ご主人様は貴方だけ
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「なまえ」
名を呼ばれる。苗木くんに失礼しますと頭を下げて、すぐに白夜様の元に行く。うーん、機嫌が悪い。さっきまでこんなんじゃなかったのに。コーヒー不味かったかな?でも苗木くんは美味しいって。無理して飲んでたのかな。
「はい?」
カップをソーサーごと差し出してきた。ただし目線は手元の本。そのカップを受け取ると中身は何もない。
「言わないとわからないのか。この無能め」
「……申し訳ありません」
この人は本当に言葉が足りない。言われずとも察するのがメイドの役目なんだけど、たまにちゃんと言ってほしい。なんて思ってると睨まれた……あれ?私じゃない。睨んでいるのは私の後方。それって……
「なまえさん!ご、御馳走様!えっと……食器下げておくね!!」
ガタンと大きな音を立てて立ち上がった苗木くんは目にも留まらぬ早さでキッチンへと食器を持って行く。それは私の仕事なのにと思っているうちに、またダッシュで食堂から出て行った。訳が分からぬ事に首を傾げながら、コーヒーのお代わりを入れにキッチンへと入る。
「マメだよねぇ」
苗木くんの食器はちゃんと水に漬けてあった。置いてくれるだけでも十分なのに。気遣いのレベルとしては男性陣の中ではトップかもしれない。
「お待たせしました」
新たに入れたコーヒーを白夜様に差し出す。彼は無言のままそれを口にする。本当に必要以上に喋らない。この閉ざされた学園内でも動揺を見せず、コロシアイですらゲームとして楽しんでいる。すでに人が三人死んでいるというのに。
「何故、溜息を吐く」
カチャン、とカップをソーサーへ置く音でハッとする。一瞬、意識が飛んでいた。彼の側にいるというのにだ。そして、どうやら無意識に溜息まで吐いていたようだ。
「お前の主は誰だ」
「十神白夜様です」
腕を胸の前で組み、鋭い眼光で私を見る。この視線だけで人を殺せるのではないかと思えるくらい鋭かった。この人なら出来るんじゃないか、と不謹慎かとは思うけど。
「……俺が主では不満か?」
「はい?」
そう言って白夜様は更に目を細めて睨んでくる。しかしその凄みより、思いもしていなかった言葉に私はつい聞き返してしまった。