長編と同じ夢主を想定しています
高校生パロ「例の夫婦がキスすらしてないってマジ!?」
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私立聖灰学園高校1-A
入学式から早数週間、お互いの素性がわかり始めようやく打ち解け始めた春の日。次の授業の準備を終え、ボーッと窓の外を眺めていたラビの耳に話し声が聞こえてくる。
「ねえねえ、隣のクラスの神田くんと実家が隣だったって本当?」
「うん。そうだけど」
「キャー!じゃあ幼馴染だ!」
「しかも同じ部活のマネージャーだったよね!」
「剣道部ね」
中学からの同級生である麻倉純はその容姿と雰囲気で高嶺の花として扱われていた。最近では話しかけるものも現れ、ある種学年のマドンナ的立ち位置に収まっている。同輩だけでなく2,3年の先輩にまでその噂は届いているようで、時々廊下から覗き見る影があるほど。すでにファンクラブまで出来たという話まで耳にした。よほど死にたいようさね。と、彼は呆れた。彼らが居た中学校ではそんな真似をしようものなら即座にたたっ斬られるか、海に沈められている。話題にも上がった彼女の幼馴染、神田ユウ(とその他大勢)の逆鱗に触れるためだ。ある種明確な不文律、麻倉純と神田ユウは実質的に夫婦として扱うべし。これを忘れてはあの学校で生きてはいけない。だが、この高校では話が違う。その不文律は通用しないのだ。それは彼らも解っているようで、今のところ彼も彼女も平穏に日々を過ごしているようだった。
「幼馴染で、同じ部活で…結構一緒に帰ってるよね?」
「わたしも前にみた!」
「下宿先が同じ方向だから」
きゃいきゃいと弾む声が一段と高くなっていく。この後に続く質問など天才・ラビで無くとも予想がついた。教室内が聞き逃すまいと息を呑んで静まり返る。
「どっちから告白したの?」
「二人は付き合ってるの?」
ほぼ同時に投げられた質問に麻倉純がピシリと固まる。しばらく返答がない。まずい、逆鱗だったかとラビが振り返ると、彼女はとてつもない情報量を叩きつけられた猫のように口をあけたまま首をひねっていた。ざわりと教室の空気が震える。
「つきあう…?告白…?」
要領を得ないつぶやきに、教室内がざわめき始める。高嶺の花にワンチャンスを夢見て、あるいは学内一の美男子と称される彼を狙ってギラついた視線が飛び交い始めた。彼ら夫妻の平穏なる日々は早々に終わりを告げるだろう。かつてなかった展開に心躍らせた兎は、ひとまずかつての同輩にこの一件を報告することにした。
その日の放課後、部活終わりの神田にラビからのチャットが入った。『今日泊めてほしいさ~』と甘えた文面もすでに3度目だ。実家から通学しているラビは家の人間との折り合いが悪く、時折友人の家に転がり込んでいる。なんやかんやで中学の3年間絡まれ続けた仲だ。下宿先に泊めるくらいなら構わないと、彼は珍しい優しさを発揮していた。奇しくも今日は、純が親戚付き合いで外食に行く予定のはずだ。ちょうどいいし、飯でも奢らせよう。『飯奢り』とだけ返せばすぐさま既読とうさぎのキャラクタースタンプが飛んでくる。そういえば彼女からは夕飯の予定を聞かれていた。『兎の日』と送っておけば、しばらくして兎と同じスタンプが返ってくる。送ってくる人間によってこんなにも可愛らしさが違うものかと苦笑していると知らない女が側に寄ってきた。
「今日は彼女ちゃんと帰らないの~?」
「…なんですか」
態度とリボンの色からしておそらく三年だろう。不躾にもいきなり話しかけてきた女に向ける敬意など持ち合わせてはいなかったが、一応敬語で応えておいた。
「あっ、そういえば 彼女じゃないんだっけ~ 噂になってるよ~」
「…は?なに」
