ロクスメ
スメラギは、ユニオン領のとある街のカフェテリアで世界情勢のニュースを見ながら珍しく珈琲を口にしていた。
待ち人はいまだ来たらず。
軍人だから仕方ない。
盛大に溜め息を吐き出したスメラギは小さく苛ついていた。
と、言うのもプトレマイオスを出る時にロックオンと喧嘩をしてしまった。
ビリー・カタギリからの呼び出しに応じようとしたスメラギを、ロックオンが不用心過ぎると窘めたのが始まりだったか。
恋人であるから仕方がないと言えば仕方がないが、ロックオンの過剰な心配にスメラギが一瞬辟易してしまい、言い合いになってしまった。
ビリーの肩を持つスメラギにロックオンが切れ、ロックオンが何故そんなにビリーを目の敵にするのか分からないと、スメラギも切れた。
スメラギは珈琲を啜ると、溜め息を洩らした。
まるで子供ではないか。
帰艦したらすぐに大人気なかったと謝ろう。
ビリーと別れた後にお土産でも探そうか…と考えて居た。
と、辺りが突然静まり返った。
スメラギが不意に顔をあげ、違和感を感じた瞬間、近くを通り過ぎたバスが爆発した。
続けざまに遠くで爆発音が響く。
唐突に辺りは悲鳴が飛び交う惨状になった。
無差別テロだ。
理解するよりもいち早くプトレマイオスへと暗号通信を飛ばす。
王留美へテロ組織の情報を探る事を伝える暗号通信も送信した。
スメラギはカフェテリアから早足で立ち去る。
バスの爆破音で耳が聞こえなくなった。
耳の奥で、余韻でキーンと言う音しか聞こえない。
それが返ってスメラギを冷静にさせた。
自分も巻き込まれる可能性がある。
巻き込まれ、自分が行動不能となった場合、これからのミッションプランはどうするか。
風に煽られて血と煙、瓦礫の粉塵の臭いがする。
熱風が頬に当たる。
またどこかで爆発が起こったみたいだ。
取り敢えず安全な場所へ非難しなければ。
と、小さな子供が泣いているのが目についた。
何を言っているのかは聞こえない。
だが、恐らく親とはぐれたか、親を失ったかだ。
スメラギは子供だけでも安全な場所へ、そう思い、その子供を抱き寄せた。
瞬間、大地が揺れた。
恐らくまた爆発が起きたのだ。
子供を抱き上げ、安全な場所を探す。
突風が吹き付ける中、駆け出した瞬間、スメラギはある感覚に襲われ立ち止まった。
歯を食いしばり、子供を地に降ろす。
泣きじゃくる子供の頬を手のひらで拭えば、泣き止んで怯えた目で不思議そうに此方を見てきた。
その子供の瞳にスメラギは愛する人と同じ色を見つけ、泣きそうに微笑んだ。
「男の子でしょう?泣いちゃダメ…。さ…行きなさい」
強く子供の背中を押し出せば、子供は駆け出した。
子供は一旦立ち止まり、振り返ったが、スメラギは頷いて、先へ行くことを促した。
子供は泣きそうな顔で、今度こそ振り返る事無く走り去った。
スメラギはその場へ膝をついた。
背中が、痛い。
突風に煽られて飛んで来た、背中の肉にめり込むように突き刺さった何かの破片。
内臓のどこまで刺さっただろうか。
痛みに涙が浮かんでくる。
新しいジャケットだったのにな…なんて、自嘲気味に笑った。
喉元を熱い塊がせり上がって来て、口元を抑えたが、堪えきれず吐き出す。
鼻の奥が鉄錆臭い。
白い手のひらに鮮明な赤。
スメラギはそのまま通信端末に手を伸ばした。
プトレマイオスに、これからのミッションには役に立たないかもしれないが、自分の立てた作戦予報の情報が詰まったデータを送信する。
震える指で、ロックオン個人への通信を迷う。
最期かもしれないのに何を迷うのか、スメラギはそう思って笑い、メッセージを送信した。
ユニオン軍がもうすぐ来る筈だ。
