ちいさな日溜まり
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「ーーっ!?」
するするとシャツを上に捲られ、傷口を消毒するのかなとこれから感じるだろう痛みを迎える準備をしていれば予想していたのとは違う感触がした。生暖かいものが背中の傷口に這う。ぞわっとしたあとまた感じる柔らかい感触。
「ジェ…っ」
「こんなになるまで我慢するなんて……」
もう一度感じる生暖かい感触。二度目でようやくジェイドの舌が背中を舐めていると気づく。傷口の下から上へと舌を這わせられればビクッと体が震える。
「なまえ……願いなさい」
「……ふぇ?」
ジェイドの行為に頭が真っ白になり生理的なのか目には涙が浮かぶと彼は静かに言った……願えと。でも何を願えと言うのだろう。私の願いはジェイドには叶えられないのに。
「ジェイド……何を?私の願いは…」
あなたでは叶えられない。そう続けようとすればそっと背中から抱き締められた。背中を捲っているため露わとなっている腹部に手を回される。
「あなたの本当の願いは何なのかは分かりません。ですから叶えられません……でも別のことは願えます」
そうは言ってもジェイドは私が何をお願いしても『おねだり』と言って願い事としては受理してくれない。おねだりも願い事と何ら変わらないと思うんだけど。
「まさかあなたがあんな目に遭っているとは思いませんでした」
時々、擦り傷などを作ってくるのはその為なんですね?と問われれば素直に頷くしかない。あの現場を見られてしまったのだから。ジェイドが来てからは軽く殴られる程度だったから隠せたけど、今回のは言い逃れは出来ない。
「私、孤児だから。ここでは迫害の対象になっちゃうんだ」
しかも余所者だからね。と小さく、自嘲気味に笑う。誰もが自分とは違う者は受け入れたからない。何処で生まれたのかどう生活をしてきたのかも分からない小娘なら尚更だ。
「それでも住むことが出来て働くことが出来るなら構わなかった」
ここに住めなくなったら本当に行く所はない。すむ場所も生活していく術も無くなってしまう。それは困るから暴力には甘んじて受け入れた。
「ですが、あれではいつか死んでしまいます。願って下さい」
ああ、ジェイドは私を心配してくれているんだ。
嬉しいな。こんな私を心配してくれて。でも出来ないの。あなたに願うことは出来ないの。