月光花
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「お呼びですか?ご主人様?」
誰も呼んでないよ。思わずそう返そうとした。訪ねられたら返さなきゃと普通に返そうとした。けどおかしい。この家は私一人。数年前に両親を亡くして以来、街の郊外で一人暮らしをしてるんだから私以外の声がするはずがない。ましては男性の声なんて。
「だ、誰?……あれ?誰もいない…」
こんな家に強盗でも入ったのかそれともお化けなのか怖くて肩を竦めてキョロキョロと周りを見渡す。けど誰もいない。あの声は気のせいなのかな。とホッと胸を撫で下ろそうとしたときだった。
「こっちですよ」
こっちってどっち?また返そうとしてしまった。もう一度聞こえた声は私の前方下から。ま、まさかと思いながらもそーっとその声の方に顔を向けた。
「あ、あなた誰?」
「私はジェイド。言うならばあなたの願いを叶えるために呼ばれた妖精、ですね」
窓枠の前で立っていたのは本当に妖精?というくらい小さな男の子……ううん男性かな。何となくだけど。背丈は瓶より小さい。亜麻色の髪を後ろで軽く編み込み、赤い瞳は眼鏡で覆われて黒い服に黒いマント。妖精というよりはどちらかといえば魔術師みたい。
「ご主人様。あなたの願いを一つ言って下さい。何でも叶えますよ」
ジェイド……と名乗った自称妖精はその綺麗な顔で綺麗に微笑む。小さいのだけど見た目はカッコイい、と思う。普通ならこれだけ小さいと可愛いだけど。にしても願いを一つ叶えると言われても、私の願いなんてどんな力を使っても叶わない。それは禁忌なことだもん。
「ジェイド…?には悪いけど私は願いなんてないよ」
「何故です?あなたが願えば大金持ちにでも絶世の美女にでもなれるのですよ?」
首を振る私にジェイドは不思議そうな顔をする。好きな願いが叶うというのに何故願わない。望まない。意味が分からないといった風に眉を寄せて私を見る。