両手いっぱいの花束を
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「よっ!」
軽快な感じで出迎えたのは十数年前に別れて以来のもう一人の幼なじみ。あまりの変わらなさに開いた口がふさがらない私にせっかくの美人が台無しだぞ。そう白い歯を見せて笑うピオニーは皇帝になってもピオニーのままだった。
「……変わらないね」
変わらなすぎて困る。普通はいいんだろうけど、仮にも皇帝ともなった人物がそんなラフな格好でよっ!なんて軽い挨拶されたら、ね?ついついこっちもよっ!って返しそうなったよ。
「けどここってジェイドの執務室って聞いたんだけど?なんでピオニーがいるの?」
「陛下……また逃げ出してきたんですか」
ああ、また宮殿では騒ぎになってるな。がっくりと肩を落とすガイ。またっていつもなの。
「溜息ばっかり吐いてると幸せが逃げるぞ、ガイラルディア」
「誰がそうさせてるんですか?」
ケタケタ笑うピオニーに疲れたような表情を浮かべるガイ。ん、ガイってガイラルディアって言うんだ。貴族っぽい。
「それで、私の質問は?」
「おう。ネフリーからお前が来るって聞いたから出迎えに来た」
出迎えって、なんか違うよ。それでもちょっと嬉しいや。急にケテルブルクからグランコクマへと戻ってしまい、その後すぐに皇帝になっちゃったからもう二度と会えないって思ってたからこの再開は予想もしてなかった。
「元気そうで何よりだ」
「ピオニーもね……じゃなかった……」
ピオニーはもう皇帝陛下なんだ。だからこんな気さくに話しかけちゃいけないんだ。いつまでも子供の頃のままじゃいけないのに、つい懐かしくて昔に戻った気になって口調が砕けてしまった。
「気にすんな。いつも通りでいい」
いくら久しぶりとはいえ急に畏まられたら困ると言うピオニー。昔からそうだ。皇太子だろうと関係ない。自分は自分。名前で生きてわけじゃない。そんなピオニーだからこの国は住みやすいのかもしれない。両親たちも言う。ピオニーが皇帝になってから色々変わったけど、住みやすくなった。ネフリーには少々申し訳ないけど、実際にそう思う。
「なぜ、あなたがそこに座ってるんですか?」
パタンとドアの閉まる音がしたと思ったら聞こえてきた声。ドキッとしてしまう。記憶の中の声とは違うけど絶対に間違わない。その姿を確認したくてゆっくりと後ろへと振り返る。