「おおっと!待たせたさねユウちゃん! すんません、今日は俺がコイツと帰るんで~」
不可思議なことを言い出した女に眉根が寄った時、騒がしい男が口を挟んできた。名前で呼ぶなという文句を受け流しながら、勝手に背を押し校門へと誘導される。
「テメエ、何のつもりだ…」
「いやいや、助けてあげたんじゃん 感謝してほしいさね」
「ちっ…まあ行こうぜ 腹減った」
「何処行く?」
「蕎麦」
「ご満足いただけるような店はしらんよ?」
「…適当なところで良い」
下宿近くの食堂で夕食を済ませ部屋に戻る。首席入学であらせられるラビに教えを請い課題を進め、風呂を貸し、他愛のない話をしていた。布団に潜り、寝ようかというタイミングで兎がニヤついた。
「なあ、純とは何処まで進んでるんさ?」
「…死ね」
「教えてくれたって良いじゃんか」
「教えん」
「もしかして、言えないことまでさ?きゃーえっちー」
断ってもウザく食い下がる兎。手元には下品なハンドサインが動いている。これが答えるまで続くと思うと耐えられなかった。
「その卑猥なハンドサインを今すぐにやめろ。 別に、どこまでもねえよ」
「へ?」
「…キスもしてねえ」
「冗談さよね?…お前らが、いやいや」
「こんなくだらねえことで嘘つくと思ってんのかよ」
「…枯れてらっしゃる?」
「死にてえか?」
仏頂面。他人に興味がない。冷血漢。などと散々に罵られてきた神田ユウではあるが、彼とて健全な男子高校生である。年相応の欲と興味は持ち合わせているし、そういった話題が苦手なわけでもない。生まれたときからの幼馴染であるあの美少女に対して劣情を抱いたことなど、数えるのも馬鹿馬鹿しいほどだった。ではなぜずっと両思いだったはずの彼女とキスもしていないのか?答えは単純で、物理的に不可能だったからだ。最強のセコムこと兄貴、麻倉愁と同じ屋根の下で行為に及ぶことが可能だろうか?反語。では自身の家で?隣に移動したところでは焼け石に水だし、両親もいる。論外。そもそもの話、中学生のうちに手を出すことが正しいとは思えなかった。兄貴も、純の爺さんもそういう教育をしてきた。それなのに彼女は部屋に忍び込んで昼寝をするわ、下着を見える位置に干しておくわ、隙が多くて大変だったのだ。
「ってことはさよ、ユウちゃんてば童貞?」
「貞操が保たれていて何が悪い」
「意外…っつーか、クラスのやつ皆絶対違うと思ってたもんで…」
心当たりはある。中学の奴らは俺達を夫婦だなんだと言っていたし、そういった話題の時は意見を求められる事が多かった。兄貴直伝の話をすることで難を逃れていたが、まさか勘違いされていたとは。
「…まずいかもさね」
「何の話だ」
「いやー、さっきの女の先輩も言ってたじゃん?噂さよ」
「アイツが彼女じゃねえっつう話か?」
「そ、今日の昼間な…」
事の顛末を聞いて背筋に汗が流れる。たしかにアイツに告白したことも、付き合うと宣言した覚えもない。必要なかったからだ。だが、彼女の反応はなんだ?嫌な予感がする。いまだかつてこの予感だけは外したことがなかった。確実に、確実にあのお姫様の我儘が炸裂する前兆だ。
「でよ、男子も女子も湧き上がっちゃって。狙われるぜ、お前も純も」
「そんなことはどうでもいい」
「いいんかい」
「それよりも我儘の方が心配だ… 何を言われるかわかったもんじゃない」
「いや、わかるでしょ 鈍いさね」
「なんだ」
「ちゃんと告れって
そしたらヤりたいことし放題になるぜ」
「…マジで死ねよ」
真面目な顔でアドバイスしてきたかと思えば。再びハンドサインを送ってくる兎の脳天に拳を落として寝返りをうつ。兎の言うことにも一理ある。関係を進めるにはまずは肩書から。安全な幼馴染でなく、欲のある彼氏になるのも悪くない。幸いにして勝率は高い。どうせならアイツの反応を存分に楽しんでやるのも一興だろう。そうして美しき肉食獣は喉を鳴らした。
