出会いは物語のように
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「私は……みょうじなまえです。一応、司書です」
向こうが名乗った以上、名乗らないわけにはいかない。それに彼、石丸くんは風紀委員だ。そういうことにはうるさそうだし。
「そうか。これからはよろしく頼む」
これからはって、次があるのかな。学年もクラスも知らないのに。名前は名乗ったけど。たまたま本屋さんで遭遇したってだけで彼にとってはもう知り合いなのかな。
「ところで、その本は腐川くんのものだな」
「え?うん、そうだよ」
石丸くんの視線は私の手の中の本。超高校級の文学少女である腐川冬子さんが書いたもの。当然、同じ学園に通っているのだから知らないわけがないだろう。彼女は学園でも屈指の有名人だから。
「知ってるんだ」
腐川くん、なんて呼び方するんだから知り合いなんだよね。と言うことは……同い年だったんだ。何年生かなとは思ってたけど。
「クラスメートだ。そうか、彼女の本を君も読むのだな」
「う、うん。好きだから。君も、って石丸くんも?」
そう言うくらいだから読んだことがあるんだろうな。でもこれってどっちかというと女性向けの恋愛ものだよね。言い方悪いけど、石丸くんみたいなタイプが読むような本とは思えない。
「ああ!クラスメートの執筆したものだからな。全て読んでいる!」
凄いな。いくらクラスメートだからってそこまでするんだ。風紀とか真面目とか通り越してるような気がする。
「ちなみに内容はさっぱりわからない!」
「駄目じゃん、それ」
読んでいてわからないって。クラスメートだから?それはなぁ。
「駄目だよ石丸くん。全部読んでわからないって、執筆者に対して失礼だよ。」
「う、うむ。理解しようと努力はしてるのだが……」
どうも恋愛ものには疎くてな。と申し訳なさそうな顔をする。何も理解できないって事は誰かを好きになったことがないのかな。
「僕は自分が情けない!クラスメートの何を記したかったのか理解できないなんてッ!!」
「し、静かに!ここで大きな声は……」
出さないで下さい。と私も一瞬大声を出しそうになりながらも注意する。
「すまない。つい……」
真面目すぎる。理解できないのにクラスメートだからって理由で読むなんて。
「理解したいのなら何度でも読めばいいじゃない」
「読んだのだが、その……主人公の女性がなぜそう思うのかが理解できなくてな…」
これは重傷だ。ここまで恋愛音痴だなんて。