ロクスメ
point of no return
ロックオン・ストラトスは実戦シミュレーションから帰投した際に、珍しいものを見かけた。
デュナメスのコンテナで赤色のハロを抱いた戦術予報士、スメラギ・李・ノリエガの姿だった。
ロックオンが抱える橙色のハロはロックオンの手により、他のハロたちの元へ。
ハロたちの「オニイサマ!オニイサマ!」という音声を耳にしながら、ロックオンはふわりとスメラギの隣に降り立った。
「ロックオン。お疲れ様」
「あぁ。珍しいな、アンタがデュナメスのコンテナに居るとは」
「実戦シミュレーションのデータを赤ハロに見せて貰っていたの」
スメラギは軽く微笑みながら、赤ハロを撫でていた。
「問題は特になかったぜ?」
ロックオンが報告すると、赤ハロの目が光り、耳のようなパーツがパタパタと開閉する。
「モンダイナイ!モンダイナイ!」
赤ハロの声音に、スメラギは目を丸くする。
「この子……」
「どうした?」
「あ、いいえ、何でも無いわ」
赤ハロに愛おしそうに微笑んだかと思えば、切なそうな表情に変わったスメラギ。
困ったように笑い、スメラギは首を横に振った。
気になるが、深入りは出来ない。
ロックオンは咳払いして、実戦シミュレーションの報告をはじめた。
それから数日後、赤ハロを見つけ、簡単なコミュニケーションを計ってみるが、別段変わった様は見受けられない。
幼い子どものような音声で喋る赤ハロ。
と、ピコンと耳の様なパーツが動き、ロックオンの腕から飛び出した赤ハロ。
「チョウシハドウ?チョウシハドウ?」
通りがかったスメラギに跳ねて近付く赤ハロ。
スメラギは赤ハロをキャッチして泣きそうな顔で「大丈夫よ」と応える。
赤ハロを撫でて再びふわりと地を蹴るスメラギ。
しかし、スメラギは動けなかった。
振り返るスメラギの右腕をロックオンは掴んでいた。
「あ、えーっと……悪い、気になっちまって…ほら、赤ハロ」
一瞬視線を泳がせたスメラギは、着いて来い、とロックオンに目線を送った。
ロックオンはスメラギの部屋に居た。
珈琲を手渡され、ロックオンは備え付けの簡易ソファに座る。
いつの間にかついてきていた赤ハロは椅子に座ったスメラギの膝に飛び乗っていた。
「大した事じゃないの。赤ハロの声が、その、似てて……」
言いにくそうに口を開いたスメラギ。
赤ハロはどちらかというと、幼児のような声音だ。
小さな、子ども。
ロックオンはもやもやと、よく分からない感情に苛まれる。
「……子ども…?」
彼女の過去に触れようとしている。
それは、許される事だろうか。
スメラギは目を瞬かせて、ロックオンの目を見つめた。
そして、意を汲み取ったかのように首を振る。
「違うの、えっと…。その、女性なんだけど…」
まどろっこしい自分の説明に、スメラギはため息を吐いて首を振った。
「赤ハロの声がね、学生時代に憧れていた女性の声に似ていて、ちょっと、懐かしくなっただけなのよ。それだけの事」
「へぇ…?子どもが、居るのかと思った」
「えっ?そうなの?」
ないない、と手を振る仕草をして、スメラギは赤ハロに視線を戻した。
「リーサ!リーサ!」
赤ハロが突然沈黙を破った。
スメラギは咄嗟に赤ハロを取り押さえる。
「ハロ!もぅ、私と居る時だけね、って言ったのに」
真っ赤になるスメラギに、ロックオンはスメラギが赤ハロに名前を呼ばせて居たのだと察する。
思いもよらないところでスメラギの本名を知ってしまい、ロックオンは苦笑する。
「ニールだ」
「…え?」
「俺の本名」
一方的に知ってちゃ不公平だろ?と笑うロックオンに、一方的にハロが言っちゃっただけじゃない、と苦笑するスメラギ。
赤ハロの目が光る。
ロックオンは慌てて赤ハロを取り押さえると、内緒だぞ、とばかりに唇に人差し指を当てる。
「リョーカイ!リョーカイ」
赤ハロはスメラギの膝上でご機嫌そうだ。
ロックオンは自分の唇に人差し指をあてたまま、スメラギを見つめた。
「内緒な?」
小首を傾げる彼女に、ロックオンはニヤリと笑った。
その緑の眼差しに、スメラギの胸が高鳴る。
「な、なぁに?…急に」
「いや、何でも?」
もやもやしていた気分は秘密の共有で浮き足立ってしまった。
「さてと、じゃあ謎も解けた事だし、デュナメスの整備に戻るよ」
「えぇ、部屋に呼んじゃってごめんなさい」
「いや、気になったのはこっちだ。悪かった」
軽口を叩くロックオンが部屋を出ていく。
ロックオンの背中を見送り、スメラギは膝上の赤ハロに視線を戻す。
「………カティ」
