EP2「亡霊を使徒に仕立て上げた日」
[必読]概要、名前変換
・概要原作沿い:本編開始前~神田ユウ教団帰還まで
ジャンル:悲恋、一部嫌われ要素あり
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仮想19世紀末の英国南部、崖の上。
ニワトコの木陰で亡霊を使徒に仕立て上げた。
EP2.亡霊を使徒に仕立て上げた日
街から戻る道すがら師匠に聞いた話によると、あの亡霊は『咎落ちのなりそこない』などというケッタイなあだ名で呼ばれているらしかった。咎落ち。神の意思たるイノセンスに逆らった使徒の成れの果て。それのなり損ないとは一体なんだというのか。
教団に戻るやいなや、身体に異変はないかと全身を診察された。いつもは俺の身体の呪いに検分が主目的だが今回ばかりは理由が違うようで、師匠も含め脳の検査をされる。耳に挟んだ研究員の言葉によれば、『アレ』の歌を聞いたことによる影響がないかの調査だと。結果として何の問題もなかったようだが、それは俺の身体だからだと結論付けられていた。
ちょうど帰ってきていたリナに任務の様子を聞かれたので、街での出来事を話してやると明らかに怯えた様子。ルベリエのやつが来たときと同じ顔をして震え始めた。
「…なりそこない」
震える唇から漏れ出したのは亡霊のあだ名。アイツの話はここでは禁句のようで、リナだけでなくファインダー連中、科学班に至るまで口を閉ざし多くを語りたがらない始末だった。あの街での出来事を報告しなければならないのに、それでは話にならない。埒があかないので師匠とコムイに直接尋ねると、帰ってきたのはくだらない話だった。
かつて行われていたエクソシストを増やすための実験。咎落ちを多数生み出したというその実験の発展型。麻倉純の母親に適合していたイノセンスが、胎内にいた娘にわずかに適合していたのが運の尽きだったのか、先立った母のイノセンスを引き継いだらしい。あまりに低い適合率を誤魔化すために、装備型だったイノセンスの首輪を直接体内に埋め込んだ後天的な寄生型。イノセンスに蝕まれる痛みで暴走し多くの被害を生み出した忌み子。咎落ちになりきれなかった使徒のなり損ない。つまりは『咎落ちのなりそこない』なのだと。どうやらリナはその暴走を目の当たりにしたようで、その名前に忌避感と恐怖を抱いているらしい。それは理解できたが、教団の連中が亡霊を避けているのは単なる恐怖によるものに見えるのが腑に落ちない。こいつらは自分たちがどれほど愚かかわかっていない。実にくだらない話だ。
「それで十分な支援もなしに、飯に毒まで盛られる始末ってわけだ」
「…毒?」
「コムイ室長、君は把握していなかったのかい?」
「いえ、報告は受けておりました。改善されたとも」
「…これは困ったな、虚偽の報告はいけない。あそこの担当は僕たちと一緒にいた子だね?すぐに外しなさい。」
「直ちに。しかし、どうしたものか…」
「彼女は随分と落ち着いていたよ。自分の本分を理解して、報告書もしっかり上げている。新しく入った偏見のない子ならばまともに運用出来るだろう。」
「…適性のあるファインダーを見繕いましょう。」
「それと、定期的に連絡係を派遣しなさい。今のままではあの子は検診も受けられない。いずれ彼女もあの街を離れなくてはならない時が来る。我々に都合がいいからと何時までも閉じ込めておくわけにはいかないよ。」
「それは、そうなのですが…」
「…俺が引き受けても良い」
「いいのかい?」
「おや、どうしたんだい神田。」
「別に、必要な仕事なんだろ」
亡霊と教団との連絡役を引き受けたのは、なぜだっただろうか。自分の意思と関係なくイノセンスに適合させられたことへの同情、生まれたときから運命が決定づけられていたことに対する親近感。つまるところ、ある種、同類への憐れみがそこにあった。