ケンカするほど、ね?
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あたしは悪くない。
悪くないもん。
悪く……ない、んだから。
毎度のことと言えば毎度のこと。だけどあたしも向こうも気が短くて口が悪くて手も早い。どれをとっても悪いところばかり。エステルのように可憐に笑えたらジュディスのようにスタイルが良かったらリタのように愛くるしかったら……あたしはもっと可愛くできたのかな?
「ああもう!面倒くさいから謝ればいいじない!」
「ユーリももう怒ってませんよ」
あたしとユーリのかつてない大喧嘩のせいでみんなもどうしたらいいのか分からないでいるみたいだ。
「なまえ。手当て、しましょ?」
そう何度もエステルが言う。手当て……それはユーリに叩かれて赤く腫れ上がった右頬のことを言ってるんだろう。こんなの…痛くない。痛くないよ。
「もう少し、一人にしておいて」
そう言うとエステルは何か言いたげな表情のまま去っていった。今日はもうこのまま野宿なんだし何も気にする必要はない。腫れた頬も明日にはたぶん治まってる。腫れたままでも別に困ることはないもん。あたしみたいながさつな女の子なんて誰も相手しないし。
「まだいじけてんのか?」
そこに足音も気配もなく近付いてあたしの背に声を掛けたのは現在冷戦状態なはずのユーリ。まさか声を掛けてくれるなんて思わないから思わず振り返りそうになる。けど、どうせエステルたちに何か言われたんだろうと思いとどまる。
「オレは悪いと思ってないぜ」
「……なら、あっち行っててよ」
あたしも自分がしたことに間違いはないと思ってるし。互いに悪いと思っていない。だから謝らない。なら何でユーリは声を掛けてきたんだろう。
「……こっち向けよ。なまえ」
膝を抱え込んで小さく丸く座り込むあたしにユーリは呆れたようにそう言う。けど、今ユーリの顔を見たらまた酷いことを言ってしまいそうで、返事をせず抱え込んだ膝に顔を埋める。
「…ったく」
面倒くさい。そう思うなら声を掛けなければいい。放っておけばいい。何のに何で?
「あたしは間違ってない!」
ユーリを庇ったこと。咄嗟にあたしが割り込んだからユーリは怪我をしなかった。誰も怪我をしなかったのに……何であたしが叩かれなくちゃいけないの?謝らなくちゃいけないの?
「……もういい」
スッと立ち上がるあたしにユーリがなまえ?名を呼ぶ。喧嘩が絶えないならあたしを気に入らないならいなくればいいだけだ。
「あたしはいない方がいいね。みんなから見れば迷惑掛けてばっかりだし」
喧嘩の仲裁。怪我の手当。問題を起こしたときのフォロー……言い出したらキリがない。だから……さよならすればいいんだ。