白黒世界に彩りを
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「……来ないじゃん」
三日目。温室にカムクライズルは現れなかった。まあ所詮は口約束みたいなものだし、彼は気まぐれだからと一人納得して、草むらの上に寝ころぶ。緑の布団で寝るのは気持ちいい。あー少し眠くなってきたな。
「……んっ」
浮上した意識に、寝ちゃったよとぼんやり思う。ゆっくりと目を開けると視界に何かが映った。
「カムクライズル?」
そう。彼が私の隣に腰を下ろしていたのだ。驚いて起きあがれば、やっぱり彼だった。
「い、いつの間に来たの!?」
「三十分ほど前です」
そんなに寝てたんだ。しかも……この人に寝顔見られたとか。なんだか恥ずかしい。
「も、もう来ないかと思いました」
来るとは言ってたけど、昨日帰った時間より遅くに来るとは思ってなかったし。
「楽しいですか?」
会話が成り立たない。私の質問に答えず唐突に楽しいかと訊いてきた。その言葉の意味が分からない。
「寝ころぶのは楽しいのですか、みょうじなまえ?」
ああ、そういう事ですか。この人との会話は疲れるかも。にしてもフルネームですか……人のことは言えないけど。
「楽しいと言うよりは気持ちいいですよ」
緑の匂いを嗅ぎながら温室の温かい空間でお昼寝。私にとっては最大の贅沢。それを私は嬉々として語ってしまって後悔。この人がそれを楽しいと思うわけがない、と思った。
「か、カムクラさん?」
彼はバタッと倒れた、もとい寝ころんだ。さっき私がしていたように。
「何が楽しいかわかりません。ツマラナイです」
ツマラナイならやらなきゃいいのに。そう言うのも諦めて私はもう一度寝ころんだ。
「ツマラナイと思うからツマラナイんです」
うーん!と寝たまま腕を伸ばすと冷たい何かに触れた。何かと見たらそれはカムクライズルの手だった。へ?なんて間抜けな声を出すと、何を考えたのか彼は私の手を握ってきた。
「温かいです」
本当に何を考えているのだろう。彼の手はとても冷たい。冷たいのに、手は冷えず逆になんだか温かくなった気がする。
「顔、赤いですよ」
クスリっと初めて小さく笑った彼に私は何も言えずに、彼から目をそらした。ただ、顔への熱は増して困ってしまった。そして私たちは手を繋いだまま暫く寝ころんでた。ここでのお昼寝が私と彼の日課となった。
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