ビリーは自分の遺体を見つけてくれるだろうか。
ユニオン軍…と、考えてスメラギは端末にロックをかける。
無理にロックを解除しようとすればデータをオールクリアーされる様に設定をして。
もしも情報が漏洩したらソレスタルビーイングに多大な迷惑をかける。
スメラギは最後のキーを素早く打ち込んだ。
承認され、ウインドウが閉じられた端末をポケットへしまい、スメラギは辺りを見渡した。
血の気を失った身体がぐらりと傾いで、それに逆らえず、スメラギは地面に倒れ込んだ。
辺りは煙や粉塵が舞っていてよく見えないのに、見上げた空は嫌なくらい晴れていた。
子供の瞳を思い出し、同じ色を持ったロックオンを思った。
最後に、逢いたかったな…。
それも叶いそうにない。
スメラギはこんな時にいやに冷静な自分に少し笑えてしまった。
この空をロックオンは宇宙から見て居るだろうか。
荒い自分の呼吸音が耳障りだな、なんて思いながら、スメラギは瞳を閉じた。
ロックオンは、プトレマイオス内の自室にあるベッドに座り込んで居た。
今朝、プトレマイオスを出て外出するスメラギと些細な事で喧嘩をしてしまった。
心配だから着いて行こうとしていた目論見は喧嘩の所為であっさり破れ、スメラギはひとりで行ってしまった。
「…黙って男の所に行かせられるかよ…」
スメラギは自分の恋人なのだ。
ロックオンは胸の奥でくすぶる嫉妬に小さく苛ついた。
それにしても、大人気なかった気がする。
子供みたいに喚き散らしてしまった。
スメラギが辟易したのも分かる気がする。
ロックオンはぐしゃりと頭を抱え、自らの頬を叩いた。
謝らなければ。
そう考えれば、スメラギの帰艦が待ち遠しい。
今からデュナメスで追いかけようか…。
しかしすれ違うのも面倒だ。
どうしたものかと、ロックオンが宙を眺めた時だった。
至急ブリッジへ集まるようにと、艦内放送が入った。
ロックオンは何事かと思い、すぐに部屋を飛び出す。
スメラギの居ないこの艦で、戦闘でも起こるのだろうか。
途中でアレルヤに遭遇し、お互い首を傾げたが、状況がわからないなりに表情を引き締め、ブリッジへと入る。
既に全員が揃って居るブリッジで、クリスティナは全員を見渡す。
「皆揃ったわね?…今、スメラギさんの居る場所でテロが発生したみたいなの」
「なんだって!?」
真剣に告げて来たクリスティナに、アレルヤが慌てて応えた。
「スメラギさんから緊急暗号通信が来て…テロ組織の情報を今エージェントに探ってもらって居るから、王留美からの情報が入り次第介入行動に移って、って」
「テロの情報が入りました。映像、出します」
フェルトの台詞に、全員が足元のスクリーンを眺めた。
ユニオン領にある街。
爆発は凄まじい様子で、画面に映された辺りのほとんどは焦土と化して見えた。
あまりの惨状に、全員が息を飲み、ロックオンは許せないテロ行為に歯を食いしばる。
リアルタイムで流されて居る映像に、クリスティナは口元を覆い、「スメラギさん…」と小さく呟いた。
そうだ、そこにはスメラギが居る。
ロックオンは今すぐ飛び出したい思いに駆られた。
と、再び緊急暗号通信が受信された。
クリスティナが安堵の息を洩らしながら「スメラギさんから!」と告げれば、全員が安堵の息を洩らした。
だがそれは、再び発したクリスティナの呟きによってかき消された。
「何…これ…」
愕然と呟かれたクリスティナの手元を覗き込めば、そこには見慣れない文字の羅列が浮かんでいた。
それは、誰もが一度は目にしたものと似た、幾つかの緻密なミッションプランのパターンたち。
スメラギはどうしてこれを送信して来たのか。
