ちいさな日溜まり
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私と自称妖精ジェイドが共に暮らし初めてもう一ヶ月の月日が流れた。私の『願い』を叶えなければ元の世界には帰れないって言ってたけど、私にはジェイドに叶えてもらえるような願いはない。だからジェイドに願うことが出来ず、ジェイドは帰ることが出来ない。なのに彼は『願い事』の催促は一切してこない。
「ジェイド。私、仕事行ってくるから留守番お願いね」
「ええ、いってらっしゃい」
これも『願い』には入らないって。だからこの家に盗まれるようなものはないけど暇を持て余してる彼に頼んだ。私は今日も『仕事』へと出掛ける。
「にしても困ったな」
手の中のモップを一定のリズムで動かしながらどうしならいいのか考える。どう考えても私の『本当の願い』は彼には叶えられない。それはたとえどんな大魔法使いでも無理だ。
「かと言って、このままだとジェイドは元の世界に帰れない」
この一ヶ月の間、思いついた願いは全て『おねだり』と称され、願いとしては却下された。そうは言われてもこれだけのことを頼んでいてそれでも『おねだり』だなんて。塵も積もればで一つの願いにしてくれればいいのに。でも彼から言わせると、
「それはなまえの本当の願いではないでしょう?」
と。そうなんだけど。それは無理なわけで。
「なまえ!さっさと掃除を終わらせろ!」
「いつまで掛かってるんだ!?」
考えに耽ていていつの間にかモップを動かす手が止まってしまっていた。マズい……早く終わらせないとまた……スミマセン!と猛スピードで掃除を終わらせ、勝手口から裏道へと出る。
「またやっちゃった」
私のような孤児が働かせてもらえるだけでも感謝しなきゃ……そう言い聞かせてもう数年。正直風当たりはキツい。孤児と言うだけで皆の視線は冷たく、この職場だって必死に頼み込んで働かせてもらっている。けど住む場所だけは街の中には与えてもらえず、郊外にある廃屋に勝手に住んでいる。ここなら家賃の心配もないし、誰の迷惑にもならない。
「でもジェイドのおかげて最近は楽しいな」
一ヶ月間、小さな来訪者との生活は長い一人暮らしに光を与えてくれた。寂しくて辛かったけど、彼の存在は楽しくて嬉しくて毎日が充実した。一人での食卓に私以外の笑い声がする。これ以上の幸せなんてない。