白黒世界に彩りを
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「……何しに来たんですか?」
翌日。いつもの通り、温室に来たらカムクライズルがいた。昨日と全く同じ場所に。ツマラナイと言ったからもう二度とこないと思っていたのに。
「なんでこんなツマラナイものがいいのかわからないから見に来ました」
どういう理屈だよ……出かけた言葉をグッと飲み込む。私はアンタがわからないよと言いたいくらいだ。
「少なくとも私はあなたを楽しませるためにやってるんじゃないのは確かですね」
スコップを持って近くの花壇へと行く。毎日、土の状態を確認する事は忘れない。各場所の土を確認して水を撒く。その間、彼はずっと私を見ていた。もの凄く居心地が悪い。
「飲みますか?」
一通りの作業を終えて、一息吐こうとお茶を入れる。少し薄めの黒いソレに彼は少しだけ目を細めた。得体の知れないものだと思ってるんだろうな。そんな事を思いながら私はそれに口を付ける。私が飲むのを見てか、彼はカップを手に取って口に付けた。
「……不思議な味です」
彼は何度か瞬きをする。たぶん初めて味わったそれに驚いたのだと思う……たぶん。
「ドングリコーヒーだよ」
正確には少し違うけど。無表情だけど、少し興味を持ったっぽく見える彼に簡単に説明する。ドングリの中身を取り出して砕いて粉にして、ドリップしたものだと。本物のコーヒーではないけどね、とだけちゃんと付け加えて。
「意味のないと思うものにも、意外と意味があるんだよ」
気に入ってくれたかどうかはともかく、全部飲んでくれたからよしとしよう。飲み終わるとすでに興味が失せたのか、温室の植物達に視線を動かしていた。やっぱりよくわからない。しかし、私ってばよく会話してられてるな。学園内でも彼とこれだけ話をする人なんて限られているはず。私ってば凄い幸運なんじゃない?それは狛枝や苗木くんか。
「片付けてくるんで、せめて私が戻るまではいて下さいね」
ここを無人にするわけにはいかないし。と言ってもふらりといなくなってしまいそうなんだよね。けど片付け終わって戻ると彼はまだいた。そして、
「明日もまた来ます」
と言って温室から出ていった。おい……今なんて言った?また来る?何をしに?よくわからない頭痛が走り、顔を顰めた。