考えたくない予想を、全員が頭の片隅に抱く。
追い討ちをかけるように、ロックオンの端末がメッセージの着信を告げた。
ロックオンは端末を取り出し、画面を開く。
メッセージの差出人は、スメラギ。
ロックオンは文面を読み、息を飲んだ。
メッセージには『ロックオン、ごめんね』の、一行だけ。
「っ畜生…!!」
ブリッジの壁を強く殴りつけ、叫んだロックオンに、全員の視線が向けられた。
ロックオンはその視線を背中に受け、唇を噛んだ。
彼女が世界から居なくなったなんて、信じられない。
信じたくない。
信じない。
昨晩まで、この胸に抱いていたのだ。
信じられる筈がなかった。
駆け出しだロックオンの肩を、刹那が掴んだ。
「落ち着け、冷静になれロックオン」
「っ…ミス・スメラギが死んだかもしれないってのに冷静でなんか居られるかよ!!!!」
怒りを露わにしてロックオンは刹那の手を思い切り振り払った。
そんなロックオンの前にティエリアが立ちふさがる。
「冷静で居られないのは貴方だけじゃない」
ティエリアの目には明らかな怒りが浮かんでいる。
刹那が掴んだ肩とは反対側の肩に、アレルヤの手が乗せられる。
「だからこそ、団結しなきゃいけないって、スメラギさんなら言う筈だよ」
苛立ちは募るばかりだが、一人で突っ走っても何も出来ないのだ。
ロックオンはそれが悔しくて奥歯を噛み締めた。
近くで守る事さえ出来なかった。
ガンダムマイスターになったのに、何も出来ないのか。
「……悪かった」
「気持ちは皆一緒だ……信じよう。スメラギ・李・ノリエガが生きている事を」
ロックオンはきつく拳を握りしめ、目を瞑り、深呼吸をする。
瞼の裏に浮かぶのはスメラギの姿ばかりで…。
「あぁ…」
どうか、生きていて。
ロックオンは泣きそうに顔を歪ませてそう答えるのが精一杯だった。
待ち人はいまだ来たらず。
軍人だから仕方ない。
盛大に溜め息を吐き出したスメラギは小さく苛ついていた。
と、言うのもプトレマイオスを出る時にロックオンと喧嘩をしてしまった。
ビリー・カタギリからの呼び出しに応じようとしたスメラギを、ロックオンが不用心過ぎると窘めたのが始まりだったか。
恋人であるから仕方がないと言えば仕方がないが、ロックオンの過剰な心配にスメラギが一瞬辟易してしまい、言い合いになってしまった。
ビリーの肩を持つスメラギにロックオンが切れ、ロックオンが何故そんなにビリーを目の敵にするのか分からないと、スメラギも切れた。
スメラギは珈琲を啜ると、溜め息を洩らした。
まるで子供ではないか。
帰艦したらすぐに大人気なかったと謝ろう。
ビリーと別れた後にお土産でも探そうか…と考えて居た。
と、辺りが突然静まり返った。
スメラギが不意に顔をあげ、違和感を感じた瞬間、近くを通り過ぎたバスが爆発した。
続けざまに遠くで爆発音が響く。
唐突に辺りは悲鳴が飛び交う惨状になった。
無差別テロだ。
理解するよりもいち早くプトレマイオスへと暗号通信を飛ばす。
王留美へテロ組織の情報を探る事を伝える暗号通信も送信した。
スメラギはカフェテリアから早足で立ち去る。
バスの爆破音で耳が聞こえなくなった。
耳の奥で、余韻でキーンと言う音しか聞こえない。
それが返ってスメラギを冷静にさせた。
自分も巻き込まれる可能性がある。
巻き込まれ、自分が行動不能となった場合、これからのミッションプランはどうするか。
風に煽られて血と煙、瓦礫の粉塵の臭いがする。
熱風が頬に当たる。
またどこかで爆発が起こったみたいだ。
取り敢えず安全な場所へ非難しなければ。
と、小さな子供が泣いているのが目についた。
何を言っているのかは聞こえない。
