両手いっぱいの花束を
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ある日突然、二十年近く前に街を出て行った幼なじみから手紙が届いた。街を出てから手紙を寄越したのは初めて。一年、二年近く前からか……アクゼリュスの崩落やら戦争、それだけでは治まらず世界全部が崩落した。事の顛末は幼なじみであり街の知事であるネフリーから聞いた。こうしなければならかった。そう思えば考えても理解できないことも納得できる。というか必要だから行った、それをピオニーも認めた。多くの人が死んでしまうよりいい。
「私には、あんまり関係ないかな」
この歳になっても貰い手もなくフラフラと家事手伝いしてる私が何が言えたものだろうか。幼なじみからの手紙には旅券が一枚とグランコクマに来いという一文だけ。おいおい、生まれてこの方ケテルブルクから出たことのない人間にグランコクマに来いなんて酷じゃないのか?両親からは嫁の貰い手探しに行ってこいと荷物とともに放り出された。
「……おっきい……綺麗…」
初めて訪れた帝都はケテルブルクより全然大きくて水の帝都と呼ばれるだけあってその街中に流れる水はどれも美しかった。雪景色しか知らない私にはどれも新鮮なのだ。
「来たのは、いいけど。どこに行けばいいんだろう」
家を放り出されたまま来たから彼には連絡してない。どこに行けば会えるのか、と言うよりはここはどのあたりなのかもわからない。向こうに宮殿が見えるからあそこにピオニーがいるのはわかる。けどいきなり行ってピオニーに会いに来たっても会わせてもらえるわけがない。え?私迷子?この歳で迷子ってか?
「嘘でしょう!?」
ああ、なんて無計画で来てしまったんだろうか。道行く人もなんだなんだと怪訝な面持ちでこっちみてるし。これでは変な人だ……両手足を地につけて項垂れていればそう思われてもおかしくないよね。
「あの、失礼ですが。なまえさん、ですか?」
どうにもこうにも途方に暮れて打ち萎れていれば頭上からの声。誰だかわからないけど、返事をしないわけにはいかない。だって私の名前を知ってるんだもん。はい?座り込んだ状態で声の主のほうへ顔を向ければ、そこには短い金色の髪の青年が立っていた。結構な美形だな。うん、目の保養だね。