ロクスメ

Stella Pulcherrima


多目的MS輸送艦プトレマイオス。
そのブリーフィングルームは、ミーティング後の静けさに包まれていた。
全員が解散し、持ち場に戻ったり自由に過ごしに行った中、ロックオン・ストラトスは、優しい視線のまま、もう1人だけブリーフィングルームに残っていたスメラギ・李・ノリエガの隣にそっと腰掛けた。

「ミス・スメラギ、いつもお疲れさん。あんたとヴェーダの作戦のおかげでガンダムマイスターズ全員、毎回無傷で帰還だ」

ロックオンは笑い、いつもの軽快な口調で話しかける。
モニターを眺めていたスメラギは何事か思案していた様だが、ちらりと彼を見て微笑んだ。

「今回は、ね。いつ何が起こるかは分からない。油断は禁物よ、ロックオン。…でも、ありがとう」

些かの緊張から解放され、二人ともリラックスした空気に身を任せていた。
ロックオンはスメラギの少し疲れた目元に気づく。

「なぁ、ミス・スメラギ。ちょっと息抜きしないか?俺、いい場所知ってるんだ」

そう言ったロックオンにスメラギは驚く。

「どうしたの?急に。珍しいわね」

目を丸くした彼女が可愛らしくて、ロックオンは微笑む。

「こっちだ」

ロックオンがスメラギを連れてきたのは、プトレマイオスの展望デッキ。
無数の星が輝く宇宙が、広く大きな窓越しに広がっていた。

「綺麗…」

小さく呟くスメラギに、ロックオンはそっと近づく。

「ミス・スメラギの作戦がいつも俺たちを守ってくれる。だからこうやって星が見られる。…感謝してるよ」

真剣な声で伝えられ、スメラギの頬がほんのり赤く染まる。

「…貴方たちを守る、それが私の仕事よ」

スメラギは照れたように笑って言い、流れた髪を耳にかける。
スメラギの仕草に目を奪われ、ロックオンは気付けば彼女の手を優しく握って居た。

「あんたの笑顔を見ていたい。ミス・スメラギ。いつも頑張ってるあんたを、俺が、守りたい」

スメラギは驚いてロックオンの真摯なグリーンの瞳を見つめた。
その瞳に吸い込まれそうになり、スメラギの心臓はドキリと高鳴る。

「ロックオン…あなたって人は…」

困った様な微笑みを浮かべ、息をつくと、スメラギは勇気を出してロックオンの肩に頭を預けた。

星に囲まれた空間。
ロックオンはスメラギの手を優しくぎゅっと握る。

「ミス・スメラギ?戦いが終わったらさ、地球で…星を見ないか?2人きりで」

星を眺める彼女の瞳を盗み見て、星より綺麗だな、とロックオンは考える。

「……ええ、いいわよ」

スメラギは優しく答えた。
2人きりの意味を、今はまだ深く考えてはいけない。気持ちに蓋をしなくては。
スメラギがそう考えて居た瞬間、ロックオンは彼女の顎を優しくクイと持ち上げ、星明かりに照らされたスメラギの瞳を見つめた。
目は口ほどに物を言う、とはこの事か、と今更ながら身をもって理解するスメラギ。
彼の綺麗な瞳をこんな至近距離で見つめた事など無かった。

「………いいか?」

息がかかる至近距離で吐息混じりに囁かれ、スメラギが小さく頷くと、ロックオンはゆっくりと唇を重ねた。
柔らかく温かいキス。
蓋をしようとした気持ちが溢れてくる。
心のどこかで求めていたそれは、とても甘美で、幸せな気持ちにしてくれた。
唇を離し、ロックオンは照れくさそうに笑う。

「俺の星」

再び二人の影は重なり、星々の光に包まれた。
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