だが、恐らく親とはぐれたか、親を失ったかだ。
スメラギは子供だけでも安全な場所へ、そう思い、その子供を抱き寄せた。
瞬間、大地が揺れた。
恐らくまた爆発が起きたのだ。
子供を抱き上げ、安全な場所を探す。
突風が吹き付ける中、駆け出した瞬間、スメラギはある感覚に襲われ立ち止まった。
歯を食いしばり、子供を地に降ろす。
泣きじゃくる子供の頬を手のひらで拭えば、泣き止んで怯えた目で不思議そうに此方を見てきた。
その子供の瞳にスメラギは愛する人と同じ色を見つけ、泣きそうに微笑んだ。
「男の子でしょう?泣いちゃダメ…。さ…行きなさい」
強く子供の背中を押し出せば、子供は駆け出した。
子供は一旦立ち止まり、振り返ったが、スメラギは頷いて、先へ行くことを促した。
子供は泣きそうな顔で、今度こそ振り返る事無く走り去った。
スメラギはその場へ膝をついた。
背中が、痛い。
突風に煽られて飛んで来た、背中の肉にめり込むように突き刺さった何かの破片。
内臓のどこまで刺さっただろうか。
痛みに涙が浮かんでくる。
新しいジャケットだったのにな…なんて、自嘲気味に笑った。
喉元を熱い塊がせり上がって来て、口元を抑えたが、堪えきれず吐き出す。
鼻の奥が鉄錆臭い。
白い手のひらに鮮明な赤。
スメラギはそのまま通信端末に手を伸ばした。
プトレマイオスに、これからのミッションには役に立たないかもしれないが、自分の立てた作戦予報の情報が詰まったデータを送信する。
震える指で、ロックオン個人への通信を迷う。
最期かもしれないのに何を迷うのか、スメラギはそう思って笑い、メッセージを送信した。
ユニオン軍がもうすぐ来る筈だ。
ビリーは自分の遺体を見つけてくれるだろうか。
ユニオン軍…と、考えてスメラギは端末にロックをかける。
無理にロックを解除しようとすればデータをオールクリアーされる様に設定をして。
もしも情報が漏洩したらソレスタルビーイングに多大な迷惑をかける。
スメラギは最後のキーを素早く打ち込んだ。
承認され、ウインドウが閉じられた端末をポケットへしまい、スメラギは辺りを見渡した。
血の気を失った身体がぐらりと傾いで、それに逆らえず、スメラギは地面に倒れ込んだ。
辺りは煙や粉塵が舞っていてよく見えないのに、見上げた空は嫌なくらい晴れていた。
子供の瞳を思い出し、同じ色を持ったロックオンを思った。
最後に、逢いたかったな…。
それも叶いそうにない。
スメラギはこんな時にいやに冷静な自分に少し笑えてしまった。
この空をロックオンは宇宙から見て居るだろうか。
荒い自分の呼吸音が耳障りだな、なんて思いながら、スメラギは瞳を閉じた。
ロックオンは、プトレマイオス内の自室にあるベッドに座り込んで居た。
今朝、プトレマイオスを出て外出するスメラギと些細な事で喧嘩をしてしまった。
心配だから着いて行こうとしていた目論見は喧嘩の所為であっさり破れ、スメラギはひとりで行ってしまった。
「…黙って男の所に行かせられるかよ…」
スメラギは自分の恋人なのだ。
ロックオンは胸の奥でくすぶる嫉妬に小さく苛ついた。
それにしても、大人気なかった気がする。
子供みたいに喚き散らしてしまった。
スメラギが辟易したのも分かる気がする。
ロックオンはぐしゃりと頭を抱え、自らの頬を叩いた。
謝らなければ。
そう考えれば、スメラギの帰艦が待ち遠しい。
今からデュナメスで追いかけようか…。
しかしすれ違うのも面倒だ。
どうしたものかと、ロックオンが宙を眺めた時だった。
至急ブリッジへ集まるようにと、艦内放送が入った。
ロックオンは何事かと思い、すぐに部屋を飛び出す。
