閑話2-X
[必読]概要、名前変換
・概要「亡霊に名前を呼ばれた日」から約2000年後の物語
ジャンル:転生/やりなおしモノ。神田落ハピエン確定(リナ→神田片思いからのアレリナ着地を含みます)
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
2-X-1「かくも懐かしき武器の話」
帰りの車窓にて、純の頭の上で白丸が転がる。
「つーか、お前。それはなんだ」
「ああ、この子?」
おいで、と彼女が声を掛ける。ふよふよと三枚の硬質な翅を揺らめかせて彼女の指にとまった。白丸は気ままな時間を邪魔されたことが不満なのか、神田に背を向けそっぽを向いているように見える。
「ゴーレムだよね?純のは白いんだ」
「そ。形状記憶ゴーレムのシエル。 優秀でいい子よ」
「形状記憶?」
「覚えた物に変化できる。例えば…、ナイフ」
さっと開かれた手のひらの上、現れたのは無骨なナイフ。それを握りしめると、続けざまに銃と声がする。手の角度を変える間に、彼女は拳銃を手にしている。それも何も持っていなかったはずの左手にまでだ。
「すっごい!」
「…曲芸」
「失礼な。便利なんですからね」
手品のようなそれに目を輝かせて喜ぶアルマと、目を見開いて驚きはしたものの憎まれ口を叩き始める神田。彼が一度閉じた瞼を開くと、針の先端が向けられている。彼女ではない。ゴーレムが翅の一枚を鋭い棘のように変化させ目の前に迫っていたのだ。
「ほら、怒った」
「これをどうにかしろ」
さらに先端が迫る。これじゃないもんね、などとゴーレムの不満を代弁する彼ら。面倒くさそうな舌打ちが飛び出た。
「…どけ、白丸」
「及第点」
白丸と呼べば不満そうなゴーレムの瞳が閉じられ、彼女の手に戻っていく。他には変化できないのかというアルマの問いに、次々とゴーレムの形が変わっていった。弓と矢。メリケンサック。用途のわからない10個の指輪。ピックツール。包丁。ハンマー。モーニングスター。形状の違うナイフ複数種。髪留め。チェーン。ムチ。腕輪。鍵。文鎮。硯。フォーク。ポテトマッシャー。羽ペン。ガラスペン。ショットガン。斧。
「武器じゃねえのが混じってんじゃねえか」
「…別に武器限定じゃない」
「ぼくも触っていい?」
「いいよ」
また最初のナイフに戻ったそれをアルマが握る。重さや触り心地に違和感はないらしい。純が言うには彼女のイノセンスの能力を付与することで、擬似的な装備型イノセンスにすることも出来るのだとか。いざという時は借りて戦うことも視野に入れねばならないと神田は考えた。
「…刀は無いのか」
自分の獲物である六幻と同型の武器があれば戦略は広がるとかけた言葉に、彼女の口元が僅かに緩んだ。手を出せという指示に従えば、ゴーレムが投げて寄越される。空中で棒状に変わった。手にのしかかるズシリとした重み。白紫の鞘と柄のそれは、かつて郷で見た麻倉家に伝わる打刀だ。
「燃えたんじゃ」
「…最初から覚えてたの」
鞘を抜けば、白味を帯びた玉鋼の輝きが目に染みる。細かい疑問は尽きないが、懐かしきその輝きに目を奪われ続けた。