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第一章『馬一族』

『潼関の戦い(どうかんのたたかいは、記録では211年(建安16年)に馬超・韓遂ら関中軍閥の連合軍と曹操とが潼関周辺において行った戦いのことだ。
“于禁”はこの闘いに参加した記録がないが、『監査役』の使命を理解し、曹魏の参謀役兼『記録者』である賈詡の推測が気にかかっていた。

『涼州は今、政治的混乱と馬騰と韓遂の対立もあってかなりの疑心暗鬼に陥っている。コッチの漢中(張魯)攻めに乗っかって兵をあげてきたのも恐らくそれが原因だ。しかし“今回”の涼州、流れに添いながらもだいぶ薄暗いね。噂ではかの霊帝の死に暗殺疑惑をかけてる輩もいるらしい。』
「暗殺?霊帝は病没したのだろう?」
于禁がそう最もな意見を述べると、賈詡は『そこだ』と于禁の紋様に向かって指をさす。

「今や『この世界』では『疫鬼』の存在は“災厄”の備えとして“記録”や“討伐兵器”の完備をしている程度に脅威の対象だ。それは各地共通だが涼州では『今回も』“董卓の乱”があった。“お前さんの同業”の仕業かもしれねえとは視えないかい?」

成程。“于禁”は的を得た。
于禁の空席と于圭の肉体を借りた自身──『疫鬼』に宿った意思疎通のある精神体は、例え影響力や『役割』が違えども『疫鬼』には変わりない。それはこの今生も隠せぬ赤い苆のように拡がった紋様が、世間の恐怖とともに身をもって教えている。
その中にはかの『疫鬼レイコウの乱』の影響も微量ながら含まれているとすると多少心苦しいものがあるが、それが“今回の使命”というならば、例え“同族殺し”であり“レイコウ”のような“悲劇の連鎖”が待っていようとも、この闘いから『病原体』を探る必要があった。

「…分かった。殿に頼んで戦闘に参加させて貰おう。支度を急ぐ。」

于禁がそう言って席を立ったその時、──『世界』は、急転した。


「報告!入朝していた馬騰一族が、何者かにより暗殺されました!馬超らはこれを曹公の計略と判断。以降、復讐戦と称して士気をいっそう高めております!!」
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