前日譚1
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本家入りの日。
祖母の部屋の座敷には春のうららかな日が差し、障子の桜模様を畳に落としていた。
「絵瑠、お母さんもきっと喜んでいるわ。あなたは本家の義娘として、嫁としてあなたの思うように力を尽くしなさい。」
きっと幸せになるのよ、と祖母は私を抱きしめた。
目と鼻の先の本家に行くだけなのに、なんだかお嫁に行くみたいだ。
母を亡くし後ろ盾のない私が本家の息子の許嫁となることで大切にしてもらえれば、と祖母が昨夜お手伝いさんに漏らしていたのが聞こえたことを思い出した。
夫にも娘にも先立たれた祖母を一人にしてしまうのは気掛かりだったけど、門下生やお手伝いさんさんたちが、任せてください、と言って送り出してくれた。
本家の迎えが来て花開院の屋敷に着くと
玄関で竜二の母が出迎えてくれた。
慣れた本家でも今日はさすがに少し緊張する。
「おばさま、よろしくお願いします。」
と言うと、
「今日から、おかあさん、でしょ。絵瑠はもう私の娘で、お嫁さんなんだから。」
と子供のように抱きしめられた。
おかあさんの着物は柔らかいお香の匂いがして、緊張がほどけるようだった。
祖母の部屋の座敷には春のうららかな日が差し、障子の桜模様を畳に落としていた。
「絵瑠、お母さんもきっと喜んでいるわ。あなたは本家の義娘として、嫁としてあなたの思うように力を尽くしなさい。」
きっと幸せになるのよ、と祖母は私を抱きしめた。
目と鼻の先の本家に行くだけなのに、なんだかお嫁に行くみたいだ。
母を亡くし後ろ盾のない私が本家の息子の許嫁となることで大切にしてもらえれば、と祖母が昨夜お手伝いさんに漏らしていたのが聞こえたことを思い出した。
夫にも娘にも先立たれた祖母を一人にしてしまうのは気掛かりだったけど、門下生やお手伝いさんさんたちが、任せてください、と言って送り出してくれた。
本家の迎えが来て花開院の屋敷に着くと
玄関で竜二の母が出迎えてくれた。
慣れた本家でも今日はさすがに少し緊張する。
「おばさま、よろしくお願いします。」
と言うと、
「今日から、おかあさん、でしょ。絵瑠はもう私の娘で、お嫁さんなんだから。」
と子供のように抱きしめられた。
おかあさんの着物は柔らかいお香の匂いがして、緊張がほどけるようだった。