ここではお好きな名前に変更出来ます。
第1夜
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
黒い車が高台に建てられた“黒主学園”に向けて町を走っていた。
後部座席ではミルクティー色の髪をした少女が横になっている。
どうやら眠っているようで、小さな寝息をたてていた。
その少女を振動で起こさぬよう、運転手は細心の注意を払う。
あと30分ほどで学園に着くというところだった。
「と…め、て」
寝ていると思った少女が運転手に声をかけたのは。
小さなその声を聞き漏らさなかった運転手はその言葉に従い車を止める。
「どうしました、玻璃様?」
「ゆ…き」
少女はその声に答えることなく車から降りてしまう。
「玻璃様!?」
慌てて運転手も車から降りたのだが、その時はすでに人混みに紛れて見えなくなっていた。
少女はフラフラした足取りで路地裏を歩いていた。
表通りとは違い薄暗いそこを、少女は奥へ奥へと進んでいく。
「ゆ…き、ちゃ……」
やがて少女の瞳には1人の男に襲われている黒髪の少女が映る。
少女は一瞬だけ嬉しそうに表情を緩めると、次の瞬間にはその表情を引き締める。
「ゆ…き、…ちゃ!」
「え?」
黒髪の少女は男を長い棒で牽制しつつ、自分の名を呼んだ人物を見て目を丸くした。
「玻璃ちゃん!?…なんでここに?」
それで気が削がれてしまったのだろう、力が弛み男の攻撃が腕を掠めてしまう。
途端、広がる…甘い血の匂い。
「ゆーき、ちゃ!」
「来ちゃダメ!逃げて!!」
黒髪の少女の願いも虚しく、少女は駆け寄ってくる。
男は黒髪の少女の血が付いた手を舐めると、その表情を恍惚に歪めた。
「ひひ…美味いなぁ。
…なぁ?もっとおくれよ、お嬢ちゃんたち」
男は武器を持つ黒髪の少女から、何も持っていない後から来た少女へと標的を変えた。
男は狂った様な笑みを浮かべ、ぎらついた視線で後から来た少女を見る。
「ひひ…お嬢ちゃんも…血を、おくれよう!」
男が飛び掛かってきた瞬間、少女はその雰囲気を変えた。
アイスブルーの瞳は紅へと色を変え、冷たく、威圧するかの様に男を見据える。
ザワリ…と風までも怯えるかのように建物の間を擦り抜けていった。
「優姫ちゃん!?」
「…なんで、ここに?」
「触るな痴れ者!」
建物の上から新たに青年2人が現れるのと、少女が男の頭を潰し灰にするのはほぼ同時だった。
「「「………!」」」
一瞬のその光景に、3人は声を失う。
身体全体に白い灰を浴びた少女はガクリと膝を折り、それを見て正気に戻った黒髪の少女は慌てて駆け寄った。
「玻璃ちゃん!」
「…はり?…って、南風野の玻璃姫?」
黒髪の少女が呼んだ名に聞き覚えのあった金髪の青年が思わず呟いたその声に、もう1人の茶髪の青年も反応を示す。
「ああ。…ガラス姫」
それは少女を差す蔑称だった。
ーー決して宝石にはなれぬガラス玉ーー
そんな意味を持つ名を呟いた青年はゆっくりと歩き近寄る。
幸いにもその呟きは本人には届かなかったようだ。
「玻璃ちゃん!大丈夫?」
心配そうに名を呼ぶ黒髪の少女の顔を、瞼をこじ開けて見た少女は一言「ねむ…い…」と言って目を閉じてしまった。
スースーと寝息をたてる少女を見て、黒髪の少女は呆れとも安堵ともつかぬ息を吐いた。
「相変わらずだなぁ…」
「優姫ちゃん…その子…?」
「私のお友だちです。…どうしてここにいるのか分かりませんが。
一先ず月の寮へ連れて行きたいので手伝ってくれますか?」
