ちいさな日溜まり
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「……いたっ」
家に帰るまでずっと抱き上げられたまま。ベッドに下ろされたときに蹴られた背中が痛み顔を歪めてしまった。
「今、救急箱を持ってきますね」
「えっ、あ……うん」
意外だった。これも「魔法で治しましょうか?」って聞いてくるかと思った。それとも怪我は魔法じゃ治せないのかな?と言われてもそのつもりはないけど。
「……はぁ」
最近おかしい気がする。願い事のことを聞いてこないことが寂しく思える……けど願いを叶えてもらった後、また一人になる。ジェイドが居なくなると思うことの方が寂しく思えて仕方ない。誰かとの暮らしに慣れてしまい、また一人になることが怖い。
「どうしよう、か」
「何がですか」
願い事……いつまでもこのままにしておけないと分かっている。その悩みを口にしてしまうと同時に救急箱を手にしたジェイドが戻ってきた。
「えっと……仕事。これからどうしようかなって」
言えない。ジェイドがいなくなるのが寂しいなんて言えない。だから誤魔化すようにそう言った。実際、仕事を辞めてしまった。あの街でもう他の仕事に就くことは出来ない。
「何を言ってるんですか。今はその怪我を治すことだけを考えなさい」
「でも……働かないと、お金ないし」
この家には余裕がない。一日一日を生活していくだけで精一杯。なのに仕事を失ってしまった。
「あんな目に遭ってまで仕事をする必要なんてありません」
ジェイドは救急箱から消毒液を取り出し、ガーゼに含ませる。それを私の手足の傷口に当てる。傷口に沁みて痛くて小さく呻く。けどジェイドは容赦なく傷口を消毒していき、ガーゼや包帯で覆う。
「背中を出して下さい」
蹴られ踏ませた背中を見せるように言われ一瞬、躊躇ったけど「…うん」と頷いて彼に背を向ける。
「そ、そう言えばジェイドって大きくなれたんだね」
男の人に素肌を見せたことなんてないから恥ずかしい。その恥ずかしさを隠すためにふと思い出した事を言ってみる。疑問に思ってたことだもん。聞いてもいいよね?
「これも魔法ですよ。と言うよりはこちらが元の姿です」
えっ!?と声を上げる。小さい方が魔法の姿なんだ……ってことは、これが本当の姿。ちょっと反則だよ。