赤ハロも拾いきれない小さな声でスメラギは呟いた。
ロックオン・ストラトスは実戦シミュレーションから帰投した際に、珍しいものを見かけた。
デュナメスのコンテナで赤色のハロを抱いた戦術予報士、スメラギ・李・ノリエガの姿だった。
ロックオンが抱える橙色のハロはロックオンの手により、他のハロたちの元へ。
ハロたちの「オニイサマ!オニイサマ!」という音声を耳にしながら、ロックオンはふわりとスメラギの隣に降り立った。
「ロックオン。お疲れ様」
「あぁ。珍しいな、アンタがデュナメスのコンテナに居るとは」
「実戦シミュレーションのデータを赤ハロに見せて貰っていたの」
スメラギは軽く微笑みながら、赤ハロを撫でていた。
「問題は特になかったぜ?」
ロックオンが報告すると、赤ハロの目が光り、耳のようなパーツがパタパタと開閉する。
「モンダイナイ!モンダイナイ!」
赤ハロの声音に、スメラギは目を丸くする。
「この子……」
「どうした?」
「あ、いいえ、何でも無いわ」
赤ハロに愛おしそうに微笑んだかと思えば、切なそうな表情に変わったスメラギ。
困ったように笑い、スメラギは首を横に振った。
気になるが、深入りは出来ない。
ロックオンは咳払いして、実戦シミュレーションの報告をはじめた。
それから数日後、赤ハロを見つけ、簡単なコミュニケーションを計ってみるが、別段変わった様は見受けられない。
幼い子どものような音声で喋る赤ハロ。
と、ピコンと耳の様なパーツが動き、ロックオンの腕から飛び出した赤ハロ。
「チョウシハドウ?チョウシハドウ?」
通りがかったスメラギに跳ねて近付く赤ハロ。
スメラギは赤ハロをキャッチして泣きそうな顔で「大丈夫よ」と応える。
赤ハロを撫でて再びふわりと地を蹴るスメラギ。
しかし、スメラギは動けなかった。
振り返るスメラギの右腕をロックオンは掴んでいた。
「あ、えーっと……悪い、気になっちまって…ほら、赤ハロ」
一瞬視線を泳がせたスメラギは、着いて来い、とロックオンに目線を送った。
ロックオンはスメラギの部屋に居た。
珈琲を手渡され、ロックオンは備え付けの簡易ソファに座る。
いつの間にかついてきていた赤ハロは椅子に座ったスメラギの膝に飛び乗っていた。
「大した事じゃないの。赤ハロの声が、その、似てて……」
言いにくそうに口を開いたスメラギ。
赤ハロはどちらかというと、幼児のような声音だ。
小さな、子ども。
ロックオンはもやもやと、よく分からない感情に苛まれる。
「……子ども…?」
彼女の過去に触れようとしている。
それは、許される事だろうか。
スメラギは目を瞬かせて、ロックオンの目を見つめた。
そして、意を汲み取ったかのように首を振る。
「違うの、えっと…。その、女性なんだけど…」
まどろっこしい自分の説明に、スメラギはため息を吐いて首を振った。
「赤ハロの声がね、学生時代に憧れていた女性の声に似ていて、ちょっと、懐かしくなっただけなのよ。それだけの事」
「へぇ…?子どもが、居るのかと思った」
「えっ?そうなの?」
ないない、と手を振る仕草をして、スメラギは赤ハロに視線を戻した。
「リーサ!リーサ!」
赤ハロが突然沈黙を破った。
スメラギは咄嗟に赤ハロを取り押さえる。
「ハロ!もぅ、私と居る時だけね、って言ったのに」
真っ赤になるスメラギに、ロックオンはスメラギが赤ハロに名前を呼ばせて居たのだと察する。
思いもよらないところでスメラギの本名を知ってしまい、ロックオンは苦笑する。
「ニールだ」
「…え?」
「俺の本名」
一方的に知ってちゃ不公平だろ?と笑うロックオンに、一方的にハロが言っちゃっただけじゃない、と苦笑するスメラギ。
赤ハロの目が光る。
ロックオンは慌てて赤ハロを取り押さえると、内緒だぞ、とばかりに唇に人差し指を当てる。
「リョーカイ!リョーカイ」
赤ハロはスメラギの膝上でご機嫌そうだ。
ロックオンは自分の唇に人差し指をあてたまま、スメラギを見つめた。
「内緒な?」
小首を傾げる彼女に、ロックオンはニヤリと笑った。
その緑の眼差しに、スメラギの胸が高鳴る。
「な、なぁに?…急に」
「いや、何でも?」
もやもやしていた気分は秘密の共有で浮き足立ってしまった。
「さてと、じゃあ謎も解けた事だし、デュナメスの整備に戻るよ」
「えぇ、部屋に呼んじゃってごめんなさい」
「いや、気になったのはこっちだ。悪かった」
軽口を叩くロックオンが部屋を出ていく。
ロックオンの背中を見送り、スメラギは膝上の赤ハロに視線を戻す。
「………カティ」
赤ハロも拾いきれない小さな声でスメラギは呟いた。