「いいよ、僕が運んであげる」
金髪の青年はそう請け合うとそっと少女を抱き上げた。
END
後部座席ではミルクティー色の髪をした少女が横になっている。
どうやら眠っているようで、小さな寝息をたてていた。
その少女を振動で起こさぬよう、運転手は細心の注意を払う。
あと30分ほどで学園に着くというところだった。
「と…め、て」
寝ていると思った少女が運転手に声をかけたのは。
小さなその声を聞き漏らさなかった運転手はその言葉に従い車を止める。
「どうしました、玻璃様?」
「ゆ…き」
少女はその声に答えることなく車から降りてしまう。
「玻璃様!?」
慌てて運転手も車から降りたのだが、その時はすでに人混みに紛れて見えなくなっていた。
少女はフラフラした足取りで路地裏を歩いていた。
表通りとは違い薄暗いそこを、少女は奥へ奥へと進んでいく。
「ゆ…き、ちゃ……」
やがて少女の瞳には1人の男に襲われている黒髪の少女が映る。
少女は一瞬だけ嬉しそうに表情を緩めると、次の瞬間にはその表情を引き締める。
「ゆ…き、…ちゃ!」
「え?」
黒髪の少女は男を長い棒で牽制しつつ、自分の名を呼んだ人物を見て目を丸くした。
「玻璃ちゃん!?…なんでここに?」
それで気が削がれてしまったのだろう、力が弛み男の攻撃が腕を掠めてしまう。
途端、広がる…甘い血の匂い。
「ゆーき、ちゃ!」
「来ちゃダメ!逃げて!!」
黒髪の少女の願いも虚しく、少女は駆け寄ってくる。
男は黒髪の少女の血が付いた手を舐めると、その表情を恍惚に歪めた。
「ひひ…美味いなぁ。
…なぁ?もっとおくれよ、お嬢ちゃんたち」
男は武器を持つ黒髪の少女から、何も持っていない後から来た少女へと標的を変えた。
男は狂った様な笑みを浮かべ、ぎらついた視線で後から来た少女を見る。
「ひひ…お嬢ちゃんも…血を、おくれよう!」
男が飛び掛かってきた瞬間、少女はその雰囲気を変えた。
アイスブルーの瞳は紅へと色を変え、冷たく、威圧するかの様に男を見据える。
ザワリ…と風までも怯えるかのように建物の間を擦り抜けていった。
「優姫ちゃん!?」
「…なんで、ここに?」
「触るな痴れ者!」
建物の上から新たに青年2人が現れるのと、少女が男の頭を潰し灰にするのはほぼ同時だった。
「「「………!」」」
一瞬のその光景に、3人は声を失う。
身体全体に白い灰を浴びた少女はガクリと膝を折り、それを見て正気に戻った黒髪の少女は慌てて駆け寄った。
「玻璃ちゃん!」
「…はり?…って、南風野の玻璃姫?」
黒髪の少女が呼んだ名に聞き覚えのあった金髪の青年が思わず呟いたその声に、もう1人の茶髪の青年も反応を示す。
「ああ。…ガラス姫」
それは少女を差す蔑称だった。
ーー決して宝石にはなれぬガラス玉ーー
そんな意味を持つ名を呟いた青年はゆっくりと歩き近寄る。
幸いにもその呟きは本人には届かなかったようだ。
「玻璃ちゃん!大丈夫?」
心配そうに名を呼ぶ黒髪の少女の顔を、瞼をこじ開けて見た少女は一言「ねむ…い…」と言って目を閉じてしまった。
スースーと寝息をたてる少女を見て、黒髪の少女は呆れとも安堵ともつかぬ息を吐いた。
「相変わらずだなぁ…」
「優姫ちゃん…その子…?」
「私のお友だちです。…どうしてここにいるのか分かりませんが。
一先ず月の寮へ連れて行きたいので手伝ってくれますか?」
「いいよ、僕が運んであげる」
金髪の青年はそう請け合うとそっと少女を抱き上げた。
END