夏冷え
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「宗次郎、ちょっと」
「なんです?」
「ちょっと…足貸して!」
「……はい?」
ある夏の日の午後。
ホノカは縁側に腰掛けていた宗次郎の隣に座り、両の足先を宗次郎の足の甲にぴたっと乗せる。
その予想外の感覚に、宗次郎は思わず目を見開いた。
「わぁ、ホノカの足すごく冷たいですね」
「冷え性なの!お願い、もう少し貸して!」
冷えた足裏にじんわりと伝わる温かさに、ホノカはほっと胸を撫でる。
宗次郎の足、あったかいなぁ。
いいなぁ、この足。
縮地だってできちゃうんだもん。
いいなぁ…。
「…ホノカ?」
自分の足をまじまじと見つめるホノカに戸惑いつつも、宗次郎は笑顔でそのままの体勢を保つ。
蒸し蒸しとした暑さの中、時折ふわっと吹く爽やかな風。
それが足元を抜けるたび、氷のようなホノカの小さな足と相まって、ひんやりと心地が良い。
「宗次郎の足、羨ましいな」
「羨ましい?例えばどこがです?」
「縮地が出来ちゃうところと、温かいところ」
「あはは、ホノカの足だって羨ましいですよ」
「え?」
「だって、こんなに綺麗だし」
宗次郎は手のひらを裏返し、ホノカの足の指先から甲を通り、脛から膝にかけてを、そっと優しく撫であげた。
「ちょっと…宗次郎…」
下から上へゆっくりと、繰り返し何度もホノカの脚をさすりながら、宗次郎は時折ホノカの顔を見上げては、妖しく微笑んでいる。
宗次郎…何考えてるの?
こんな真っ昼間から…
「ホノカ…気持ちいいですか?」
だめ、誰かに見つかったら…
どうしよう…!
「やっ…あんっ」
「……え?」
宗次郎のキョトンとした顔に、ホノカはハッと我に返る。
え?何?何が起きたの?今。
「ホノカ、もしかして…今ので感じちゃったんですか?」
「感じ…え…?」
「ほら、もうこんなに温まりましたよ」
宗次郎はホノカの手を取り、今までさすっていた足元へぽんと置く。
ホノカの全身を巡る血が、頭のてっぺんへと一目散に昇り詰めた。
「ホノカ、どうしたんです?さっきから黙っちゃって」
「べ、べつに…」
「もしかして、ただのマッサージで感じちゃったこと…恥ずかしいんですか?」
もう、図星も図星過ぎて、なんにも言い返すことなんてできない。
ホノカは真っ赤になった顔を床に向け、口を一の字にぎゅっと噤む。
「あ、そうだ。ホノカ、僕にも貸してください」
「貸す?…あっ」
宗次郎はごろんとその場に寝転がり、ホノカの足を抱き枕のように両腕で抱きしめた。
さらっとした黒髪が疎らに足裏に触れ、時々くすぐったい。
「足、今度は僕が借りる番です」
「はいはい、好きに使ってください」
「冷たくて気持ちいいなぁ」
「…もう、やめてね、そういうの」
先程と同じように自分の足をさする手に手を重ね、その動きを制止する。
もう同じ過ちは繰り返すまい、と一呼吸ついたその時だった。
「やめて?どうしてですか?」
「だめ、だめだめだめ!」
「好きに使って良いって言ったのはホノカでしょ?」
「…うぅ、意地悪」
宗次郎の手は先程の範囲をするりと越え、膝の上まで到達していたが、そう指摘されてしまった為に、制御する術はほぼ皆無。
ホノカの足先はすでに、ぽかぽかと湯気でも見えそうな程十分に温まっていた。
「今度は素直に感じていいですからね」
「意地悪!」
‐おわり‐