Love at first sight
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ここはマルクト帝国、首都グランコクマ。
私がこのグランコクマに来てから、もう数年の月日が過ぎた。ケテルブルクの普通の家庭に生まれた私。けど突然このケテルブルクからいなくなってマルクトの貴族の養子になった彼が帰ってきていきなり「迎えに来ました。結婚しましょう」とか言ってきた。
ちょっと待て!君とはもう十年近く会ってなかったんだよ?グランコクマに行ってから一度も帰ってこなくて、やっと再会したのはネフリーの結婚式だったってのにその結婚式から数年後にいきなら指輪を持って来てそれだもん。いや、まあ……昔から愛想はないけど顔は良かったし、再会してみれば更にカッコ良くなってたし、声も好みの低さだし……何だかんだと幼なじみというのに、十数年振りの再会だというのに一目惚れだったんだもん。
「にしても……」
あれは本当にびっくりしたな。再会から数年後、連絡なしにいきなり帰ってきたと思えばプロポーズだもん。ジェイドくらいカッコ良くて、しかも養子とは言え貴族ならそれ相応の貴族の令嬢と結婚するもんだと思ってた。なのに彼が選んだのは私。突然、プロポーズされても困るでしょう。まずは半年間、一緒に暮らしてみて考えて下さい。そう言われ、断る理由もなければこっちは一目惚れとは言え、好きになってしまったから二つ返事で承諾。
「あれから、何年だっけ?」
「何がです?」
ソファーに身を沈め、クッションを抱きかかえながら当時のことを思い出していれば頭上から声。んっ?と首を上に向ければそこには本日久々の休暇で家にいる私の旦那さま、ジェイドだった。
「んー?私がね、ここに来て何年経ったかなって」
ソファーの後ろに立っていたジェイドは前に回って私の隣に座る。そうですねぇ……と私を見つめたまま口を開くのだけど、えーっとあのね、もう何年も経つのは分かるけどそんな風に真っ直ぐに見つめられるのはまだ照れるんだけどな。向こうは分かっててやってるんだからやんなっちゃう。
「五年になりますかね?」
「もう、そんなになるんだね」
故郷のケテルブルクを出て、首都グランコクマに来て五年かぁ。ここに来たばっかの頃はよくピオニーもお忍びで来てたなぁ。さすがに今は皇帝になったからめったに会うことはないけど。
「それがどうかしたのですか?」
確かにこういったことを口にしたことはない。とりあえず半年のお試し期間、ジェイドの家で二人で暮らした。軍人であるジェイドは忙しくて帰ってこない日も少なくはなかった。それでも極力、帰ってきてくれるようになって、私が作った食事をそれが冷めてしまっても残さず食べてくれた。どうしても忙しくて会わない日があることもしばし。あっと言う間に過ぎた半年間はケテルブルクにいたときより充実してたことに気付いて、再度されたプロポーズにはこれまた二つ返事。
「ふと思い出しただけ。よく私がジェイドの奥さんになれたなって」
「あなたがよかったんです。なまえ」
未だに夢みたいと私が言えばジェイドはあっさりとそう返す。"が"よかったって……限定されて言うのは何とも、その…嬉しいのだろう。私の一目惚れで勝手な片想いだと思ってたから、あのプロポーズは予想外だったもの。
「ずっと聞いてみたかったんだけど、私の何処が良かったの?」
五年間、考えても答えのでなかった問い。本人に聞くのは何だか気が引けて聞けなくて、大した答えが返ってこなかったらどうしようとか思っちゃったし。
「私の一目惚れです」
「……はい?」
綺麗な顔でにっこりと微笑む彼。ジェイドの口からよもや"一目惚れ"という単語が出てくるとは思わず聞き返してしまう。私がネフリー並みの美人とか言うのなら分かる。人並み……だと自負したい……な私に一目惚れってまずありえない。
「おや?信用してませんねぇ」
「一目惚れされるような美人じゃないよ!?」
些か寂しそうに言うジェイドをちょっと可愛いと思ったのはさて置き、その言葉の意味がまだよく分からない。