LastEP 「亡霊に名前を呼ばれた日」
[必読]概要、名前変換
・概要原作沿い:本編開始前~神田ユウ教団帰還まで
ジャンル:悲恋、一部嫌われ要素あり
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読み進めるにつれ文字が震え、インクが滲んでいる。結局のところアイツは俺との約束を破ってばかりのどうしようもない女だった。その文句を一言でも言ってやらなきゃ気がすまないのに、あの女はもう何処にも居ない。俺の後悔も、感謝も、文句もアイツには一切言ってやれなかったのに、こんな手紙で一方的に感情を押し付けてくる。本当に、とんだ我儘女だ。
アイツの想いに応えてやることはできない。俺がアイツに寄り添っていたのはただの憐れみだけで、アイツから向けられた感情とは全くの別物だろう。それに眼の前にいるのはあの少女の亡霊で、俺が応えるべき相手は何処にも居ない。それが酷く口惜しかった。
あの女は性懲りもなく最期の願いとやらを書き記している。笑ってしまうほどくだらない些細な願いだ。別に俺の名を呼んだくらいで、俺達の何が変わるわけでもなかったのに。それくらいで見放すほどお前のことを軽んじてたわけでは無いんだが。本当に、本当にどうしようもないヤツ。
「…最期くらいは願いを叶えていけよ、馬鹿」
「…まだ、最期ではないだろう。」
もう居ない女の亡霊が、色のない瞳でこちらを見つめている。その表情がアイツと、あの少女と全く同じもので。せめてもの慰みに、形式的にせよ願いを叶えてやるのも吝かではないと思った。
「…さよならだ。純。」
「ええ、いってらっしゃい。ユウ。」
LastEP .亡霊に名前を呼ばれた日
仮想19世紀末の教団本部。見知らぬ亡霊に名前を呼ばれる。
いってらっしゃいと微笑む瞳には、また鮮やかな緑色が煌めいていた。