前日譚1
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今さら台所に顔を出すわけにもいかず部屋に戻るとしたところで後ろから呼び止められた。
「絵瑠、ちょっとついて来い。」
振り向くと竜二がにやりと笑って、こちらに背を向けて歩き出した。
そしてそのまま家の門を出てしまった。
「ねえ、待って、どこまで行くの。」
「いいからついて来いって。」
仕方なくついて行くと鴨川のほとりで竜二はようやく立ち止まって腰を下ろした。
隣に私も座る。
桜もそろそろ終わりだというのに対岸にもこちらにもカップルが点々と腰掛けていた。
「ねえ、竜二、いきなりどうしたの?」
「こういうのはケジメだからな。」
と言っていきなり私の手を取った。
「絵瑠、目閉じてろ。」と耳元で囁かれた。
驚いて言われたとおりにすると、指先に冷たいものが触れた。竜二の手の熱が伝わって来る。
そっと目を開けると、黒っぽいシルバーの細いリングが私の薬指で星のように鈍く光っていた。
「まだ目開けていいって言ってないだろ。」
と毒づく竜二の手にも同じものが。
「ペアリング...?」
「母さんとゆらが女はこういうのに憧れるってうるさいからな。...っ、俺は指輪なんて柄でもねえのに。」
朝は起きないし、修行は全然手加減してくれないし、意地悪だし、いっつも悪人面のくせに、なんで王子様みたいなことしてるのよ、と言ってやろうと思ったのに言葉が出なかった。
視界がぼんやりと曇る。
泣くほどか、と言いつつも竜二は私の肩を抱き寄せた。
「お前、俺に大した恋愛感情なんてないだろ。それと、呪いのことももう知ってるだろ。辞めてもいいんだぞ。」
そんなこと、柄にもなくこんなキザなことしておいて狡い。
「辞めないよ。」
「お前にだってお前の人生があるだろ。花開院を出て好きなやつと結婚するとか。」
何を今さら。とっくに覚悟なんてできている。
「辞めないよ。これから竜二のこと好きになるかもしれないじゃない。」
お前なあ、と竜二はいつもみたいに笑った。
「それに呪いなんて解いちゃえばいいんだよ、竜二ならできるでしょ。」
ふわりと立ち上がりと竜二もつられて立ち上がった。
指輪をはめた手を月にかざす。
「ありがとう、嬉しかった。」
とほんの少し背の高い竜二の耳元で囁くと竜二は照れたように顔を背けた。
その時向こうから「絵瑠姉ちゃーん!」とゆらが手を振って走って来るのが見えた。
「どうやった、竜二兄ちゃんプロポーズ成功したか?」
そのまま私に抱きついて、ニヤニヤしている。
「お前は情緒というものが理解できんのか。」と竜二がゆらの頭を叩く。
「あ、竜二兄ちゃんがうちに暴力振るった!」
とゆらも摘発でもするかのように叫んでやり返す。
じゃれ合うような二人を見ながらこっそり覚悟を決めた。
あの竜二がけじめをつけたのだ。次は私の番だ。
さよならだけが人生ならば、きっと、私が竜二と出会うことなんてなかっただろう。
呪いが何だ。私を可哀想なんていう権利、誰にもない。私は今幸せだ。
出会えたことに意味があるなら私は竜二の隣で生きていくことを選びたい。
誰もが羨むような二人になりたい。
指輪に誓った。
「絵瑠、ちょっとついて来い。」
振り向くと竜二がにやりと笑って、こちらに背を向けて歩き出した。
そしてそのまま家の門を出てしまった。
「ねえ、待って、どこまで行くの。」
「いいからついて来いって。」
仕方なくついて行くと鴨川のほとりで竜二はようやく立ち止まって腰を下ろした。
隣に私も座る。
桜もそろそろ終わりだというのに対岸にもこちらにもカップルが点々と腰掛けていた。
「ねえ、竜二、いきなりどうしたの?」
「こういうのはケジメだからな。」
と言っていきなり私の手を取った。
「絵瑠、目閉じてろ。」と耳元で囁かれた。
驚いて言われたとおりにすると、指先に冷たいものが触れた。竜二の手の熱が伝わって来る。
そっと目を開けると、黒っぽいシルバーの細いリングが私の薬指で星のように鈍く光っていた。
「まだ目開けていいって言ってないだろ。」
と毒づく竜二の手にも同じものが。
「ペアリング...?」
「母さんとゆらが女はこういうのに憧れるってうるさいからな。...っ、俺は指輪なんて柄でもねえのに。」
朝は起きないし、修行は全然手加減してくれないし、意地悪だし、いっつも悪人面のくせに、なんで王子様みたいなことしてるのよ、と言ってやろうと思ったのに言葉が出なかった。
視界がぼんやりと曇る。
泣くほどか、と言いつつも竜二は私の肩を抱き寄せた。
「お前、俺に大した恋愛感情なんてないだろ。それと、呪いのことももう知ってるだろ。辞めてもいいんだぞ。」
そんなこと、柄にもなくこんなキザなことしておいて狡い。
「辞めないよ。」
「お前にだってお前の人生があるだろ。花開院を出て好きなやつと結婚するとか。」
何を今さら。とっくに覚悟なんてできている。
「辞めないよ。これから竜二のこと好きになるかもしれないじゃない。」
お前なあ、と竜二はいつもみたいに笑った。
「それに呪いなんて解いちゃえばいいんだよ、竜二ならできるでしょ。」
ふわりと立ち上がりと竜二もつられて立ち上がった。
指輪をはめた手を月にかざす。
「ありがとう、嬉しかった。」
とほんの少し背の高い竜二の耳元で囁くと竜二は照れたように顔を背けた。
その時向こうから「絵瑠姉ちゃーん!」とゆらが手を振って走って来るのが見えた。
「どうやった、竜二兄ちゃんプロポーズ成功したか?」
そのまま私に抱きついて、ニヤニヤしている。
「お前は情緒というものが理解できんのか。」と竜二がゆらの頭を叩く。
「あ、竜二兄ちゃんがうちに暴力振るった!」
とゆらも摘発でもするかのように叫んでやり返す。
じゃれ合うような二人を見ながらこっそり覚悟を決めた。
あの竜二がけじめをつけたのだ。次は私の番だ。
さよならだけが人生ならば、きっと、私が竜二と出会うことなんてなかっただろう。
呪いが何だ。私を可哀想なんていう権利、誰にもない。私は今幸せだ。
出会えたことに意味があるなら私は竜二の隣で生きていくことを選びたい。
誰もが羨むような二人になりたい。
指輪に誓った。