開幕『前世の記録』
ー『開始地点』ー
世は、太平道の教祖・張角を指導者とする“黄巾の信者”が入り乱れた農民反乱が各地で続いている。
義兵を募っていた鮑信は、“于禁”を歓迎した。
「集まってくれて嬉しいぞ、同郷の友よ。」
それからは鮑信とともに行動し、群雄割拠の中で鮑信を亡くし、あくまで『監査役』であるがゆえに、“あの時”と違って大胆な行動に出ることもなく、『その時』まで、ただただ“于禁”の記録を辿った。
それは『疫鬼』にとって、“あの時”出逢えなかった彼らとの邂逅を意味するのだが、『前世』を隔てた今、そんなものは『名残』にすぎないと、自身のうちで割り切っていた。
ーー今は未だ、名も無き時代の将である自分を…ましてや『前世』に姿を消していた者の『記憶』を引き継いでいるものは、この世のどこにもいない。
それは、『于禁の代理』という自身の内情を隠すのにもたいへん都合のいい舞台だ。
しかし、彼はのちに知るのである。
…自身もまた、『前世』を知らなかったのだと。
世は、太平道の教祖・張角を指導者とする“黄巾の信者”が入り乱れた農民反乱が各地で続いている。
義兵を募っていた鮑信は、“于禁”を歓迎した。
「集まってくれて嬉しいぞ、同郷の友よ。」
それからは鮑信とともに行動し、群雄割拠の中で鮑信を亡くし、あくまで『監査役』であるがゆえに、“あの時”と違って大胆な行動に出ることもなく、『その時』まで、ただただ“于禁”の記録を辿った。
それは『疫鬼』にとって、“あの時”出逢えなかった彼らとの邂逅を意味するのだが、『前世』を隔てた今、そんなものは『名残』にすぎないと、自身のうちで割り切っていた。
ーー今は未だ、名も無き時代の将である自分を…ましてや『前世』に姿を消していた者の『記憶』を引き継いでいるものは、この世のどこにもいない。
それは、『于禁の代理』という自身の内情を隠すのにもたいへん都合のいい舞台だ。
しかし、彼はのちに知るのである。
…自身もまた、『前世』を知らなかったのだと。