これは幸運か絶望か
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「……まったく」
本当についてきた。今は大人しく座ってるけど。何の本を読もうか。補習と言っても精々一時間くらいだろうから、あまり分厚い本を出したら読み終わらないし。かと言っても一時間で読み終わる本なんてたかが知れてるし。
「終わんなかったらそん時考えようかな」
そのまま本棚に戻すでも借りて帰るでも。いや借りられないか。司書もいなければ図書委員もいない。今日は貸し出し中止とか書いてあるし。なら図書室を封鎖しちゃえばと思ったけど、閉まってたら私の行き場が困るだけだから開いてるだけよしとしておこう。
「あれ?取れない」
どんだけ無理矢理入れてあるんだろう。引っ張っても出てこない。どうせなら読みたくない本より読みたいと思った本を読みたいじゃない。なのに棚から出てこない。あと、ちょっと。
「やった。とれ……っ」
力任せに本を引けば一気に抜けた。が、一冊抜けただけでは終わらなかった。その本に隣接していた本や、本を無理やり抜いたせいで本棚が揺れ他の本まで私目掛けて落ちてきた。これはヤバい。避けるのは無理だ。思わず身を屈める。
「[#dc=2#]さんっ!」
本が落ちてくる衝撃と痛みに耐える準備をしたけど一向にこない。恐る恐る顔を上げると目の前には見覚えのある服が見えた。白いシャツにカーキーのコート。そして肩や背中に感じる温もり。何が起きたのかわからず、少しだけ顔を上げる。
「……こま、えだ?」
しゃがみ込んだ私を覆い被さるように抱き締める狛枝。顔を上げると狛枝の端正な顔が近くにあって、体は恐怖から羞恥へと変わった。頭のてっぺんからつま先まで熱に侵される。
「大丈夫?」
いててててっと言いながら私の安否確認する。よく見れば数冊の本が周りに落ちていた。でも私は痛くない。
「こ、狛枝が庇ってくれたの?」
「なまえさんに怪我がなくて良かったよ」
そう言う問題じゃない。椅子に座っていたのにいつの間に私の側に来たのだか。それに私の代わりに落下してきた本に当たるなんて。
「なんで?」
「なんでって、なまえさんが怪我しちゃうと思ったからだよ」
笑う狛枝に唖然とする。自分が怪我するかもしれないとは思わなかったのか。首の辺りほんのり赤くなってるし。