「ユウちゃんのスケベ」
「うるせえ 寝ろ」
入学式から早数週間、お互いの素性がわかり始めようやく打ち解け始めた春の日。次の授業の準備を終え、ボーッと窓の外を眺めていたラビの耳に話し声が聞こえてくる。
「ねえねえ、隣のクラスの神田くんと実家が隣だったって本当?」
「うん。そうだけど」
「キャー!じゃあ幼馴染だ!」
「しかも同じ部活のマネージャーだったよね!」
「剣道部ね」
中学からの同級生である麻倉純はその容姿と雰囲気で高嶺の花として扱われていた。最近では話しかけるものも現れ、ある種学年のマドンナ的立ち位置に収まっている。同輩だけでなく2,3年の先輩にまでその噂は届いているようで、時々廊下から覗き見る影があるほど。すでにファンクラブまで出来たという話まで耳にした。よほど死にたいようさね。と、彼は呆れた。彼らが居た中学校ではそんな真似をしようものなら即座にたたっ斬られるか、海に沈められている。話題にも上がった彼女の幼馴染、神田ユウ(とその他大勢)の逆鱗に触れるためだ。ある種明確な不文律、麻倉純と神田ユウは実質的に夫婦として扱うべし。これを忘れてはあの学校で生きてはいけない。だが、この高校では話が違う。その不文律は通用しないのだ。それは彼らも解っているようで、今のところ彼も彼女も平穏に日々を過ごしているようだった。
「幼馴染で、同じ部活で…結構一緒に帰ってるよね?」
「わたしも前にみた!」
「下宿先が同じ方向だから」
きゃいきゃいと弾む声が一段と高くなっていく。この後に続く質問など天才・ラビで無くとも予想がついた。教室内が聞き逃すまいと息を呑んで静まり返る。
「どっちから告白したの?」
「二人は付き合ってるの?」
ほぼ同時に投げられた質問に麻倉純がピシリと固まる。しばらく返答がない。まずい、逆鱗だったかとラビが振り返ると、彼女はとてつもない情報量を叩きつけられた猫のように口をあけたまま首をひねっていた。ざわりと教室の空気が震える。
「つきあう…?告白…?」
要領を得ないつぶやきに、教室内がざわめき始める。高嶺の花にワンチャンスを夢見て、あるいは学内一の美男子と称される彼を狙ってギラついた視線が飛び交い始めた。彼ら夫妻の平穏なる日々は早々に終わりを告げるだろう。かつてなかった展開に心躍らせた兎は、ひとまずかつての同輩にこの一件を報告することにした。
その日の放課後、部活終わりの神田にラビからのチャットが入った。『今日泊めてほしいさ~』と甘えた文面もすでに3度目だ。実家から通学しているラビは家の人間との折り合いが悪く、時折友人の家に転がり込んでいる。なんやかんやで中学の3年間絡まれ続けた仲だ。下宿先に泊めるくらいなら構わないと、彼は珍しい優しさを発揮していた。奇しくも今日は、純が親戚付き合いで外食に行く予定のはずだ。ちょうどいいし、飯でも奢らせよう。『飯奢り』とだけ返せばすぐさま既読とうさぎのキャラクタースタンプが飛んでくる。そういえば彼女からは夕飯の予定を聞かれていた。『兎の日』と送っておけば、しばらくして兎と同じスタンプが返ってくる。送ってくる人間によってこんなにも可愛らしさが違うものかと苦笑していると知らない女が側に寄ってきた。
「今日は彼女ちゃんと帰らないの~?」
「…なんですか」
態度とリボンの色からしておそらく三年だろう。不躾にもいきなり話しかけてきた女に向ける敬意など持ち合わせてはいなかったが、一応敬語で応えておいた。
「あっ、そういえば 彼女じゃないんだっけ~ 噂になってるよ~」
「…は?なに」
「おおっと!待たせたさねユウちゃん! すんません、今日は俺がコイツと帰るんで~」
