隻翼の天使、迷宮に挑む。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
閑散とした港の片隅に軒を構える、小さな果物屋。
そこが あたしの今日の標的 だ。
屋根から屋根へと飛び移り、するりと屋台に忍び寄る。
そして、積まれていた林檎の木箱を、これでもか と言わんばかりに蹴倒した。
ガシャーンッ!と木箱が軋み、陽に焼けた石畳の上に、林檎が ぶちまけられる。
これには、あたしが近付いていたこと なんて気付く気配もなかった店主も驚いて顔を上げた。
抵抗させる気は微塵もない から、すかさず その首に回し蹴りを叩き込む。
地面に転がる林檎を素早く かき集めたら、白杏子 、ハミウリ、馬椰子 と次々に樽や木箱を倒しては、麻袋に放り込んでいく。
麻袋がパンパンになったのを確認したら、すぐに引き上げだ。
長居したって いいことは ない。
「ぞ、賊だー! 誰か刑吏を呼んでくれー!!」
首の痛みに呻いていた店主が、そう声を上げる。
数人の兵士が あたしを捕縛しに かかるが、ここで捕まる あたしじゃない。
ダッと駆け出せば、あっという間に兵士たちとの間に距離が でき、誰も追ってこなくなる。
腑抜けた町刑吏なんかに、あたしが捕まるかってんだ。
...ところが、
「待て!」
背後から声が響く。まだ誰か追ってきてる。
へぇ、ここまで引き離しても音を上げないなんて、なかなか骨のある野郎だ。
「止まれ 果物泥棒!」
『へっ、止まれって言われて大人しく止まる盗賊なんざ いねぇよ!』
そう後ろに言葉を吐いた。だが、何か おかしい。
どうしてコイツは諦めない?いつまで追ってくるんだ?
...まさか、本気で あたしを刑吏に つき出そうってのか?
ぞわりと肌が粟立ち、口の中が乾いた。
あたしは ここで捕まるワケにはいかない。まだ捕まっちゃいられない。
でも、アイツは未だ諦めずに追ってくる。
嫌だ。捕まりたくない。
こんな距離を走ったのは初めてで、冷や汗が噴き出して喘鳴が響いた。
前方に霞んでいた貧民街が、はっきり見えてきた。
あそこは あたしの庭みたいな もんだ。あそこに逃げて捕まったことなんてない。
しめた、と入り組んだ街の中に飛び込み、薄暗い路地を駆け抜ける。
...だが、まだアイツは諦めなかった。
『な、何なんだよ お前! いい加減にしろよ!』
走りながらナイフを抜き、樽を道の脇に括るロープを切った。
ゴロンゴロンと弾む樽が道に飛び出し、障害物となって追っ手を足止めする。
その隙に、あたしは貧民街の奥へ奥へと逃げ込んだ。
そこが あたしの今日の
屋根から屋根へと飛び移り、するりと屋台に忍び寄る。
そして、積まれていた林檎の木箱を、これでもか と言わんばかりに蹴倒した。
ガシャーンッ!と木箱が軋み、陽に焼けた石畳の上に、林檎が ぶちまけられる。
これには、あたしが近付いていたこと なんて気付く気配もなかった店主も驚いて顔を上げた。
抵抗させる気は微塵もない から、すかさず その首に回し蹴りを叩き込む。
地面に転がる林檎を素早く かき集めたら、
麻袋がパンパンになったのを確認したら、すぐに引き上げだ。
長居したって いいことは ない。
「ぞ、賊だー! 誰か刑吏を呼んでくれー!!」
首の痛みに呻いていた店主が、そう声を上げる。
数人の兵士が あたしを捕縛しに かかるが、ここで捕まる あたしじゃない。
ダッと駆け出せば、あっという間に兵士たちとの間に距離が でき、誰も追ってこなくなる。
腑抜けた町刑吏なんかに、あたしが捕まるかってんだ。
...ところが、
「待て!」
背後から声が響く。まだ誰か追ってきてる。
へぇ、ここまで引き離しても音を上げないなんて、なかなか骨のある野郎だ。
「止まれ 果物泥棒!」
『へっ、止まれって言われて大人しく止まる盗賊なんざ いねぇよ!』
そう後ろに言葉を吐いた。だが、何か おかしい。
どうしてコイツは諦めない?いつまで追ってくるんだ?
...まさか、本気で あたしを刑吏に つき出そうってのか?
ぞわりと肌が粟立ち、口の中が乾いた。
あたしは ここで捕まるワケにはいかない。まだ捕まっちゃいられない。
でも、アイツは未だ諦めずに追ってくる。
嫌だ。捕まりたくない。
こんな距離を走ったのは初めてで、冷や汗が噴き出して喘鳴が響いた。
前方に霞んでいた貧民街が、はっきり見えてきた。
あそこは あたしの庭みたいな もんだ。あそこに逃げて捕まったことなんてない。
しめた、と入り組んだ街の中に飛び込み、薄暗い路地を駆け抜ける。
...だが、まだアイツは諦めなかった。
『な、何なんだよ お前! いい加減にしろよ!』
走りながらナイフを抜き、樽を道の脇に括るロープを切った。
ゴロンゴロンと弾む樽が道に飛び出し、障害物となって追っ手を足止めする。
その隙に、あたしは貧民街の奥へ奥へと逃げ込んだ。