閑話2-X
[必読]概要、名前変換
・概要「亡霊に名前を呼ばれた日」から約2000年後の物語
ジャンル:転生/やりなおしモノ。神田落ハピエン確定(リナ→神田片思いからのアレリナ着地を含みます)
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2-X-2「姫とはどういうことぞ」
彼らが任務より戻って数日、アルマは唐突に思い出した。駅でのあの一場面、麻倉純が姫とはどういうことか聞き出すつもりだったのだ。今日は幸い親友の彼も非番だ。今頃鍛錬室に籠もって座禅でもしているだろう。走っていき、勢いよく扉を開ければお目当て通り神田ユウが目を閉じて座っている。
「姫ってどういうこと!」
「うるせえ!瞑想中だ馬鹿!」
脈絡を無視した唐突な問いに、彼の額に青筋が浮かぶ。こんなことは日常茶飯事であるためアルマは気にしない。もう集中は出来ない神田の横に座り込んでは、己の疑問をまくし立てた。駅では紳士が彼女を姫君と呼んでいたし、ラビが姫様と呼んで冷たくされているところも見た。母国では貴族だというクロウリーともなんだか話が合うみたいだし、もしかして彼女は本物のお姫様なんじゃ?と。
「…まあ、間違いじゃねえよ」
「やっぱり?」
「世が世なら本物のプリンセスだぜ、城持ちだしな」
彼からプリンセスと言う単語が飛び出たことが可笑しくて吹き出すと頭を叩かれた。痛い頭を擦っているととある仮説が頭を過る。彼女が姫君なら、許婚であった彼は…
「ってことは… ユウ。王子様だったの?!」
「違う」
「え」
「違う」
怒鳴りつけられるつもりで言葉を吐いたのに、この反応は予想外だ。黒が白じゃないとでも言うように淡々と否定された。怒りも呆れも照れもない無感情な返答だ。それに驚いて聞き返すも同じ調子で返される。それでアルマは納得して追求するのをやめた。ユウは王子様じゃない。なんともとぼけた結論だがこの場にそれに気付く人物は存在していない。
「…純はああいう扱いされるのを嫌がる」
しばらくの沈黙の後に彼が口を開いた。彼女を直接イジってやるなという忠告だ。なんだかんだでこういう所に優しさが滲み出る。ニマニマと彼を見ていればまた叩かれた。さっきよりも柔らかい力で。顔を見れば照れ隠しをしているとすぐに分かる。
「若様が言うならそうなんだろうね」
「…貴様。待て、アルマ!」
時々、彼女の兄やその従者は彼をそのように呼んでいた。それも彼を叱るときばかり。知ってるよ、ユウは王子様じゃなくて若様だもんね。今度は一瞬凍りついた後に目をかっぴらいて怒鳴りつけてくる。手元にあった模擬刀を手にされる前に逃げなくては。全速力で教団内を逃げれば、鬼が追ってくる。通報をうけたリナリーが二人を捕まえるまで、騒がしき鬼ごっこは続いていた。