スメラギの居ないこの艦で、戦闘でも起こるのだろうか。
途中でアレルヤに遭遇し、お互い首を傾げたが、状況がわからないなりに表情を引き締め、ブリッジへと入る。
既に全員が揃って居るブリッジで、クリスティナは全員を見渡す。
「皆揃ったわね?…今、スメラギさんの居る場所でテロが発生したみたいなの」
「なんだって!?」
真剣に告げて来たクリスティナに、アレルヤが慌てて応えた。
「スメラギさんから緊急暗号通信が来て…テロ組織の情報を今エージェントに探ってもらって居るから、王留美からの情報が入り次第介入行動に移って、って」
「テロの情報が入りました。映像、出します」
フェルトの台詞に、全員が足元のスクリーンを眺めた。
ユニオン領にある街。
爆発は凄まじい様子で、画面に映された辺りのほとんどは焦土と化して見えた。
あまりの惨状に、全員が息を飲み、ロックオンは許せないテロ行為に歯を食いしばる。
リアルタイムで流されて居る映像に、クリスティナは口元を覆い、「スメラギさん…」と小さく呟いた。
そうだ、そこにはスメラギが居る。
ロックオンは今すぐ飛び出したい思いに駆られた。
と、再び緊急暗号通信が受信された。
クリスティナが安堵の息を洩らしながら「スメラギさんから!」と告げれば、全員が安堵の息を洩らした。
だがそれは、再び発したクリスティナの呟きによってかき消された。
「何…これ…」
愕然と呟かれたクリスティナの手元を覗き込めば、そこには見慣れない文字の羅列が浮かんでいた。
それは、誰もが一度は目にしたものと似た、幾つかの緻密なミッションプランのパターンたち。
スメラギはどうしてこれを送信して来たのか。
考えたくない予想を、全員が頭の片隅に抱く。
追い討ちをかけるように、ロックオンの端末がメッセージの着信を告げた。
ロックオンは端末を取り出し、画面を開く。
メッセージの差出人は、スメラギ。
ロックオンは文面を読み、息を飲んだ。
メッセージには『ロックオン、ごめんね』の、一行だけ。
「っ畜生…!!」
ブリッジの壁を強く殴りつけ、叫んだロックオンに、全員の視線が向けられた。
ロックオンはその視線を背中に受け、唇を噛んだ。
彼女が世界から居なくなったなんて、信じられない。
信じたくない。
信じない。
昨晩まで、この胸に抱いていたのだ。
信じられる筈がなかった。
駆け出しだロックオンの肩を、刹那が掴んだ。
「落ち着け、冷静になれロックオン」
「っ…ミス・スメラギが死んだかもしれないってのに冷静でなんか居られるかよ!!!!」
怒りを露わにしてロックオンは刹那の手を思い切り振り払った。
そんなロックオンの前にティエリアが立ちふさがる。
「冷静で居られないのは貴方だけじゃない」
ティエリアの目には明らかな怒りが浮かんでいる。
刹那が掴んだ肩とは反対側の肩に、アレルヤの手が乗せられる。
「だからこそ、団結しなきゃいけないって、スメラギさんなら言う筈だよ」
苛立ちは募るばかりだが、一人で突っ走っても何も出来ないのだ。
ロックオンはそれが悔しくて奥歯を噛み締めた。
近くで守る事さえ出来なかった。
ガンダムマイスターになったのに、何も出来ないのか。
「……悪かった」
「気持ちは皆一緒だ……信じよう。スメラギ・李・ノリエガが生きている事を」
ロックオンはきつく拳を握りしめ、目を瞑り、深呼吸をする。
瞼の裏に浮かぶのはスメラギの姿ばかりで…。
「あぁ…」
どうか、生きていて。
ロックオンは泣きそうに顔を歪ませてそう答えるのが精一杯だった。
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