隣り合わせの距離
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「……な、なに…?」
何が起こってのかわからない。なぜか私はベンチから離れた所に立っていた。そして、背後にあった噴水が爆発したかのように壊れている。あそこに居たら私は…そう思うと一気に恐怖が体を支配した。けどそれと同時に疑問が浮かんだ。どうして私は無事なのか。ゆっくり顔を上げると、至近距離に彼の顔があった。
「ふへっ!?」
慌てて離れようとしたけど腰に彼の手がしっかりと置かれていて離れられない。しょ、初対面なのに腰を抱かれてるって。
「……面白いですね」
「はい?」
壊れた噴水に顔を向けたまま彼は言った。何が面白いのか。私はまだ残る恐怖とこの至近距離の羞恥心で支配されてるというのに。
「あなたの才能に興味が出ました」
赤い瞳が私を見下ろす。目が離せない。私の才能に興味が出たって…どういう事だろう。
「僕の希望とあなたの不運…どちらが強いのか興味があります」
「は、はい?」
なんて事を言い出すのだろうか。それよりそろそろ離れて欲しい。この密着の状態は恥ずかしいというレベルを超えてるんだけど。これもある種不運なのかな。噴水の爆破?からは助かって初めて幸運とか思っちゃったけど。
「あ、頬から血が出てる…」
破片でも当たったのか一筋の血が彼の頬から流れ出ていた。慌ててハンカチを取り出してその血を拭う。
「ごめんなさい!私なんかを助けてくれたから…」
「僕が勝手にしたことです。あなたの責任ではありません」
それでもです!とムキになって返したら彼は少しばかり目を見開いた。そしてようやく私から離れてくれたと思ったら今度も思いもよらない行動をとった。
「かかかかかカムクラ、くん……?」
彼の両の手が私の頬を挟んだ。頭半分くらい背の高い私をじっと見下ろしている。な、何が起こってるの?
「なまえ…でしたね。これから毎日、僕と一緒にいてください」
「……はい?」
何度目かとわからない驚きに思考が止まる。この人はなんて言った?
「さっきも言ったように僕の才能とあなたの才能のどちらが強いのか試したい」
だから一緒にいてくれますね?と問われて思わず頷いてしまった。それは幸運か不幸か。その先も私たちはずっと一緒にいることになるなんて誰も思いもなかった。
希望も絶望も隣り合わせ