隣り合わせの距離
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私は自分も他人も不幸にしかしない…
「……はぁ」
1日何回吐くのだろうか、この溜息は。習慣というかもう呼吸をするレベルで出るのだから何も言えない。仕方ないと言えば仕方ないのか、これは私の持つ才能のせいなのだから。こんなものを才能と言うのならば才能とは何をもって才能と言うのか甚だ疑問である。
「不幸だ…」
どこぞの主人公の如くこんなセリフしか出てこない。ああ、もう生きているのが面倒くさい。息をするのも面倒くさい。何もかもが面倒くさい。
「いっそ、死んでしまおうか?」
とは言え人とは簡単に死ねるものなのか。否、死のうと思えば死ねるのだろう。ただ私の場合、死にたくてもそれは叶わない。こんな才能の持ち主なのに死ねないとは。それが私の『不幸』なのかもしれない。世の中、超高校級の幸運がいるというのに……いや、いるから私はこの才能を持っているのだろう。
「もういいや、授業はサボろう」
特別勤勉な訳じゃない。才能さえあれば授業は必須ではない学校なのだから。どこ行く訳じゃないけど行く場所も思い浮かばず適当にうろうろしていれば噴水が見えてきた。ベンチもちょうどあるしここで時間でも潰そう。うん、そうしよう。
「……良い事ってなんだろう」
生まれてこのかた幸運なんて出会って事がない。毎日が理不尽で何一つ思い通りにならない。そんな世界なんて、
「ツマラナイ」
と、誰かが言った。発しようとした言葉は誰かによって遮られた。多少の事では驚かなくなった私がベンチの背もたれから身を乗り出してしまうくらい驚いた。あまりにもタイミングが良くて、私が思っていた事だったから。
「…だれ?」
いつの間に人なんて立っていた?気配なんてなく、その人は私の前に立っていた。とは言え、向いている方向は校舎の方。黒い長い髪に予備学科の黒い制服。こんな人いただろうか。こんな目立つ容姿をしてたらたとえ予備学科の生徒でも噂の一つも聞くだろうに。
「あなたは、何がツマラナイの?」
どうして声なんて掛けたんだろう。私なんかと関わったらこの人に迷惑が掛かるというのに。でも、気になって仕方がなかった、この人物が。