ロクスメ
cathaoir
涙が、止まらない。
酒をやめてみたら、見事にこうなってしまった。
誰かに慰めて貰いたい。
こんな姿を誰にも見せたくない。
相反する気持ちを持て余しながら、涙を流していた。
先日、賭けで勝った際に、ロックオン・ストラトスに言われた言葉をふと、思い出す。
「アンタの勝ちだ。なんでも言う事聞くぜ?」
彼は言った。なんでも、と。
スメラギ・李・ノリエガはロックオンを自室に呼びつけた。
「よう。どした?」
「このあいだの賭けの件、まだ有効?」
「賭け?あぁ!あれね。いいぜ?何がお望みだ?」
微笑むエメラルドの瞳に、スメラギは口を開いた。
「椅子になって」
「………………は?」
++++++++
ロックオン・ストラトスは硬直していた。
確かに、なんでも言う事を聞くとは言った。
まさか、椅子になれと言われる日が来るとは、思ってもみなかった。
椅子とは言え、ベッドに腰掛けているだけなのだが。
腰掛けたロックオンの膝に座るスメラギ。
はらはらと涙が溢れる彼女の横顔に魅入りかけて、内心で首を振る。
「ちょっと、辛い事があっただけなの」
珍しく、酒臭くない。
人肌が恋しかっただけだ、気にするなと言い、涙声の彼女に、モヤモヤとした気持ちが溢れる。
彼女の腰を支えようと腕を伸ばせば、叩かれる。
「椅子は勝手に動かないで」
「…Yes,ma’am」
酷ではないか?血気盛んな20代前半の男の膝に座り何もするな、だなんて。
椅子だから仕方ないのか。
椅子だから。
何故椅子なのだ。
「だから、何も見なかった、聞こえなかったふりをして欲しいの」
何がちょっと、だ。
物凄く辛い癖に。
傷付いた剥き出しの心で、人肌を求めて誰かに縋りたい癖に縋れない。
ただ、温もりに触れたいだけで、見て見ぬふりをしろと。
なんでも言うことを聞くと言ったのだから、抱きしめろだとか、恋人の様に振る舞え、だとか幾らでも要望を言えば良いのに。
利用すればいいのに。
大胆なんだか、臆病なんだか。
声を押し殺して震える彼女の肩に、ロックオンはため息を吐いた。
やめだやめだ。
ロックオンはそのままスメラギの身体を乱暴に抱き寄せた。
抵抗しようとしたスメラギの顔を胸に押し付け、その顔は見ない様にする。
優しく彼女の背に手を充てると、ようやく、決壊するかのように嗚咽が聞こえはじめる。
泣き腫らした目で見上げられたのは、それから暫くしてからだった。
「椅子の癖に…」
「ただの椅子なんでな、何も見てないし聞いてないぜ」
だから、あんたもただの椅子の背もたれに涙が吸い込まれたと思えばいい、とロックオンはスメラギのこめかみに唇を寄せた。
それでも頬を伝う涙を止めたくて、ロックオンはそっと、スメラギの顎を持ち上げて、唇に自分の唇を重ねた。
「ロッ…」
「ただの、椅子だ。アンタの椅子」
やれやれ、とんだ女を好きになってしまったみたいだ。
そんな自分に苦笑しながら、ロックオンは再びスメラギの唇を奪った。
「椅子はこんな事しないわよ」
唇が離れた後に、頬を染めた彼女が小さく唇を尖らせたのに、吹き出す。
「そりゃあ俺を椅子に選んだアンタの運命だ」
さぁて、どうしてくれようか?
スメラギの椅子は悪戯っぽく目を細めた。
涙が、止まらない。
酒をやめてみたら、見事にこうなってしまった。
誰かに慰めて貰いたい。
こんな姿を誰にも見せたくない。
相反する気持ちを持て余しながら、涙を流していた。
先日、賭けで勝った際に、ロックオン・ストラトスに言われた言葉をふと、思い出す。
「アンタの勝ちだ。なんでも言う事聞くぜ?」
彼は言った。なんでも、と。
スメラギ・李・ノリエガはロックオンを自室に呼びつけた。
「よう。どした?」
「このあいだの賭けの件、まだ有効?」
「賭け?あぁ!あれね。いいぜ?何がお望みだ?」
微笑むエメラルドの瞳に、スメラギは口を開いた。
「椅子になって」
「………………は?」
++++++++
ロックオン・ストラトスは硬直していた。
確かに、なんでも言う事を聞くとは言った。
まさか、椅子になれと言われる日が来るとは、思ってもみなかった。
椅子とは言え、ベッドに腰掛けているだけなのだが。
腰掛けたロックオンの膝に座るスメラギ。
はらはらと涙が溢れる彼女の横顔に魅入りかけて、内心で首を振る。
「ちょっと、辛い事があっただけなの」
珍しく、酒臭くない。
人肌が恋しかっただけだ、気にするなと言い、涙声の彼女に、モヤモヤとした気持ちが溢れる。
彼女の腰を支えようと腕を伸ばせば、叩かれる。
「椅子は勝手に動かないで」
「…Yes,ma’am」
酷ではないか?血気盛んな20代前半の男の膝に座り何もするな、だなんて。
椅子だから仕方ないのか。
椅子だから。
何故椅子なのだ。
「だから、何も見なかった、聞こえなかったふりをして欲しいの」
何がちょっと、だ。
物凄く辛い癖に。
傷付いた剥き出しの心で、人肌を求めて誰かに縋りたい癖に縋れない。
ただ、温もりに触れたいだけで、見て見ぬふりをしろと。
なんでも言うことを聞くと言ったのだから、抱きしめろだとか、恋人の様に振る舞え、だとか幾らでも要望を言えば良いのに。
利用すればいいのに。
大胆なんだか、臆病なんだか。
声を押し殺して震える彼女の肩に、ロックオンはため息を吐いた。
やめだやめだ。
ロックオンはそのままスメラギの身体を乱暴に抱き寄せた。
抵抗しようとしたスメラギの顔を胸に押し付け、その顔は見ない様にする。
優しく彼女の背に手を充てると、ようやく、決壊するかのように嗚咽が聞こえはじめる。
泣き腫らした目で見上げられたのは、それから暫くしてからだった。
「椅子の癖に…」
「ただの椅子なんでな、何も見てないし聞いてないぜ」
だから、あんたもただの椅子の背もたれに涙が吸い込まれたと思えばいい、とロックオンはスメラギのこめかみに唇を寄せた。
それでも頬を伝う涙を止めたくて、ロックオンはそっと、スメラギの顎を持ち上げて、唇に自分の唇を重ねた。
「ロッ…」
「ただの、椅子だ。アンタの椅子」
やれやれ、とんだ女を好きになってしまったみたいだ。
そんな自分に苦笑しながら、ロックオンは再びスメラギの唇を奪った。
「椅子はこんな事しないわよ」
唇が離れた後に、頬を染めた彼女が小さく唇を尖らせたのに、吹き出す。
「そりゃあ俺を椅子に選んだアンタの運命だ」
さぁて、どうしてくれようか?
スメラギの椅子は悪戯っぽく目を細めた。