不可思議なことを言い出した女に眉根が寄った時、騒がしい男が口を挟んできた。名前で呼ぶなという文句を受け流しながら、勝手に背を押し校門へと誘導される。
「テメエ、何のつもりだ…」
「いやいや、助けてあげたんじゃん 感謝してほしいさね」
「ちっ…まあ行こうぜ 腹減った」
「何処行く?」
「蕎麦」
「ご満足いただけるような店はしらんよ?」
「…適当なところで良い」
下宿近くの食堂で夕食を済ませ部屋に戻る。首席入学であらせられるラビに教えを請い課題を進め、風呂を貸し、他愛のない話をしていた。布団に潜り、寝ようかというタイミングで兎がニヤついた。
「なあ、純とは何処まで進んでるんさ?」
「…死ね」
「教えてくれたって良いじゃんか」
「教えん」
「もしかして、言えないことまでさ?きゃーえっちー」
断ってもウザく食い下がる兎。手元には下品なハンドサインが動いている。これが答えるまで続くと思うと耐えられなかった。
「その卑猥なハンドサインを今すぐにやめろ。 別に、どこまでもねえよ」
「へ?」
「…キスもしてねえ」
「冗談さよね?…お前らが、いやいや」
「こんなくだらねえことで嘘つくと思ってんのかよ」
「…枯れてらっしゃる?」
「死にてえか?」
仏頂面。他人に興味がない。冷血漢。などと散々に罵られてきた神田ユウではあるが、彼とて健全な男子高校生である。年相応の欲と興味は持ち合わせているし、そういった話題が苦手なわけでもない。生まれたときからの幼馴染であるあの美少女に対して劣情を抱いたことなど、数えるのも馬鹿馬鹿しいほどだった。ではなぜずっと両思いだったはずの彼女とキスもしていないのか?答えは単純で、物理的に不可能だったからだ。最強のセコムこと兄貴、麻倉愁と同じ屋根の下で行為に及ぶことが可能だろうか?反語。では自身の家で?隣に移動したところでは焼け石に水だし、両親もいる。論外。そもそもの話、中学生のうちに手を出すことが正しいとは思えなかった。兄貴も、純の爺さんもそういう教育をしてきた。それなのに彼女は部屋に忍び込んで昼寝をするわ、下着を見える位置に干しておくわ、隙が多くて大変だったのだ。
「ってことはさよ、ユウちゃんてば童貞?」
「貞操が保たれていて何が悪い」
「意外…っつーか、クラスのやつ皆絶対違うと思ってたもんで…」
心当たりはある。中学の奴らは俺達を夫婦だなんだと言っていたし、そういった話題の時は意見を求められる事が多かった。兄貴直伝の話をすることで難を逃れていたが、まさか勘違いされていたとは。
「…まずいかもさね」
「何の話だ」
「いやー、さっきの女の先輩も言ってたじゃん?噂さよ」
「アイツが彼女じゃねえっつう話か?」
「そ、今日の昼間な…」
事の顛末を聞いて背筋に汗が流れる。たしかにアイツに告白したことも、付き合うと宣言した覚えもない。必要なかったからだ。だが、彼女の反応はなんだ?嫌な予感がする。いまだかつてこの予感だけは外したことがなかった。確実に、確実にあのお姫様の我儘が炸裂する前兆だ。
「でよ、男子も女子も湧き上がっちゃって。狙われるぜ、お前も純も」
「そんなことはどうでもいい」
「いいんかい」
「それよりも我儘の方が心配だ… 何を言われるかわかったもんじゃない」
「いや、わかるでしょ 鈍いさね」
「なんだ」
「ちゃんと告れって
そしたらヤりたいことし放題になるぜ」
「…マジで死ねよ」
真面目な顔でアドバイスしてきたかと思えば。再びハンドサインを送ってくる兎の脳天に拳を落として寝返りをうつ。兎の言うことにも一理ある。関係を進めるにはまずは肩書から。安全な幼馴染でなく、欲のある彼氏になるのも悪くない。幸いにして勝率は高い。どうせならアイツの反応を存分に楽しんでやるのも一興だろう。そうして美しき肉食獣は喉を鳴らした。
「ユウちゃんのスケベ」
「うるせえ 寝ろ」