両手いっぱいの花束を
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「旅を終えて落ち着いてふと会いたくなった……それでは理由にはなりませんか?」
「だって……うん……ジェイドは私がまだ独りだって知ってたの?」
会いたく……もし、私が結婚してたらどうしてたんだろう。あ、でも…幼なじみに会うのに理由っている?いやいや、相手はジェイドだから。や、ヤバい……前より分かりづらくなってきた。
「ネフリーから聞いてますからね」
あの子、いつの間にそんな報告をしてたのよ。この歳になっても嫁の貰い手の兆しもないってのにぃ。
「わ、悪かったわね。未だに独りで!」
「誰も悪いと言ってませんよ。私としては好都合ですから」
男はいいわよ?独身貴族?格好いいじゃない!もうっ!とそっぽを向いてやれば、すみませんと謝るジェイドが最後に呟いた言葉は私には聞こえなかった。
「宿は取ったんですか?」
「追い出されてそのまま来たからなーんにも」
すぐさま定期便に乗って今日の昼前にグランコクマに着いてそのままここに来たんだよ。ガイが迎えに来てくれてなかったら途方に暮れてたね。どっち行けばいいのかもわかんないし。だから宿を決める以前の問題。
「なら私の家に来ますか?部屋は空いてます」
「え?あ、まぁ……タダなら……」
家って、カーティスの家だよね?貴族の家、か。見てみたいけど向こうの親にはいい顔されなさそう。三十後半の未婚の女が行ったら何を言われるか。
「言っておきますが、私は一人暮らしですよ」
「ふーん……って!えーっと、ああ、うん」
何て答えればいいの。幼なじみとはいえ男の一人暮らしの家に泊まる。でも、ジェイドに限ってそういうのはないよね!いくら変わったからって言っても手を出す、とかはねぇ。泊めてくれるってなら宿代はタダだし、帝都の宿代が幾らかなんてわからないし、まあいいかな。
「もう少しで就業時間も終わりますので、ここで待っていて下さい」
「わかった」
とは言ったものの軍事基地のしかも一個師団を任される大佐殿の執務室に田舎から来た一般人がいるなんて凄く不釣り合い。部屋の隅とは言え、数日分の旅行バッグは些か目立つ。正直落ち着かないというか、さっきまではお喋りしてたから気にならなかったけど、ここって静かなんだな。ジェイドのペンを走らせる音だけが部屋に響く。