白黒世界に彩りを
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あなたはまだ、そう思いますか?
「ツマラナイ」
温室で水やりをやっている私の背後から聞こえた声。無機質で感情なんてない声に私はゆっくりと振り返る。そこに立っていた人物に眉を寄せる。
「ツマラナイですね」
それしか言わない。聞き覚えがあるフレーズ。学園七不思議にも例えられるほどの有名人。カムクライズル……名前だけなら知らない人はいない有名人。ただ滅多に姿を現さないことでも有名。特徴は何を見ても聞いても『ツマラナイ』と言う事と長く長く伸びた黒い髪。あとは醸し出す雰囲気と言ったところだろうか。
「何がツマラナイのかわかりませんが、水やりの邪魔になるので退いてもらえますか?」
そんな有名人に会えるとは思ってなったけど、今の私としては一分一秒でも早く草花達に水をあげたい。しかしそこに彼が立っていて出来ない。
「植物に水などやって何が楽しいのですか?」
またど偉い質問をしてきたな。それを聞いちゃうんだ。
「種を植えて水をあげて芽が出てまた水をあげて、を繰り返して花が咲くのを待つのが私は楽しいんです」
とりあえず、私は、と言うところを強調しておく。この手のタイプは自分と興味を同調させようとしても無理だ。しかし、会ってみると彼は凄いな。存在だけで、圧迫感を感じる。狛枝が探しに探しているカムクライズルは、少し怖いと思った。
「ツマラナイ回答です」
「そうですか」
あんたを楽しませる為に答えたんじゃないけど。にしてもなんで温室なんかに来たんだろうか。狛枝が自分を最大級の不運に見舞わせて、最大級の幸運を得ても会えなかった人物。何がしたいんだろう。
「あなたの名前は?」
唐突に名前を訊かれて私は思わず、は?と言ってしまった。だってまさか、彼が私の名前を訊いてくるとは思ってなかったから。
「……みょうじ……なまえ」
これは答えないわけにも行くまい。こちらは向こうの名前を知ってるのだから。けど彼は、
「みょうじ##なまえ……ツマラナイです」
と言って去っていった。何がしたかったんだよ。それにツマラナイなら訊くなっつーの。まあ、明日狛枝に自慢しておこうかな。