両手いっぱいの花束を
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「なまえ、お待たせしてすみませんでした」
あれからジェイドが仕事を終えたのは一時間後。本当は二十分もかからなかったのにピオニーが急に送ってきた書類のせいで残業に。その時に一瞬見せた黒い笑みは昔と変わらないと思っておこう。ピオニー、ご愁傷様。
「ここが私の家ですよ」
何にもないですけどね。当たり前のように言うセリフに私はただ唖然としてしまう。独りで暮らす家なのに私の実家より大きいなんて。白を基調としたその家は広くて本当に必要なもの以外は何もなかった。二階に部屋がありますから、そう私の荷物をナチュラルに持ったまま部屋を案内する。
「ここを使って下さい」
「ひろっ!」
私の部屋より全然広い。物は簡易な机と大きなベッド。あとは二人掛けくらいのソファーがあるのみのホントにゲストルームって感じの部屋。
「金持ちってわかんない」
「このあたりでは小さい方ですよ」
うっ、確かに。この家に来る途中に見かけた家々なんてどんな豪邸よ!なんて怒鳴りたくなるほど大きかったし。恐るべしグランコクマの貴族。
「ジェイドー?」
下にいますからと先に降りてしまった彼を捜すが見当たらない。おい、人を招いておいてどこに行ったのだか。リビングに行っても見当たらない。どうしたものかとキョロキョロあたしを見回せばなまえ、と私の名を呼ぶ声がした。
「なまえ」
「どこ行って……っ!?」
後ろのからの声に勝手にいなくならないでよ!とでも怒鳴ってやろうかと思い振り返ると目の前は色とりどりの何かが広がっていた。それが花だと分かったのは鼻にその香りがしたから。手渡されたその花をよく見れば昔、本で見て私が綺麗だと言った花だった。私の頭一つ大きな彼を見上げれば満足げな笑顔を浮かべていた。
「ジェイド……これ…」
覚えたの?たった一回……綺麗だから見てみたいって言った言葉を。ケテルブルクは一年中、雪が降っていて雪に強い花以外は花なんて見ることがない。だから、子供の頃にこんな綺麗な花を一度でいいから見てみたいって言ってみた。その時はネフリー以外は何の興味を見せなかったのに。二十年近く前の事を覚えてくれてたんだ。