ちいさな日溜まり
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「なまえ!」
「は、はい!」
モップを片付けていると後ろからの怒鳴り声。長年の経験からかその声に体は萎縮し、体は震え始める。この後、何が待っていても私にはここにいる以外の道はない。少しの間、我慢すればいいだけのこと。
「お前、昨日言いつけておいた仕事はどうした!?」
大声を上げているのはこの店で親方と呼ばれている店主だ。体も大きくてその厳格な性格から怖がられる反面、尊敬されるところもある。私の一番苦手な人。
「俺は昨日、お前に何をいいつけた?」
「………竈の掃除です」
忘れていた。口が裂けても言えないけど、言い訳のしようがない。昨日は結構遅くまで他の仕事を言いつけられていたから内容的に一番最後にしていた竈の仕事をすっかり忘れていた。これは……かなりマズい。
「すみません、忘れてました……っ!」
俯き、言い訳なく謝罪すると……いや、言い切る前に顔に頬に衝撃が走った。それが殴られたと痛みを感じるのに数秒。頬を殴られた衝撃で地面に倒れ込んでようやく、自分が殴られたと認識した。
「忘れてましたじゃねぇ!それがお前の仕事だろう!!」
親方が怒鳴ってる。けど殴られて脳しんとうを起こしているらしく思考がハッキリしない。地面についた顔を上げることも出来ない。
「はは、あいつまた怒られてるぞ」
「随分、久々だけどな」
遠くから……実際は近いのかも……他の従業員の笑い声がする。殴られた私を笑い、助けてくれることはない。
「ぐぅっ!」
頭を体を上げようとすると今度は腹を蹴られ背中を蹴られ、その行為はエスカレートしていく。私が血を流しても誰も助けてはくれない。時間が経てば解放してもらえる……それまでの我慢だと言い聞かせる。
「ーーぁっ!」
声にならない悲鳴。最初に殴られたときに口の中を切ったようで口の中が血の味がする。もう少し……もう少し我慢すれば解放してもらえる。でも、この姿で帰ったらジェイドは何て言うかな?言い訳を考えておかなきゃ。階段で転んだ?は無理か、途中に転げ落ちてこんな怪我するほどの階段はない。車に引かれた?いやいや、死んじゃう。
「何笑ってんだ!」
「ぐはっ!」
背中を思い切り踏まれた。苦しさと痛みが脳を支配する。ジェイドへの言い訳を考えてたら笑ってたんだ……ジェイド。