小さな小さな片思い
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そっと、想うだけでよかった
「地味じゃない?」
私が話すとみんなそう言う。女子たちでのちょっとしたガールズトークで必ず話題になるのは恋バナ。私の好みというか好きな人の話になると誰も賛同してくれない。私は別にそれでもいい。ライバルがいないに越したことはない。けどあまりに非難を受けると自分がおかしいのかと思いたくなる。
「顔はまあ、性格は良く言えば優しいけど悪く言うならお人好し過ぎ。あと身長がほとんど同じなのがねぇ」
と大体の人は言う。私はそう言ったことで好きになったわけじゃない。みんな見たことがないだけだよ、彼の笑った顔とか真剣な顔とか。お人好しなくらい優しくてもいいじゃない。悪いよりは。
「いいの。好きなものは好きなんだから」
わたしはこれでいい。ほとんどの女子から名前が出るのは性格は問題だけど顔良し成績良し身長良し財力良しの十神くん。見た目は怖いけど実は結構優しい大和田くん。とにかく堅すぎるほど真面目な石丸くん。遊び相手なら桑田くんとかだ。校内でもかなり有名な人らばかり。わからないでもないけど。
「でも私は苗木くんが好きなの」
きっかけはある雨の日。朝から土砂降りでちゃんと傘を持ってきていたんだけど、何故だか帰るときに壊れていて差せなくて困っていた。そしたら苗木くんは、僕のを使ってって自分の持っていた傘を私に渡した。その時は互いに初対面。なのに私に傘を貸して、苗木くんは土砂降りの中、走っていった。そんな小さな出来事が私の体に所謂、ビビビッてやつが走った。
「彼っていつも校内でも屈指の有名人と一緒だよね」
そうなのだ。苗木くんはさっき出た男子や、あの霧切さんやセレスさんに朝日奈さんといった校内で名の知れた女子とも仲がいい。凄く羨ましい。私なんか図書委員で図書室にいるときにたまに見かける程度。十神くんを迎えに苗木くんがやって来たときに見るくらいしか接点がない。
「アンタから話しかけてみればいいじゃん」
と言ったのはたまたまこの会話を聞いていた江ノ島さん。まさか彼女が聞いてるなんて。そしてそんなに軽く言わないで。話しかけられてたらひっそり片思いなんてしていない。
「う、うん」
無邪気な笑顔の江ノ島さんにそんな事は言えずとりあえず頷いておいた。