちゃんと待ってるから早くしてくださいね」
「ごめんなさ~い」
今日は久しぶりに宗次郎とデートだっていうのに、優しい宗次郎に甘え、私はとろとろとスローペースで身支度をしていた。
せっかく宗次郎とお出掛けするのに、自分の納得のいくおしゃれができないなんて、それこそ今日という大切な一日が台無しになってしまう。
…というわがままな持論のせいで、一応定めた出発予定の時刻はとっくのとうに過ぎている。
ごめんね宗次郎。本当にごめんなさい。
反省はしているものの、速度は一向に上がらなかった。
「ホノハ」
不意に呼ばれ、声に視線だけ向けると、宗次郎はにこにこしながら私の脇に立ち、
鏡と睨み合っている私を鏡越しにじぃっと見つめていた。
「なぁに?」
「ホノハは、お化粧なんかしなくても十分可愛いですよ」
「…可愛くないよ」
「可愛いですって」
「可愛くない!」
「可愛いっ」
「か…わいくないよ…!」
そんなに可愛いを連呼されてしまうと、手元が狂ってアイラインが何ミリもはみ出てしまいそうだし、マスカラが誤って目玉を突き刺しそうだ。
すでに赤く染まってしまった頰を隠すように、その上からピンクのチークをぐるぐると塗りたくった。
「…あ、決めました!」
「え?」
「今日は可愛いホノハと二人っきりでおうちデートです」
「おうち?…わぁ!」
鏡を向く私の背後から、ぎゅっと両腕で私を抱きしめる宗次郎。
驚きのあまり、私の手からはチークブラシがぽろりと転げ落ちる。
宗次郎は顔を私の耳元へ寄せ、塗ったばかりのチークの上に、ちゅっと音を立てキスをする。
「ホノハもして?」
「え、でも口紅ついちゃうよ?チークだって…」
「いいですよ、ホノハのなら」
潤んだ瞳で捉えられ、ドキッと一つ胸が高鳴る。
こういうこと平気で言えちゃうの、ずるい…。
言われたとおり宗次郎の頰に唇を一瞬だけ押し当て、色のついたそこを眺めながら、仄かな特別感に浸っていた。
「じゃあ、今日はおうちデートで決まりですね」
「せっかくメイクしたのになあ…」
「おうちデートですることと言えば、わかってますよね?
ホノハ」
「…わかってない、わかってない」
宗次郎は、ふふ、なんて静かに妖しく笑いながら、そっと私の髪を撫でる。
体勢は先程のまま。後ろから抱きつかれた状態の私は、はみ出た分も全部押し込めて、化粧ポーチの口を静かに閉じた。
‐おわり‐
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