一歩ずつゆっくりと
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「好きな人?うーん……いると言えばいる。いないと言えばいない」
「どっちなんだよ」
少し考えた末に出た言葉はそれ。全く意味が分からない。
「だって私は博愛主義者だからー!」
「馬鹿なこと言ってないでさっさと日誌書きなよ」
面白がって言うなまえ。誰が博愛主義者だかと言いながら、日誌を指さし書くように促す。
「アイスを食べに行きたいんじゃないの?遅くなると門限になっちゃうよ」
「えっ!?やだ!書く書くッ!」
日誌一つ書くのにどれだけ掛かってるんだ。アイス一つで慌てふためくなまえは可愛い。彼女に想いを伝えられたらいいのにと思うけど、告白したら幼なじみという関係にはもう戻れなくなる。断られたときの事を考えるとボクは怖くて言うことが出来ない。ただの臆病者なんだ。
「誠?どうかしたの?」
「どうもしないよ。ほら、早く」
黙り込んでしまったボクを不審に思ったのか、日誌から顔を上げてボクを見る。ボクの考えなんか悟られたくないから、何でもないと首を横に振る。
「終わったー!」
「日誌一つ書くのに一時間も掛けないでよ」
HRが終わって一時間。もう教室には誰も残っていない。ボクらで最後だ。
「荷物を持って玄関ホールで待ってるから、日誌を出してきなよ」
「うん!すぐに行ってくるね!」
ぶんぶんと手を振って走っていくなまえに、廊下は走らない、と怒ってからボクは二人分の荷物を手に取る。女の子の鞄って何でこんなに重いだろう。
「……ボクも馬鹿だなぁ」
この関係を壊したくないから告白しない。しなければ一生、恋人にはなれない。ボク以外の誰かと付き合う所なんて見たくなって独占欲はあるのに告白できない意気地なしだ。
「はぁ……」
これで本当に霧切さんや舞園さんの事が好きだったのなら告白して玉砕しても仕方ないやで済ませられる。あの二人は断ったからと言って態度を変えるようなタイプじゃないし。手慣れてるだろう。
「告白、か」
考えたことがない訳じゃない。ただボクに度胸がないだけ。誰にも相談できないし。下手すると、変な応援をされそうだし。十神クンなんかは鼻で笑いそうだよね。あ、ヤバい。涙出そう。