第三話
夢小説設定
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「まさか宗のやつがここに女を連れ込んで来るとはなァ」
「まあ坊やも年頃だし、珍しいことではないんじゃなくて?」
「いや、弱い者は死ぬと擦り込まれているあいつが、理由もなしに何も出来ねぇただの女を連れ回すとは思えねェ。
あの女は守る価値がある程いい女なのかねぇ」
「あら志々雄様、もしかして、坊やのことが心配なの?」
「あん?べつに、餓鬼の青臭せェ色恋なんざ放っておくさ」
ーーー
屋敷の入り口である大きな扉の前に立ちしばらくすると、背の高い警官と、小柄な剣客が遠くから歩いてくる姿が見えた。
これから何が始まるのか、無知な私にはまったく見当がつかない。
かと言って、深く踏み込みすべてを知る覚悟も、今の私にはなかった。
「あ、来た来た」
「敵…なの?」
「ええ、元新撰組三番隊組長斎藤一さんと、伝説の人斬りの緋村抜刀斎さんです」
一驚し、思わず両手の平で口元を覆った。
無知な私でも、それ程の有名人ならいくらなんでも知っている。
私は、もしかするととんでもないことに巻き込まれてしまったのかもしれない。
「気をつけろ斎藤、あれが大久保さんを暗殺した男だ」
「嫌だなぁ、今日はただの案内役ですよ。ほら、武器は一切持ってませんから」
これだけの名立たる人たちが危険視する宗次郎。
いつもの通り穏和な笑顔を絶やさず二人を迎えているけれど、あの脚力、そして今緋村さんも言った、大久保利通暗殺の件。
敵に回したら、どれほど恐ろしい人物だろうか。
「奥の間で志々雄さんが待ち兼ねています、さあどうぞ」
二人を連れ先程の和室に着くと、すでに志々雄さんは湯から上がり、この二人を不敵な笑みで待ち構えていた。
このような場に不慣れな私でも、痛いくらいに伝わる、緊迫した空気。
「お主が、志々雄真実でござるか」
「"君"ぐらいつけろよ、無礼な先輩だな」
「気にするな。無礼はお互い様でござる」
この空気に気圧されて、ごくり、と何度も唾を飲み込む。
常人の私にはとても最後まで耐えきれない予感がして、私は周りに気付かれないよう、そっと宗次郎に話しかけた。
「なんか凄い空気だね、緊張する…」
「そうですか?僕はなんだかわくわくするなぁ」
「そ、そう…」
「あ、そうだ。これが終わったら、また甘いものでも食べに行きませんか?」
「いいけど、今はそんな話…」
「あーあ、そう考えると少し退屈だなぁ。早く終わってほしいなぁ」
「怒られちゃうよ、宗次郎…」
そう言いつつも、ぴりぴりとしたこの部屋の空気に似つかわしくない和やかな会話を、許されることならもう少しだけ続けていたかった。
期待を裏切らない宗次郎のあっけらかんとした返答に、私の緊張も自然と解れていた。
「おい。そんな所でいちゃいちゃと会話に花を咲かせてていいのか?抜刀斎なら一足跳びで志々雄のところまで斬り込むぞ」
「大丈夫ですよ、緋村さんは斎藤さんと違って不意打ちなんて汚い真似絶対しませんから」
「ちっ…」
宗次郎、大の大人、ましてや元新撰組にも引けを取らない態度の大きさ、凄すぎる。