志々雄真実の苦悩①京都大火の日
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「ホノホ、今日も可愛いですね」
「ありがと、宗ちゃん」
「大好きですよ、ホノホ」
「私も、大好き!」
時刻はまだ午前8時。
由美は朝の身支度を終え、ようやく目が冴えてくる丁度良い頃だった。
よく晴れた、清々しい朝。
しかし、なぜか釈然としない。
食卓に並べられた出来立ての美味しそうな朝食。
その向こうに、この憂鬱の元凶は居た。
「はい、ホノホ、あーん」
「あーん、ん、うん、おいひい!」
「ふふ、おいしいね」
「あんたたちいい加減にしなさいよ」
ついに痺れを切れせた由美は、この清々しい朝には似つかわしくない、今にも噛み付きそうな剣幕で二人を睨み向けている。
憂鬱の元凶であり、周りを気にせず過剰な愛情表現を送り合う、宗次郎とホノホの二人を。
「何をそんなに怒っているんですか、由美さん」
「こんな朝から怒鳴ったらお化粧崩れちゃいますよ?由美ねぇさん」
「お黙りなさい」
あんたたちねぇ朝っぱらからイチャイチャイチャイチャ鬱陶しいったらありゃしないのよ
そんな見苦しいもの見せつけられたらせっかくの朝食も不味くなっちゃうじゃないのよ
大人しくちゃっちゃと食べるイチャイチャするならここを出て行くどっちかにしなさいわかったわね
由美の説教はおよそ5分に及んだ。
その間、誰一人口を挟んだ者はいない。
ようやく鬼のように吊り上がった目尻が何ミリか下がってきたように見えた頃、志々雄は箸を一旦置き溜息を吐きながら口を開いた。
「まあ由美、お前の気持ちはわからなくもねェ。けどよ、」
「え…?きゃっ…!」
志々雄の空いた右手は隣に座る由美の顎に。
くい、と掴まれ志々雄の方に顔を向かせられる由美。
志々雄の親指は、ぷるんと紅で膨らんだ由美の唇をそっとなぞる。
突然の出来事に、由美の体温はぐっと上がる。
交わる視線はねっとりと艶めかしい。
もはや、周りの目なんてどうでもいい。
その唇を、早く、早く頂戴…ししおさま、、
「…あんたたちねぇ、朝っぱらから、えーと、なんだっけ?」
「鬱陶しいのよ!出て行きなさいよ!邪魔なのよ!みたいな?」
アハハハハ、という二つの甲高い笑い声で一気に現実へと引き戻される。
一瞬でも、二人と同じ世界に入りかけてしまった自分が悔しくて仕方がない。
「そういう事だ。由美、朝飯くらい静かに食わせてくれ」
「はい、志々雄様…」
萎む由美に、真っ正面から向けられる、くすくすと笑いあう二人の憎たらしい笑顔。
覚えておきなさいね。
由美は静かに呟くと、ギロリ、と二人を睨みつけた。
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